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奴隷エマの自由への道と聖域  作者: アズ
自由と脱出「波割りからの長旅」
8/21

作戦 2

「魔法を習得するにはまず魂が必要になる。己は魂に宿るとされているからよ」

 主人がそう言うと指輪から魂が現れた。そして、主人は魂に向かってなにやら呪文を唱え始める。すると、魂が白く光り私の頭の中に魔法の知識が突然流れ込んできた。これはいったいなんなのか。ハンマー、盾、槍、剣、ナイフ、銃といった武器から机、椅子、棚などの家具、それからフライパン、鍋、包丁といった料理道具まで、いろんな物と魔法による生成と応用の知識……私の魔法?

「なる程ね……あなたのジョブは『ファーベル』よ。人間らしいと言えばらしいけど。ホモ・ファーベルってとこかしら」

「ファーベル……」

「道具を生み出したり使ったりする魔法。ジョブは〈経験〉によって新しいジョブが解放されることがある。ようは大抵は一つに打ち込んだものがジョブとして現れるのだけど、それに関連したことや大きなことを成した時とかに〈経験〉として蓄積され新たなジョブを開くことがあるってわけ」

「は、はい」

「因みに私は三つジョブがある」

「三つですか!?」

「輪廻転生した魂は記憶は引き継がなくても魂としての〈経験〉はギフテッドとしてこの世へ引き継がれる」

「あ……」

「そう。人間の魂は奴隷になる際に傷をつけられ輪廻の理から外れる。だから〈経験〉は継承されず、奴隷としての経験しかないから永遠に経験値がそれ以上増えない。恐らくどの人間もジョブを解放しようとしたら皆『ファーベル』しかなれないんじゃないかしら」

 当然、この国の平均ジョブ数に人間が追いつくことはない。

「それで『ファーベル』というのは強いのでしょうか?」

「弱い」

「え」

「ジョブは誰にでも最初は解放される。なにもない無はないからね。だから最低限、最底辺のジョブは解放される」

「最底辺……」

「奴隷以外経験がないのだから仕方がないわね」

 でも、もしこの子が人間の自由を求め解放の為に旗を持ち先頭を走れば、人間を支配する世界中の王や権力者にとって一番脅威のジョブが解放されるかもしれない。自分の運命を自分で切り開く能力を持ったジョブを。

 アルカはそう思いながら目の前の奴隷を見た。

 まさかね。

「それじゃ魔法を教える」

「はい、お願いします」

 私は頭を下げた。

「もうそういうのはいいから。とにかく立って」

「は、はい」

 私はその場で立った。

「まず、ファーベルという魔法の特性についてだけど、まず自然界にある物に魔法で〈働きかける〉というのがある」

「はい」

「例えば槍なら魔法でリーチを長く伸ばしたり、伸縮自在に操る。創造した道具で臨機応変に対応出来る幅広い活躍が出来る初心者向け魔法よ」

「はい」

「でも、一番は〈つくる〉ことよ。いろんな武器やアイテムを錬成させるの。まずはそれからね」

「はい」

 大丈夫なのか……魔法初めてなんだよね? アルカはそう思いながら魔法を教え始めた。

「おさらいだけどファーベルは道具を〈つくる〉から〈働きかける(使用)〉までの過程が基本になる。例えば「じょうろ」を〈つくる〉から〈働きかけ〉て植物を育てる。ここまでが基本。分かる?」

「はい」

「それじゃこっからは応用編。さっきの話の続きで、それによってもたらされる結果は、魔法アイテム「じょうろ」によって異常発達された植物が〈生産〉されたということ。つまり、魔法アイテムをどう使うかで色んな〈生産〉を可能にする。つまり、バリエーションを更に増やせるようになる」

「はい」

「本当に分かってる?」

「はい。野菜を育てる為にじょうろを使い作物を育てて野菜を生産する、その一連に魔法が加わることで可能性が広がるということであっていますか?」

「ええ……分かってるじゃん。なら、私の言った通りにまずはやってみて」






 正直不安しかなかった。でも、それは魔法の特訓に暫く付き合ってみて、その不安は直ぐに消えた。あの女はただのガキじゃない。のみ込みが早く、それに魔法を初めてやるくせに言われた通りにやって見せる。

 本当に初めてなの?

「あの、私の魔法どうですか?」

「まぁ……ようやく初級が終わった感じ」

「え……」

「今のあんたじゃまだシルフには追いつけない。戦ったら瞬殺」

「瞬殺……」

「魔法とはそもそも何かを教える必要があるみたいね。いい? 魔法っていうのは望み(欲望)を叶えてくれる便利なものなんかじゃない。魔法とは能力であり、欲望と能力の均衡、その範囲においてあなたは魔法を振る舞えるの。つまり、無規定に無限に何でも出来るわけではない。魔法は〈経験〉に依存し、それは能力ジョブに変換され現れる、魔法現象なのよ。あのシルフの輪廻の回数は私を上回る。経験の差は私達にとってそもそも歴然と差が開いている。私があいつにまんまと魂を奪われたのだって、他のアルカもそう。宿屋の店主だって皆奴の言いなりよ。でも、望みはある。私があの図書館で読んだ未来書、あれは『アカシックレコード』と呼ばれる一部なの。勿論、あんたが勝たなきゃ貴重な閲覧権限は得られなかったけど」

 なんかやっぱり凄いものだったんだ。よく分からないけど。

「私が見たのはアルカの国だけじゃない。あいつの、シルフの国の未来も見たの」

「あの、それで私はどうすれば宜しいでしょうか」

「まずは作戦が必要よ」

「はい」

 そう返事をしたはいいものの、なんだかいろんな方向へ私は転がり落ちていて、もうどうなっていくのか自分の未来が全く見えない恐怖と不安でいっぱいになっていた。それでも引き返せないことは理解している。私が世界を変える小さな石だとは思っていないにしても、私はあのシルフと戦わなければならない。まさか、こんなことになるとは思わなかったけど。

 ただ、私にとってこのアルカについていくしかない。いや、今はついていこうと思っている。アルカが言ったあの言葉



 実は傷ついた魂を生き返らせる方法がある



 これは私の望みだ。そして、その為には主人を信じついていくしかない。

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