3-100 評判の悪いマレビトの傭兵団の噂
ニューナジムタワーの観光を続けるとテナントの雰囲気が変化し、さらに豪華な店が立ち並ぶエリアに変化した。
この辺りにはクラブやカジノもあり富裕層向けに設計されているらしい。
飲む打つ買うが好きな遊び人には最高だけど、正直こういう雰囲気は苦手だ。お酒を飲む場所はたくさんあるし、希典先生は大はしゃぎしそうだけど。
希典先生は今キンデルとどのような話し合いをしているのだろう。話が俺の望まない方向に進んでいないといいけど。
先生の事ももちろん気にはなるが、俺はある事を思い出しラバーナ区長に尋ねた。
「そういえばラバーナ区長、キンデルさんがマレビトの傭兵団を雇ったとかそんな噂を耳にしましたけど」
「ご存じでしたか」
俺がその話題を振ると彼女の表情はあからさまに強張ってしまう。どうやらこれはあまり聞かれたくない話題らしい。
「そのマレビトの方々はそちらの世界で兵士として戦い、部隊ごとレムリアに迷い込んだそうです。傭兵として雇ったわけではなく保護をしているだけなのですが、兵器も多数保有しているので住民の方々が不安に思われても仕方がないですね」
どの様な経緯で異世界転移をしたのかわからないが、そんな物騒な連中がやって来ては現地の人々も手に余るだろう。
その言葉を素直に信じるのならば、だけど。
「彼らの生活費は全てこちらで出していますが、豪華な暮らしが好きな様で少々費用がかさむと言いますか……その……」
「税金で贅沢三昧をしているから領民から文句が出たと」
「そう、ですね」
また俺が追及すると、ぼかそうとした彼女は言いにくそうに実情を教えてくれた。
マレビトは敬意の対象ではあるので、批判されそうな事はあまり大きな声では言えないのだろう。ましてや革新的なキンデルはただでさえ敵も多いみたいだし。
「別に普通の事じゃね。マレビトや転生者が好き放題するのは今に始まった事じゃないだろう」
だがここにいるメンツは人間を良く思っていない奴らも多く、リアンは嘲笑しながらすんなりとその事実を受け入れる。
「否定はしませんね。だからこそナジム族はアンジョ嫌いな人も多いわけですし。きっといつもの様にこのあたりで高級なお酒を飲んでいると思いますよ」
ラバーナ区長は諦めたように答え、周辺の店でもとりわけ豪華なキャバレーの入口に視線を向ける。
煌びやかすぎて目が痛くなるほど眩しいが、こんな場所で酒を飲んだら一瞬で何十万、何百万という額の大金が財布から飛んでいくはずだ。
図々しい人間ならタダって事をいい事にいくらでも飲み食いするだろうな。
「クソ、な、なんなんだよあいつ! こんな店二度と来るか!」
「お?」
「ふぎゃっ」
だがドアを眺めていると店内からナジム族が現れ憤慨した様子で去っていき、その際マタベエは蹴り飛ばされてしまった。
顔に殴られた痕跡があったけど何があったのだろう。
「あわわ、マタベエ!」
「びっくりしたー」
「大丈夫か?」
「もう、いきなりなんなんですか!」
カムナは転んだマタベエを慌てて助けるが、目立った怪我はないので転んだだけの様だ。
彼女もまた謝りもしない態度にぷんすかと怒ってしまうが、友達を優先し追いかける事はしなかった。
「あれ? 今の人鼻から血を流してなかったでヤンス? それともオイラの見間違いでヤンスか?」
サスケは目の前で起きた出来事がすぐには信じられなかった様だけど、状況的に考えれば誰が何をしたのかは明白だ。
ここはマレビトの傭兵団がたむろしている場所らしいし、ひょっとすると……。
「見間違いじゃないだろうナ。ちょっと様子見てくるゾ!」
「待て、キーア!」
状況から良からぬ想像をし、義侠心に駆られたキーアは店内に突入する。
確実に面倒事に巻き込まれそうだが追いかけるしかない。本音では好き好んで危険を冒したくないし滅茶苦茶嫌だけど。




