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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第三章 果てしなき大地、気高き欲望を持つ変革者達【第一部3】

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3-128 一線を越えたゴルイニシチェ

 村の入口には既に人だかりが出来ており、俺は彼らを掻き分けて中央へと向かう。


 そこにはやはり深手を負ったナジム族がいて、開かれた門からは続々と負傷者が運ばれていた。


「たすけて……」

「どいてくれ! 早く治療しないと!」

「っ」


 むせかえる様な血のニオイは何度嗅いでも慣れる事はない。


 悲鳴を上げる事も出来ない負傷者はか細い声で助けを求め、ナジム族の男性は彼らを何とかして助けようと急いで病院へと運んだ。


「俺に任せてください!」


 正気を失いそうになったが俺はどうにか意識を強く持ち、先ほど鳴滝のメモリカをセットしたばかりの回復弾を怪我人に発射する。


「何するんだ!?」

「う、ううん」

「傷が塞がってるぞ!?」


 一見すると苦しむ怪我人にとどめを刺しただけなので周囲の人間は唖然としてしまったが、負傷者が意識を取り戻した事でさらに驚いてしまった。


 現代の技術でも助かるか助からないか五分五分の大怪我だったのに一瞬で治療出来るだなんて上位互換ってレベルじゃない。メモリカの記憶の持ち主には感謝しないと。


「みんなー!?」

「酷い怪我です……!」

「キーア、カムナも手伝ってくれ!」


 俺を追いかけてやって来たキーアとカムナも惨状を目の当たりにして絶望してしまい、酷とはわかっていながらも手が足りなかったので彼女達にも指示を出す。


 二人は怯えつつも言われるがまま指示に従い、簡単な止血や応急処置を行った。


 だが多くは既に事切れており、脈に手を当てたカムナは悔しそうに首を横に振ってしまう。


「何があったんですか?」


 俺は他の怪我人にも回復弾を撃ちながら事情を聴く。


 けれど今しがた助けたナジム族の男性はキンデルを襲撃すると叫んでいた隣村の部族だったし、おおよその見当はついてしまう。


「俺達はキンデル派を打倒する為に集まったんだが……そこにキンデルが雇った傭兵がやってきて……皆殺された……! 女も子供も見境なく、全員だ!」


 キンデルが雇った傭兵――それは確実にゴルイニシチェだろう。


 あいつらは同じ国の人間でも情け容赦なく殺していたし、グリードならばなおの事残酷になれるはずだ。


 彼らの独断専行の可能性もあるが、状況を考えればニューナジムや同じ派閥の部族を護るためキンデルが指示を出したとしても不思議ではない。


 俺はキンデルを信じたかったがそれは違うと断言出来なかった。非道な様に見えても為政者は時として残酷な判断を下すものだからだ。


「俺達は舐めていた……あいつらはそんな甘い連中じゃなかった……敵だからってやっていい殺し方じゃなかった……!」


 ゴルイニシチェが悪逆非道なのは敵に恐怖を植え付け戦う意志を奪うためだ。勇猛果敢なナジム族の戦士は彼らの思惑通り絶望し、完全に戦意を喪失してしまう。


「遅れてやって来た他の部族も呆然としていたけど、すぐに武器を手に取ってニューナジムに向かった。全員皆殺しにするって言った、同じ目に味わせるって言った! 俺には止められなかった!」

「なんだって!?」


 だが全ての人間が暴力によって戦う意志を放棄するわけではない。あるいは憎悪によって報復をしようと考える者もいるだろう。


「そんな事をしてもゴルイニシチェに勝てるわけがない。全員返り討ちに遭う。それだけじゃない、全然関係ない民間人にも犠牲者が出るぞ……!」


 それは考え得る最悪のシナリオだった。憎悪に駆られた彼らには説得は通用せず、敵と認識したものを見境なく殺し続けるはずだ。


 きっと最期の一人が死ぬまで、憎しみが続く限り永遠に。

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