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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第一章 終わりに向かう二つの世界【第一部1】

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1-89 いるはずのないNAROの襲撃

「ふう、でもこれでお終いだな。あとはリンドウさんの気球が完成するのを待つだけか?」

「ああ、おかげさまでようやく完成スル! もう少し待っててクレ!」


 とにかくディーパ民兵の襲撃をしのぎ切り、ザキラは機嫌が良さそうにリンドウさんに進捗状況を尋ねた。


 彼女も夢が叶う瞬間が今まさに目の前に迫っており、気合を入れて急ピッチで調整作業を進めていた。


『楽しそうだねぇ。でもちょっと時間をかけすぎたかな』

「……ああ、わかってる」

「あん? どういう事だ? 増援が来るのか?」


 しかしまれっちの知らせを聞いた途端急に重苦しい表情になった俺の顔を見て、喜んでいたザキラはガンを飛ばしすぐに警戒した。


「増援ダッテ? 俺は何も聞いてナイガ。見ての通りすぐに動ける兵隊の数が足りなくてご近所さんも参加シタンダ、そんな余裕あるわけ……いや、これハ」


 元水軍のヒョウスベさんは何かの気配を察知し、廃材の山から長めの鉄パイプを引っこ抜きこの後の戦いに備えた。


 サメは遠く離れた獲物の血のニオイを探知出来るらしいけど、やはり彼もそういう狩りに特化した能力があるのだろうか。


「なあ、まれっち。気のせいか? 凄く見覚えがある武装をしているんだが」


 マップ機能で増援の動きを確認した俺はひどく困惑してしまう。


 彼らはディーパ民兵とは比べ物にならない程統率の取れた動きをしており、銃やロボット兵器などファンタジー世界らしからぬ近代的な武装をしていて、この世界の存在ではない事は一目でわかったからだ。


 もしかしたらこの世界の人々は侵略者を受け入れ滅亡した古代文明の様に、彼らを神と認識するかもしれない。


 だが俺は何度も彼らの姿を見てきたので、あれが何であるのかすぐに分かった。


「なんであいつらが……NAROがここにいるんだ!?」


 NationalAnimaRatingOrganization――略称NARO。


 直訳すると日本アニマ審査機関であり、その名前の通りかつては倫理法に基づき様々なサブカルチャーに対してレーティングの認定を行っていたが、現在では戦時中の特別高等警察の様な役割を担い自衛隊に次ぐ第二の武装勢力となった組織だ。


 なお組織名にはアニメーションではなく語源のほうのアニマが用いられており、深い意味はないのかもしれないが俺は彼らが人々の魂を審査しているのだと考えている。


 そして彼らによって不適格と判断された魂は存在を否定され、鉄と炎の粛清によってこの世界から跡形もなく消し去られるのだ。


「あん? ナーロってなんだ?」

『智樹ちゃんの世界の権力者お抱えの特殊部隊っていうか、時間もないし後で説明するよ。とにかく戦わなければ死ぬって事だね』


 まだ彼らの姿を見ていないリアンは訝し気に尋ね、まれっちは短く要点だけ伝える。


 すっかり終わった気分でいた彼女は真顔に戻り、義手を変形させいつでもニードルガンを放てるようにした。


「そうか。それだけわかれば十分だ」

「……なるほど、ガチの奴って事だな」

「モリンさん、どこかに隠れてほしいでヤンス」

「わ、わかりました、気を付けてくださいポン!」


 その深刻な様子は最大の危機である事を明確に認識させ全員がすぐに臨戦態勢に入った。


 ただ事情を知らないディーパたちには伝わらなかったらしく、戦いが終わってもなお張り詰めた様子の俺達を困惑しながら見ていた。


『仕方ない、俺っちもちょっくら手伝うよ。遠隔操作で兵器を無力化するから人間は智樹ちゃん達が倒して。無敵のマップ機能とM9のバステ弾、そこのおじいちゃんの力も借りれば何とかなるだろうさ。それでいいよね?』

「別に手伝ってやってもいいゾ。ったく、ジジイを酷使するんじゃないヨ。ニイノたちは隠れてオケ。今回ばかりは分が悪すぎル」

「え、でも……お母さんの気球ガ!」

「ぼくはー?」

「お前がいても邪魔なダケダ。むしろ俺一人でも十分ダナ。じゃあ先行ってるゾ」

「あっ! でも仕方ありまセンネ……そういう事なら大人しくしておきマス」

「ねえ、ぼくはー?」


 ヒョウスベさんは颯爽と戦場へと向かい、ニイノは忠告に従い不満げなマタンゴさんとお留守番をする事にしたらしい。


 いくら彼でもアサルトライフルを持った相手には勝ち目はない気もするけど、これだけ自信があるって事は勝算があるのかな。


「母ちゃんっ! よくわからないけど逃げたほうがいいんじゃ……!」

「アタシは逃げないヨ。気球を作らなくちゃいけないカラ。トモキ、頼んだヨ!」

「わかってます。リンドウさんの夢は俺が護ります」


 不穏な空気にアマビコは母親に逃げるように促すも、彼女はもちろんそれを断った。


 どうせこう言って梃子でも動かないだろうと予想はついていたが悲しいかな、俺達が戦う以外に選択肢はなくなってしまった。


『多分ヒョウスベだけでもなんとかなるとは思うけど、バステ弾とかで援護してやりな。でも足手まといにはならない様にね。お前さんならマップ機能も使えば無双出来るでしょ』

「簡単に言うなよ、ったく」


 確かに敵の居場所が手に取るようにわかるマップ機能は最強のチートだ。


 ちゃんと考えて戦えば余裕で勝てるだろう。これが実際の戦いではなく、死ぬ危険性も痛みも存在しないゲームの世界ならば。


「だけど全員が確実に生き残るにはチート持ちの俺がこの作戦の肝だ。それは認めるしかないな」

『そゆ事。ロボット兵器は気にしなくていいから人だけをやっつけてね。でも無線で指示を出すリーダーは眠らせたら駄目だよ。言いたい事はわかるね』

「大体はな」


 だが少なくとも俺の攻撃で相手が死ぬ事は無い。むしろバステ弾なら掠めただけで無力化出来るので威力の高い銃よりも戦えるだろう。


 敵を全滅させ、リーダーの精神を乗っ取ればこの戦いに勝利出来る。気が進まないが行くとするか。

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