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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第一章 終わりに向かう二つの世界【第一部1】

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1-79 勇者の通過儀礼スライム虐めについてのどうでもいい議論

 リンドウさんは食事を済ませてすぐに気球制作に取り掛かり、俺達はというと特にする事がないので海を眺めてただただ無意味にぼーっとしていた。


「わふーん!」

「わーい!」

「キャッキャ!」


 浜辺では犬モードのサスケにマタンゴさん、ニイノがキャッキャウフフと水をかけ合い楽しそうにはしゃいでいる。海と言えば水着回だが、お色気シーンが一切無くてもこれはこれで癒されるのでありだろう。


 海には朱色の鳥居がそびえ立ち下部が沈んで海上に浮かんでいる様に見える。


 雲一つない晴天と大海が一面に広がる蒼の世界にポツンと存在する鳥居はひどく異質であり、同時にこの上なく神秘的で、日本を感じさせる景色であるのにここが異世界であると感じてしまったんだ。


「お二人は海で遊ばないんですポ?」

「海は苦手なんだ、義手が塩水でやられるし」

「アタシも羽根が濡れて飛べなくなるので好き好んで海には入りませんね」

「そうですかー。私の地元は海がないので結構テンションが上がりますけど、そういうものなんですね」

「漁師や貿易をやってる奴ならともかく、あった所で特に用事もないから別に行かねぇしなあ。でも潮風キツイな、長い事砂漠を歩いて砂が入っちまったし後でメンテナンスしておくか」


 少し離れた場所にいる女性陣とタヌキは海には一切興味を示さず子供たちを見守る事にしたらしい。


 気温も温かく海水浴には最適だが水着を着ているギャルは一人もおらず、海にいるのは素潜り漁をしているディーパくらいだ。


 ディーパは魚類だけあっていとも容易く素手で魚を捕まえ、ポイポイと待機していた小船の桶の中に獲物を放り投げる。


 一見非効率的だが、これならばあまり傷もつかないし道具のコストもほとんどかからないので案外理に適っているのかもしれない。


『智樹ちゃんは海で遊ばないのぉ? 若者なら海ではしゃごうよ。お前さんはテンション上がらないの?』

「一度海の近くを歩いた事があるがその時丁度清掃作業の真っ最中でな。それ以来海にはなるべく近寄らない様にしていたんだ」

『あらら、ごめんなちゃい。失言だったね』


 まれっちは俺たちの時代では海は決して楽しい場所ではない事に思い至り、ククッと笑いながら謝罪をした。


 あの時嗅いだ腐敗した水死体の強烈なニオイは数日間鼻にこびりつき、しばらく食欲が戻らなかったっけ。


「ところでまれっち、俺は何をすればいい。する事がないんだが」

『今は待ちの時間だ。気球が完成するまでは何もしなくていい。町の外に行ってマタンゴさんでもシバいてレベリングしておけば?』

「人として大事なものを無くしそうだからやめておくよ。ちなみにこの世界ってスライムはいるのか?」

『いるにはいるよ。基本人は襲わないけど倉庫に忍び込んで食糧とかを食べるから駆除の対象だね。ぷにぷにして可愛いし、もちろん服も溶かしちゃうよ』

「もちろんって何だ。でもどうしてゲームの主人公ってあんな可愛い生き物をひのきのぼうで撲殺する事が出来るんだろうな」

『それが正義のためだからじゃないかな。世界を救うっていう大義名分があれば動物を虐待して殺してもいいのさ。智樹ちゃんはサバイバル演習で食糧調達のために生き物を殺した事は無いのかい? この前リアンちゃんとそんな話をしてた気もするけど』

「聞いてたのか」


 当たり前だが常時俺達を監視しているまれっちは、サンドワーム戦後にしたリアンとの会話も聞いていた様だ。


『ごめんねぇ、出歯亀の真似事はしたくはなかったんだけどさ』

「別にいいさ、監視されるのは慣れているし。むしろこの世界には監視カメラが全然なくてムズムズするくらいだ」


 もっともディストピアな監視社会ではハナからプライバシーという概念自体存在しないので、そんな時代に生まれ育った俺はそれに関して特別何かを思う事は無かった。


「生き物の命を奪うのって全然簡単じゃないのにな。あの時からどれだけマズくても肉や魚は一欠けらも残さず食べる様にはしているよ」

『食育にはいいかもね。ちょっと残酷だけど』


 まれっちととりとめのない会話をしながら時間を潰し、口寂しくなった俺は昆布をもしゃもしゃとかじった。

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