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奴隷エマの自由への道と聖域  作者: アズ
隠遁のオアシス「聖地を求めて」
20/21

試験

 この世に戦争が無くなることはあるのだろうか。最初から戦争が無いのなら武器は生まれなかっただろう。しかし、現実は武器が生産され、一国という統一、そして権力の誕生に暴力がなかったことはない。その点を考慮したら戦争は人間によって生み出されたものでもなく、各国が誕生する前からあったことになるのではないのか。そうなれば、戦争は人間に似た本質が備わっていれば思想や価値観の違いがあったとしても、その後で平和主義を唱えたとしても、本質に戦争が結びついていることに変わりがないということなのか。人間の内省は個別性的に違いがあるとはいえ、根っこの部分では暴力や破壊が全く備わっていない人間はいないように、行動に移す際の〈程度や尺度、物差し〉という表面的な違いを皆は言っているような気がする。それは都合の良い解釈ともとれる。人間を支配する権力には暴力があり、人間の脅威を無くすことで平和をうたう。つまり、平和の裏には権力という暴力が備わっていた。なら、平和をもし考えるなら、そこにある暴力についても考えなければならなくなる。平和とは相反する矛盾したものに何故今まで平和という言葉に納得出来ていたのか。私は平和や自由をどこかで欲していた。でも、そこには暴力がある。なら、私の言っていた平和はいったいなんだったのか。

「平和なんて本当は無いんじゃない? 理想郷のように実在しない言葉を現実と勘違いしているのかもしれない」

 エスティはそう言った。

「これから戦争が始まる。これは私が見た未来書通り。結局、人間がいなくたって戦争は起きる。そもそも戦争論は国によっても違う。でも、はっきりしてるのは世界が本当に平和になるには国境がない、星を船で例えるなら皆はその帆船に乗る乗組員みたいなイメージになるけど、船には船長が必要だ。そして、それはそのまま世界の中央集権を意味することになる。強い力で皆を従わせるっていうやつね」

「それって」

「まぁ、そうはならないよ。そもそも皆が恐れているのは《死の品》だよ。世界を場合によっては滅ぼしかねない兵器には、物差し的にそれはやめよう、それ未満の世界はやってもいい、みたいなところかな」

「そんなに?」

「なにせ、世界が終わるとしたら《死の島》からそれが起きるとされているからね」

「戦争は無くならない?」

「そうだね、戦争がダメと戦争自体がダメは違う意味で、どの国も戦争論が違うとはいえ根本は前者だから。《死の品》みたいな世界がめちゃくちゃになるのはダメだけど、それ以外の兵器は何も言わないのがそれを示しているでしょ。そもそもエマは内の本質、人間で言えば人間性の本質から戦争を考えてるけど、私はどちらかというと〈国家〉だと思うんだよね。人間の個人と個人の争い、喧嘩みたいなのは人間性があるんだろうし、アルカもシボラも同じで喧嘩はあるけど、戦争は利害じゃん。そもそも、同じ暴力なのかな? 性質上。違うような気もするね。そう言うと〈国家〉が悪いみたいになるけど、そこはよく分からない。人間が悪いのか、人間国が悪いのか、終戦後の人間が本音のところどう思ってるのか私は知らないからさ、エマはそこのところどう思ってるの」

「……皆がどう思ってるのかは分からないです。ただ、私は人間は終戦じゃなく「敗戦」した、そこに尽きるのかと思ってます。その後で人間がどう乗り越えるべきかは多分、私達に引き継がれてるんだと思います。ただ、直ぐには答えられません」

「そっか。でも、ゴルトマンが言ってたけど彼は人間の土地を取り戻す、多分その後の事は次の人間が引き継ぐ、自分の成すべき事が決まって、そこまでやり切る覚悟は嘘じゃない。エマは本当にそれをやりたいの? 本当は私に付き合ってるんじゃない?」

