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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第一章 終わりに向かう二つの世界【第一部1】

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1-41 壁ドンしてごめ~ん

 福岡城の裏ルート。俺はその話を聞いて真っ先にどこかで聞いた福岡城の隠し通路についての噂を思い出した。


 日本にある多くの城には緊急時のための隠し通路があり福岡城にも存在していたはずだ。当時の人にとっては最重要機密事項であり、把握されないまま忘れ去られた通路も含めればその類のものは一つや二つどこの城にだってあるだろう。


 ただ隠し通路はガイドを頼りに進めばいいとして、まずは福岡城に辿り着く事から始めなければ。


 俺たちはアシュラッドの市街地エリアを小走りで移動、群衆に紛れて怪しまれない様に福岡城に向かっていた。


 群衆のおかげで追ってからは見つかりにくいが、同じ事は俺たちにも言える。これだけ人が多いとマップ機能による索敵もあまり役に立たず、情報量が多すぎて頭がパンクしそうになったので俺は途中でやめてしまった。


 俺が人外の頭脳を持つ天才ならこれくらい容易に処理出来たのだが、生憎コーヒーで糖分とカフェインを補給したところでこればかりはどうにもならない。大人しくまれっちにその辺りのサポートは委ねよう。


「トモキ、ビビり過ぎだ。そんな目つきじゃ怪しまれる。脱獄した死刑囚みたいだぞ」

「実際似た様なものだけどな。だがこちとら一度も本番は経験していないんだ。そりゃ二人は何回も危ない橋を渡って来たから耐性はあるんだろうが」

「ふむふむ、つまり本番行為は初体験だからお前はとってもドキドキしているんだな」

「その通りだがなんで言い換えたんだ?」


 俺はひどく警戒していたせいで職質される程度に挙動不審になっていたが、リアンは下ネタを言える程度に余裕だった。俺も彼女と同じくらい強心臓になれればいいんだけど。


「よかったな、サスケ。アニキの初体験の相手になれて。ケツをしっかり守ってやれよ」

「はいでヤンス?」

「背中を任せるを砕けた表現で言っただけだから気にするな、サスケ」


 彼女は純粋無垢なサスケにも絡んだが、品のないボケのおかげで俺は少しだけ緊張がほぐれた。これを計算でやっているのなら大したものだけどそういうのは全然意識してないんだろうな、品性下劣なこいつは。


「ん」

「おわっ?」


 しかし完全に油断しているとリアンはいきなり俺を壁に押し付ける。いわゆる壁ドンのポーズだったが、完全に不意を突かれたせいで普通に驚いてしまった。


「ねね、姐さん!? そそ、そんな大胆でヤンス!?」

「えと、リアン」

「そのまま大人しくしてろ。絶対に上を見るな」

「あ、ああ」


 サスケも突然の事に赤面していたが、リアンの顔は真面目だったのでこの行為には意味があるらしい。俺は言われるがまま視線を上に向ける事無く彼女の顔を見続けた。


 ただそれはそれとしてあらゆる意味で緊張してしまう。吊り橋効果を最大限に活用したこの状況で発動した壁ドンは、恋心を抱いていると錯覚してしまう程胸を高鳴らせるのに十分だった。


「ごめ~ん」

「ぶふー!?」


 けれどそれもほんの一瞬、リアンは脱力感あふれるマスクで目元を覆い変顔ボケに走ったせいで俺は噴き出してしまう。うん、やはり俺の感情は錯覚だったらしい。


「こらリアン。こっちの世界にもあったのか、にわ○せんぺい」

「復刻版だけどな。土産物屋ならどこでも簡単に手に入るぞ」

「お前がローカルCMのネタを知っていた理由は追求しないが、どうしていきなり壁ドンをしたんだ。もう上を見ていいか?」

「ああ、いいぞ」


 リアンの許可を得た所で俺は空に視線を向けると、背中から翼が生えた王国兵がどこかに去っていく姿が確認出来た。


「なるほど、空から俺たちを探しているというわけか」

「視力が良くて空を自由自在に飛べるカルラ族はどこの業界でも引く手数多なんだ。もちろん王国兵もな」


 戦場で空を飛べるというのは言うまでもなくかなりのアドバンテージとなる。


 攻撃だけでなく偵察とより取り見取りの運用が考えられるので、もしも現実世界にいたらかなりの脅威になるだろう。


 地上からは姿が認識出来ないほどの高高度から爆弾や化学兵器を投下する、なんてえげつない使い方も出来るだろうし。


「空から見つからない様にひさしの下やアーケードを通ったほうがいいな。まれっち、ルートの変更は出来るか?」

『そのつもりで最初から設定してるよ。っていうかなんで路面電車って便利なものがあるのに乗らないの? すぐ近くに駅があるからとっとと向かいな。まったく、いちいち聞かずに少しは自分で考えなって』

「へいへい」


 まれっちは鬱陶しそうにそう伝え、俺は何だか騙された気分になりながら移動を再開した。どうせならもっと早くに教えて欲しかったんだけど。

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