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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第一章 終わりに向かう二つの世界【第一部1】

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1-95 夢の第一歩を踏み出したリンドウと、予想通りのオチ

 余計なイベントを挟んでしまったが今度こそ安心して空を飛べる様になり、気球はどんどん高度を上げていく。


 やがて地上にある建物は豆粒ほどの大きさになり、俺達は遂に空の世界に飛び立ったのだ。


「うひゃー、ここまで来るともう怖いとか感じなくなってくるでヤンスね!」


 不安がっていたサスケは次第に明るい表情に代わり、空の旅を楽しめる程度に心の余裕が出来た様だ。


 なんだかんだ言ってアクティビティには違いないし、慣れれば純粋に楽しめるのは間違いないだろう。


「はは、そうだろ? 空を自由気ままに飛べるのってすっごく気持ちいいんだ。一度でもこの自由な世界を知っちまったら、鳥籠の中の世界で生きていく事なんて出来ねぇよ」


 笑みを浮かべるザキラのその言葉には違うニュアンスが含まれていたが、彼はその意味を知る事もなくしっぽを振って無邪気にはしゃぎ続ける。


 どうやら彼女は苦難の道を選んだ自分の決断を一切後悔していないらしく、ザキラの話を聞いていた俺はやっと安心する事が出来たんだ。


「見ろ、人がゴミの様だ!」

「異世界にも伝わってるんだな、そのネタ。さっきのアレがあるからシャレにならないけど」


 空の支配者気取りのリアンは某大佐になり切って有頂天になっていた。


 実際目的地は天空の城的な場所ではあるのだけれど、どちらかと言えば世界の脅威となる俺たちはバ○スで落っこちていく側だからやめてほしいんだがな。


「ついにここまで来ちゃったネェ……星桜龍せいおうりゅうの樹もよく見えるヨ」


 感極まった様子のリンドウさんは遥か彼方に見える樹を感慨深そうに眺めていた。


 現実世界の一般的な樹木のサイズとはかけ離れているが桜の樹の様に見え、かなり遠くにあるのにちゃんと見えるなんて相当巨大なはずだ。あの樹はファンタジー世界における世界樹の類なのだろうか。


「良かったネ、お母さん。夢が叶っテ!」

「まだ気が早いヨ。これはあくまでも実験サ、ノーザンホークにはまだ行けないダロウ。でも死んでもいいってくらいすっごい気持ちいいヨ。ここがアタシの恋焦がれていた空の世界なんだネ」


 既に夢が叶った気でいるニイノにリンドウさんは幸せそうにそう語った。


 彼女の夢はあくまでも空を飛んでノーザンホークに行く事なのでこれはあくまでも実験だ。しかしこれだけの物が作れるのならばもう夢の実現は目前に迫っていると言ってもいいだろう。


「……リンドウさん、すみませんでしたポン」

「ん? モリンさんはアタシに謝る様な事したっケ?」


 彼女が夢心地でいるとモリンさんは唐突に謝り、その謝罪に心当たりがなかったリンドウさんは不思議そうな顔をしてしまう。現に彼女はパーツの回収に協力し、リンドウさんからすれば恩しかなかったのだから。


「いえ、正直私は同じ母親として、家族を蔑ろにして夢を追いかけるあなたを良くない親だと思っていましたポ。でもあなたは決して諦めず、生き様をしっかりと子供たちに見せましたポ。だからその、謝らないといけないなって……」

「母ちゃん、僕もごめん。さっきは許してくれたけどやっぱりちゃんと謝らせてほしい」

「そっかー、じゃあ許すヨ。ま、難しい事はぽーいって捨ててしばらく空の旅を楽しもうじゃないカ!」


 続けてアマビコも謝罪をしたが、リンドウさんはまるで意に介していない様子だった。


 きっとこういう所なんだろうな、彼女が夢を叶えられた一番の理由は。


 たとえ無謀だとしても懸命に夢を叶えようとするリンドウさんは人を惹き付ける魅力がある。そんな彼女だからこそ、俺達も応援したいと思ったんだ。


「なあなあ、目的地ってアレか!?」


 そのまま空を飛び続けていると俺たちは空中に浮かぶ島に近付き、リアンのテンションはさらに高揚する。


「わあ、ふしぎなものがたくさんあるよ! おもしろそう!」


 マタンゴさんからすれば珍しいものしかないが、その場所はもちろん最初の旅の目的地である長崎の地だ。


 はっきりとはわからないがビルなどの近代的な建築物も見え、空に浮かんでいるという点以外は概ね俺たちの世界と同じ様に見える。


『ああ、どこでもいいから着陸するといい。ここまで来たらもうそんなに急がなくてもいいよぉ。適当に休んだら葉瀬帆のほうに来てね』


 まれっちも指示らしい指示を出さなかったがもうそんなものは必要ないだろう。


 物資があるかどうかはわからないが、まずは適当に散策してみるのもいいかもな。


 ボスン。


「ん? 何の音だ?」

「あ、ヤベ。墜落スル」


 ただバーナーから変な音が聞こえ、直後リンドウさんが聞き捨てならない事を呟いた。


 えーと、ツイラクってどういう意味だろう。しかしどれだけ知識を引っ張り出しても脳内では墜落以外に変換されない。これが異世界のお菓子の名前とかだったらどれだけ良かった事か。


「「ギャー!?」」


 そしてバーナーは爆発、それをきっかけにアレンジで取り付けたロケットエンジンも損傷し気球は野球場のジェット風船の様に飛んでいく。


 うん、こんなオチになるだろうって事は最初からわかりきっていたけどね!

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