「迷いがないと言えば嘘になると思います」

「うん」

「正直、上手くいくか分からないです。もしかしたらこれをきっかけに人間の立場が更に悪化するかもしれない。それでも、私は人間の歴史を教わり、私達はその生活に憧れています。今が不満というわけでは決してないんですが」

「いいんじゃない? 自分でそう決めたなら。試験、頑張ってね」

「はい」




 試験は翌日、行われることとなった。




 そして、当日。映画館へ行き待ち合わせに着くとゴルトマンが待ち構えていた。

「よく来たな。いよいよ試験だ。試験は事前に説明した通り、筆記試験、次に心理テストを兼ねた面接、最終試験は翌日に行われ、結果は最終試験が終わった即日に発表する」

「はい」

「宜しい。それでは席についてまずは筆記試験だ」

 私は適当な席に着くと、下敷きと試験用紙、鉛筆を渡してきた。

「時間は40分。それでは始め!」

 紙を表にひっくり返し問題を読み始めた。

 試験内容はこれまで教わった勉強の内容で、記述式。最初は歴史や文化、次に数学など科学、他は地理や世界の社会についてなどだ。それ以外にも他種族に対する知識、例えばシルフだったら彼らは基本的に汎神論を唱えており、それが文化的にも組み込まれている為に、シルフ達は自然の超越タイプに属するジョブを獲得する者が多い。それが風や火など自然を魔法になる。そういった特徴とかだ。

 試験には手応えがあった。多分、これくらいならいけると思う。

 試験管のゴルトマンは横でその様子を監視していた。




「次は面接だ」

 ゴルトマンはスクリーンをバックに一番前に立った。エマの席は映画館の真ん中。距離は遠いが、声は充分に聞こえた。すると突然、スクリーンに映写機から光が当てられた。

「電気?」

「映画館は防音だから発電機の音は聞こえないだろ? 今、他の劇場から発電機を使っている。試験や必要な時だけ電気を使う。それじゃ始めるぞ」

 映像は真っ白から星が12ある旗に変わった。

「これは俺達が掲げる旗だ。自由を取り戻す為、国を取り戻す為、アルカ、シボラ、他10の国々に散った人間が再び約束の地にて集結する、その象徴となるよう、俺達はこの旗に誓い命をかける。エマよ、お前はこの旗に誓えるか?」

「はい」

「この道のりは険しいものになる。それはリスクが伴う。お前にその覚悟はあるか?」

「はい」

「俺達は人間に理解がある協力者となんとかしてこの国と共に出来ないか模索した。だが、残念ながら俺がシボラ民になれないように、人間は人間としか生きられない。見た目、能力でなく、近い知性であってもシボラの共同体はシボラ種だけであり、アルカも他の国も同じで、シボラ共同体の外にいる違う種とシボラがコミュニケーションをとっても、俺達人間の居場所はそこにはない。俺達をシボラや他の国が受け入れてくれるのは現実的ではない。俺達はいつまでもその国々にとって部外者だ。だから俺達は居場所が必要だと考え一同はその目的を共有した。その俺達の目的と一致するか?」

「はい」

「例え、違う意見や批判する仲間が現れても、仲間として認めるか?」

「はい」

「宜しい。俺からの質問は以上だ。あとは次に流れる映像を見ながら答えてくれ」

 それは心理テストだった。いくつかの絵を見せられ答えていくものだ。その結果を教えてくれるわけではないので、正直不安しかなかった。





「以上で今日の試験は終わりだ。明日は今日と同じ時間同じ場所に来るように。そこから移動し、最終試験となる。では、お疲れ様」

 ゴルトマンがそう言うと、どっと緊張が抜けた。

 明日はいよいよか…… 。

 エマは席を立ち映画館をあとにし、エスティのいる家へ戻った。

 玄関を開けると早速エスティが出迎えてくれて私に「どうだった?」と訊いてきた。

「筆記試験は大丈夫だと思います。心理テストみたいなのはちょっと不安ですが……」

「ああ、大丈夫でしょ。心理テストなんておまけみたいなものよ。それより明日は最終試験でしょ?」

「はい」

「頑張ってね」

「はい」

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