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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第一章 終わりに向かう二つの世界【第一部1】

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1-92 大きなマタンゴを下さい

 俺はNAROを狙撃してヒョウスベさんの援護をしながら全体の様子を確認する。


 もちろん安全の確保のためには彼らを全滅させなければならないが、目下最大の脅威は離れた場所にある対空銃だろう。


 固定式のガトリングは引退しつつある型落ち品だが、もしも気球がノロノロと飛んでいる最中にあんなものを撃たれたのならば即座に墜落するし、なんとしてでも無力化しなければならない。


 そして無力化するための最適解は――やはりNAROのリーダーの力を借りる事だろうな。敵の数も大分減らしたしそろそろ狙ってみてもいいだろう。


「こいつを試してみるか」


 使うのは引き続き睡眠弾でも良かったが、ヒョウスベさんのおかげで余裕があったので、威力を確認するためもう一つの混乱弾を撃ってみる事にした。


 メモリカに記された効果を見る限りは混乱して踊らせるとか訳の分からない事が書かれていたけど、果たしてどうなる事やら。


 というわけでその辺にいた兵隊にズドンズドン。敵は全員ヒョウスベさんに注目していたので無力化は余裕だった。


「クッ!? 何故だ、無性に大きなイチモツを踊りたくなってしまったぞッ!?」

「駄目だ、仮にもNAROともあろう俺達が佐賀の恥であるあいつの下ネタをするなんてッ!」

「俺は物凄くモノ申したくなってしまったァ! なぜ佐賀出身の芸人はど○ろっくだの江○2:50だの下寄りの変な奴しかいないんだァ!」

「構わない、下ネタは人間だけに許された芸術だッ! さあさ皆さんご一緒にご唱和くださいッ!」

「あらーん」


 効果はてきめん、お堅い事に定評があるNAROの皆さんは被弾してすぐに混乱して伝説の名曲を踊り始めた。


 昔のテレビでも物議を醸したけど、規制が厳しくなった元の世界ではもちろん一発アウトの佐賀県のコント王者の鉄板ネタを。


「なにしてるのー?」

「ぼくもいっしょにおどるー!」

「おーきなマタンゴをくださいー」


 さらに楽し気な気配を察知した野生のマタンゴさんズがどこからともなく出現、彼らも一緒に交じって踊り出した。


 キノコがこの歌で踊ると若干違うニュアンスになってしまいそうだけど、無邪気に天に手を伸ばすこの子たちは意味を分かっているのだろうか。


 男も女も老いも若きもキノコも皆仲良く踊っていてとても楽しそうだけど、現実世界の人が見たら卒倒しそうだ。


 しっかしさっきまで割とシリアスだったのに見事にギャグ展開へ百八十度変わってしまった。


 この弾丸が強力だって事は十分わかったけど、空気を致命的なまでにぶち壊すから今後は使いどころを間違えない様にしよう。


「なッ!? これは……! え、ナニコレ」


 しばらくして後続の女性隊員が現れカオスな状況に混乱してしまう。今ここでとどめを刺してもいいが面白いのでもうちょっと見てみよう。


『何があったんですか隊長! 報告してください!』

「その、い、い、イチっ」

『はっきり言うんだ!』

「乙女に何言わせんじゃセクハラで訴えるぞゴルァ!!」

『は? 何で? ってか乙女って年齢じゃ』

「ああン!?」

『すみません』

(ふむ……)


 カマトトな女性隊員は無線で状況を確認しようとした部下にブチ切れるが、俺はその会話と彼女の装備からリーダーである事をすぐに理解した。わざわざ向こうからやって来てくれるだなんてラッキーだな。


「ぽーい」

「ぐッ!?」


 俺は頃合いを見て二階に降り猫弾Cボムを投げ敵を無力化、素早く銃を撃って残りの敵を同じ様に躍らせて窓から飛び降りた。


「じゃ、ちょいと身体をお借りしますねー!」

「何を……!?」


 最後に指揮を執っていた女性の隊長にサイコジャックを発動、俺は彼女の身体を乗っ取った。


 女性の身体は実に新鮮だが、生憎TSモノを始めるつもりはないのでとっとと目的を果たすとしよう。


「ターゲットは確保、気球も破壊した! だが一人は既に逃走、アシュラッド周辺の砂漠地帯に潜伏しているとの情報を入手、直ちに撤収して捜索に向かえ!」

『え? りょ、了解しました!』


 ボロが出るリスクはあったが俺は彼女の口を使って偽の指示を無線で伝える。敵も移動を開始し始めたし、これでしばらくは時間を稼げるだろう。


 軍隊にとって上官の命令は絶対だ。非合理的な命令もそうだが、背後から大きなイチモツの大熱唱が聞こえるというあからさまに不自然な状況でも拒めば制裁を受ける。


 ましてやディストピアの秩序を守る役割を担い、厳格な規律で雁字搦めのNAROならばなおの事だろう。


 でもマジでいろいろと雰囲気をぶち壊してしまうな、コレ。ある意味これは最終兵器に等しい使ってはいけない禁断の力だが、この上なく平和的だし銃弾よりかはずっといいだろう。


