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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第三章 果てしなき大地、気高き欲望を持つ変革者達【第一部3】

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3-118 ユフィンでの楽しいひと時の終わり

 ユフィン旅行を終えてナジム村に戻る道中、皆はバスの車内でトランプをして楽しんでいた。


「よいしょっと。はいー」

「うぃ。うげっ、またお前か。さっき別れたばっかなのに」


 マタベエはニイノに掲げられ、座席の上からひょっこりと顔をのぞかせてカードを差し出し、前に座っていたリアンはその中から一枚引っこ抜いた。


 どうやらジョーカーではなかった様だが、反応から察するに一周してすぐに同じカードが手元に戻って来たのだろう。ババ抜きではよくある事だ。


 電車の様に座席がくるんと回らないので少しばかりやり難そうだったが、皆はそれも含めて楽しんでいた。酔いそうだし大人しく戻ってからすりゃいいのに。


「どうしたんだ、トモキ。具合が悪そうだゾ」

「梅干しならありますポ」

「いや、まれっちがいないと思ってな」


 キーアとモリンさんは浮かない顔をしていた俺を気遣ってくれた。だけどこの不快な感情は梅干し如きでどうにか出来るはずなんてない。


「まれっちさんがいないのはいつもの事だと思いますが。運転もオトハさんがしてくれていますし。ちょっと不機嫌そうですけど」

『つーん。別にいいですよ、帰った時にお土産で支払ってくれれば』


 けれど自由な希典先生がふらっといなくなるのは今回が初めてではなかったので、アマビコはさほど気にしておらず、むしろずっとほったらかしだったオトハが気になっていた様だ。


 ムゲンパレスの従業員である彼女は基本的にリモートで参加する事が多いが、ずっとお留守番をしていて寂しがっているに違いない。


 でもロボットである彼女にとってムゲンパレスで働き続ける事は存在意義そのもので、彼女も仕事を大事にしていたから出来ればその気持ちを尊重してあげたいし。うーん、どうするのが正解なのかな。


 だけど彼にトラウマを植え付けられたカムナだけは不穏な気配を察知したらしく、小声で尋ねた。


「……気になる事があるんですか?」


 しかし俺はあまり不安を煽りたくなかったので、話せる範囲でありのままの事実を伝える。


「昨日の夜まれっちと散歩したんだが、カムナと戦った時に力を貸してくれた奴と会ってな。二人とも散々思わせぶりな事を言ってどこかに行ったんだ」

「それってまさか」


 だが俺は上手くはぐらかす事に失敗し、カムナは希典先生が良からぬ事を企んでいるのではないかもしれないと危惧してしまった。


 けれど辺り一帯が水害や民族間の対立でピリついているこの状況ならば、普通そう考えてしまうだろう。


「いや、どちらかと言えば自主性に委ねている感じだったから問題ないと思う。問題が起きても極力手出しをするつもりはないからって」

「そうですか。良かった、とは少し言いにくいですけど」


 結局彼女は何か不測の事態が起こるかもしれないという事実を認識し、先ほどまで楽しい旅行の余韻に浸っていたのに険しい表情になってしまう。


 やれやれ、これがゲームならクイックセーブからロードして正しい選択肢を選べたんだけどなあ。管理者権限のレベルが上がったらそういう機能が追加されたりしないのだろうか。


「どうしたんだ? 旅行は帰ってからも楽しいんだゾ! たくさんお土産を買ったから皆もきっと喜んでくれるゾ!」

「そう、ですね」


 一番の当事者であるはずのキーアはこれから何が起こるのか全く理解しておらず、購入したお土産を気落ちするカムナに自慢げに見せた。


 せめてもの腹いせに代金は後で希典先生に請求しよう。


「さあ、もう少しでナジム村に……んゾ? 門が閉まってるゾ?」


 けれどナジム村の入口に辿り着いた時、キーアは村の門が閉じている事に気が付きキョトンとしてしまう。


 俺達がやって来た時は村の門は開いていたはずだ。木製なので耐久性はそこまでではないが、彼らにとって村の門を閉じるという事は最大限の防衛だ。


 つまりこれは普通ではない、異常な事態と言うわけである。


「……?」


 また櫓にも弓で武装したナジム族が警戒しながら村の外の様子を伺っており、彼らは俺達の姿を認識して何かを話し合っていた。


 塀に阻まれここからでは中の様子をうかがい知る事は出来ないが、俺にはマップ機能のチートがあるのでのぞき見をする事が出来る。俺はすぐにマップ画面を開いた。


「ッ!?」

「どうしたんですか、トモキさん。何を見たんですか」


 そして俺は知りたくもなかった塀の内側の光景を目の当たりにしてしまう。


 マップ画面は他の皆には見えないけど、カムナは俺の反応ですぐに何か恐ろしい事態が起きている事を理解した様だ。


 活気のあった村だというのに、誰一人として外を歩いていない。


 代わりに多くの人が村で唯一の病院らしき施設で寝込み、死屍累々となって苦しんでいたのだ。


「んゾ? どうしたんだ?」


 キーアは当然何が起きているのか知る由もない。俺は彼女にこの悪夢の様な事実を今から伝えなければならないと思うと気が滅入ってしまった。

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