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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第三章 果てしなき大地、気高き欲望を持つ変革者達【第一部3】

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3-109 キーアとのユフィン観光

 その後は自由行動をする事になり、俺はキーアと共に情緒あふれるユフィンの町を散策していた。


「おー! 凄く速いゾ!」

「おう、もっとスピード上げてくぜ!」


 タクシー代わりに移動の足として用いるのは人力車だ。車夫のキガン族の男性はダンプカーの様に猛進し、全速力で走っているのにまるで疲れている様子はなかった。


 俺も人力車の存在は知っていたけど乗った事はない。日本人ならもうちょっと日本の文化に触れてから異世界転移しておくべきだったな。


「うぉ?」

「んゾ!」


 だが盛り上がっていると三輪オートが走り去って人力車を易々と追い抜いてしまい、お互いポカンとしてしまう。流石の力自慢でも時代の最先端を行く自動車には勝てなかった様だ。


「負けるナ!」

「おうよ! ユフィンの車夫が鉄の塊なんぞに負けるか! ツクス男児の意地を見せたらぁ!」

「のわー!? ちょ、速いですって!?」


 悔しがったキーアは車夫を煽り、彼もまた意地を張ってさらにスピードを上げ、俺とキーアは開放的な車で慣性の法則を全身で感じてしまう。


「ストップ、ストォップ!」

「あはは、速いゾ! 楽しいゾ!」


 だが当然安全基準なんてものは全く考えておらず端的に言って滅茶苦茶怖かった。というかこれうっかり落ちたら普通に死ぬ。


 キーアはジェットコースターに乗っているみたいな感覚だったけど、何でこんな拷問みたいなアクティビティを楽しめるのだろうか。



「ほげー」


 拷問、ではなく人力車体験を終え、俺は口から魂を出して脱力していた。どうやら無事に生き延びる事は出来た様だが、もう二度とこんな体験はしたくないものだ。


 硫黄のニオイがするけど俺は今どこにいるんだろう。草木も生えていない岩山にいるみたいだけど、これはこれで水墨画の様に荒々しく見事な景観だ。


「どうしたんだ? 疲れてるなら温泉に入るか?」

「入ったら多分死ぬと思う」


 キーアは本気なのか冗談なのかわからなかったがそんな馬鹿馬鹿しい提案をした。確かに目の前にあるのも一応温泉に違いない。


「ふぃ~、極楽極楽」


 ただ温泉は泡を吹いて煮えたぎっており、入っているのは岩の肉体を持つキガン族だけだ。彼らにとっては適温なのだろうけど、人間があの中に入ったら確実に死ぬはずだ。


「ところで皆普通に露天風呂に入ってるけど開放的過ぎるっていうか……そんなもんなの?」


 しばらくして俺はこの地域の文化が気になってしまう。俺達の世界でもほったらかし温泉はあるにはあるけど、彼らは誰でも見れる状態で入浴していた。


 もちろん岩石がお湯に浸かっているだけだからあれを見てもどうとも思わないし、基本的に他の種族は性欲の対象として認識しないという感覚は知っていたけど、このあたりもそういう文化なのだろうか。


「別に普通だゾ? ただ大体の人はちゃんとした施設に行ってお風呂に入るナ。そっちのほうが綺麗だし、いろいろ準備してくれてるし」

「それもそっか」


 どうやらほったらかし温泉はこちらの世界でもあまり主流というわけではないらしい。実際リラックスするためにはるばるユフィンに来ているわけだし、どうせお風呂に入るのなら旅館や宿に泊まって温泉に浸かりたいと考えるのが自然だろう。


「そうだ、折角ユフィンに来たんだから一緒にお風呂に入るか? 町の方にあったし」

「ああうん……どぅえ!?」


 この世界の風習を学んでいるとキーアはなかなかとんでもない提案をする。だが彼女は微塵も恥ずかしがっていないし、その行為は彼女にとってはなんら奇妙な事ではないのだろう。


「え、いや、本気?」


 つーか町中って。まさかこんな感じで町中にほったらかし温泉があるのだろうか。混浴が当たり前だった江戸時代くらいの感覚ならともかく、流石にちょっとなあ。


 それに何より俺の背中には火傷跡がある。大きな怪我が珍しくないこの世界ならあまり気にする必要もないのかもしれないけど、これを見られるのはなあ……。


「本気って何がだ? 普通の事だろ? それともキーアと一緒に入るのは嫌か? キーア、トモキと仲良くお風呂に入りたいゾ」


 けれど俺の態度を拒絶と認識したのか彼女はしょぼんとひどく落ち込んでしまう。


 どちらかといえば混浴よりも背中の火傷跡のほうが問題だったんだけど、彼女には間違って伝わってしまった様だ。


「ああうん、わかったよ」

「おお、そうか! じゃあ早速温泉に行くゾ!」


 その悲し気な姿に敗北した俺は彼女のためにこの地域の文化を受け入れる事にした。


 でもセーフだよな、これはこの地域の伝統と文化だから。下心なんてないからな!

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