 流石にラスボス戦では使いたくないけど……いや、大きなイチモツって音だけ聞けば結構荘厳だし案外ピッタリかも。ピアノでアレンジしたら意外とラスボス戦の曲にも使えそうだ。


 対空砲の近くでスタンバっていた兵士もまた素直に指示に従い武器を片付ける。手軽に持ち運べる利便性がこの状況ではこちら側の利点になった様だ。


「はっ」

「はいあざっしたー!」


 俺はすぐに自分の身体に戻った後M9をぶっ放し、用済みになったリーダーを躍らせ大合唱に参加させる。これにより周辺の敵は全員撃破する事に成功、戦闘行為は終了した。


「ほお、やっぱり魔眼だったのカ。さっきの戦いで気を付けておいて正解だったナ。やるじゃネェカ。色々とツッコミどころは満載ダガ」

「ほぼあなたのおかげですけどね。ヒョウスベさんもありがとうございます」


 今回のMVPは言うまでもなく一人で敵を殲滅してくれたヒョウスベさんのおかげだ。


 実に他力本願な戦い方だったが、敵にも味方にも全員死者を出す事なく勝利する事が出来たのでこれ以上の結果はないだろう。


「アンジョ様がこんなに……しかも全員が狂った様にイチモツイチモツ連呼してヤガルッ!」

「刮目して見るのジャ! これは世界に再来したアンジョ様の神聖な儀式! この荘厳な曲が何よりの証拠でアル! 我々も降臨を祝福しともに踊ろうゾ!」

「なあトモキ、お前のせいで地元民にどえらい勘違いされてるぞ。このままじゃ教会の何かしらの記念日で大きなイチモツが演奏されて、純粋無垢なシスターもこの踊りを踊って伝統文化として未来永劫受け継がれるだろうな」

「うん、マジでスマン」

「でもなんかすっげぇ楽しそうだしオレも混ざろうかな」

「大切なものを失いそうなのでオイラは遠慮しとくでヤンス。でもどうしてでヤンス、無性に真似したくなるでヤンス……!」


 このネタは現実世界でも物議を醸したが、仲間のリアクションはザキラが否定的、リアンが予想通り好意的な反応でサスケは好意的寄りの中立だった。当時はあちこちの小学校で子供が真似をして世の中のお母様方からお叱りの声が届いたらしいけど。


 しかし人もディーパもキノコも一丸となって大きなイチモツを褒め称え踊り狂っている。やはり大きなイチモツは世界を救う偉大な力なのだ。


 でも万が一このシーンがアニメ化したら確実にネットがザワついて伝説になりそうだなあ。本人っぽい人も混ざってるし、人気声優っぽい声の人も全力で熱唱してるし。こんな汚れ仕事を引き受けてくれて心の底から感謝します。


『ふむ、敵が全員移動を開始したね。とどめを刺しておくから工房に戻るといい。そろそろ気球が出来るはずだ』

「とどめを刺すって……」

『兵器を壊すだけだよ、死人は出ない。途中で飛行型無人兵器が襲い掛かるだろうけどちゃんと迎撃するから気にしないでねぇ』

「そうか」


 一瞬まれっちがまたしても非情な指示を出すかと思ってヒヤッとしてしまったが、彼女はすぐに俺を安心させる補足をしてくれた。あとは事後処理だけなら気持ちよく空へ向かえそうだ。


『そうそう、適当にロケットランチャーとかを一つ拝借しておくといいよ』

「わかってるよ。恋焦がれた空に向かって勝利の祝砲をあげるとするか」


 俺はリンドウさんのためにNAROが持参してきたロケットランチャーを回収する。


 空を飛ぶ事しか頭にない彼女は先の事を考えている様で全く考えていないし、こいつを使ってお祝いの花火を盛大にぶち上げるとしよう。


 アンジョの遺構を保護したい人には滅茶苦茶怒られそうだけどな。

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