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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第一章 終わりに向かう二つの世界【第一部1】

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1-40 アシュラッドからの脱出・裏ルート

 アシュラッド城の塀の上は実に眺めがよく敵を狙撃するには最高だ。大砲の様なものもあるが見た感じ火薬によるものではなく、多分だが魔力の砲弾を発射するタイプなのだろう。


 余裕があればこの世界の城をじっくり見て観光したかったがそういうわけにもいかない。


 俺たちは大砲の近くまで移動し、リアンは先にセッティングしてあったワイヤーロープでするすると降下した。


「トモキー、自分で降りられるよな?」

「え? それは無理だと思うでヤンス。オイラも降下を極めるのに何年も、」

「問題ない」


 サスケは何かを言おうとしていたが降下訓練は腐るほどやってきた。俺はいつも通りするすると落下、三階ほどの高さから一気に地面へと着地した。


「おお、すごいでヤンス!? マレビトさんは素人じゃなかったでヤンスか!?」


 続けてサスケも驚きながら素早く落下、俺と比べると降下速度は若干早かった。盗賊であろう彼も一応プロなので潜入に関しては特殊部隊にも引けを取らないのだろう。


「素人だよ。海外で起こったゾンビハザードの復興支援に向かうにあたって身を護るために武器の扱い方や人の殺し方を学校で勉強しただけで」

「それって要するに軍隊だよな? なんだ、お前兵隊だったのか」

「偉い人いわく俺たちは軍人じゃないそうだ。戦車も銃も持ってるけどあくまでも非戦闘地域で復興支援するために派遣されて、不幸にも現地で偶然ゾンビや武装勢力と戦うっていう想定外の事態に巻き込まれるだけで。うちの国は法律で戦争が出来ない事になっているからいろいろその辺がややこしいんだよ」

「はあ、難しい話はよくわかんないでヤンスが」


 偉い人が国会でした答弁をリアンとサスケにそのまま伝えると、当然しっくりこないリアクションをしてしまう。


 けれどどこからどう見ても軍人だとしても、建前では復興支援のために派遣された学生だと偉い人がそう言い張るから仕方がない。


「それじゃあリアン、サスケ。アシュラッドから出るために裏ルートを使うが構わないか?」

「オレはそれでも構わないけど、っていうかそんな便利なものがあんのか?」


 一息ついた所で脱出するためのルートを提示するとリアンはかなり驚いた。


 防衛の要であり唯一の出入り口である門は悪事をするうえで最大のネックであり、盗賊の彼女は何よりも真っ先に別の侵入経路を調べたはずだ。


 そんな彼女が知らないという事は一般的に裏ルートの存在は知られていないのだろう。


「俺もよく知らんがサポートしてくれる奴いわくあるらしい」

「なんだそれ。でも門を突破するのはかなり難しいしそうするしかないか。一応ドームを壊すつもりでいろいろ用意してたけど。まー実際宝物庫で妙な事してたし信じてみるか」


 正直自分ですら半信半疑だったし眉唾な話ではあったが、一連のやり取りで信頼関係を構築したおかげでリアンは俺を無条件で信じる事にした様だ。


「じゃ、しばらく命は預けるぜ、相棒!」

「おっと、相棒ね」


 そして彼女は八重歯を見せてニカッと笑い勢いよく肩を組んだ。


 ただ一般的にはスキンシップに該当する行為なので、友情的なものだとしても俺は少なからず照れ臭かった。


 愛理とは違うワイルドな関係性だがこういうのもなんだかいいな。


 学校の連中とはそこそこ仲は良かったけどお互いあまり近付き過ぎないようにしていたし。虐めや恋愛を巡るトラブルで信用スコアを持っていかれたら例外なく社会的に死ぬからなあ。


 ありゃ、そもそも俺と愛理ってどういう関係なんだっけ。友達以上恋人未満って奴とはなんか違うし。まあそのへんはいいか。


「ならオイラはアニキと呼ばせてほしいでヤンス! ピンチを助けてくれた上に姐さんの相棒ならオイラにとってもアニキでヤンス!」


 サスケのほうはこれでもかとしっぽを振って目を輝かせ尊敬の眼差しでそんな提案をする。わんこ系という表現がこれほどまでに相応しいショタもいないだろう。


「別にいいけど。アニキ、うーん。いい響きだ」

「随分とキモい顔してるな?」

「男なら一度は舎弟を作るという行為に憧れるものだからな、これから存分に可愛がってやろう、グヘヘ」

「はいでヤンス!」


 俺は世間体を全く気にせずサスケの頭をわしゃわしゃと撫でた。でも別にこれは俺がよからぬ性癖を持っているとかそういうのじゃないからな。


『あー、コホン。だから俺っちの事忘れてない? 二次創作でネタにされる行為は慎むように。とっとと隠し通路のある福岡城に向かおうか。周りの奴にも見られているよ』

「すまんすまん」


 ただ仲良くじゃれ合っているとまれっちからお叱りの言葉が飛んでくる。


 実際通行人はかなり不審がっていたが、世間体どうのこうのではなく城の塀から明らかに城の関係者じゃない奴らがロープで降りてきたら大抵の人は良からぬ連中だと認識するだろう。


 俺が通行人でもしこんな光景を目の当たりにすれば即座に最寄りの交番に直行する。きっと彼らのうち何人かは行動に移しただろう。


 つまりとっととここから逃げなければいけないというわけである。んじゃ、そこまで時間に猶予があるわけじゃないしとっとと目的地に向かおうか。


 でも福岡城って。道中もしかしたら福岡じゃ……という光景や名残はしばしば見受けられたがまんま実在の歴史的建造物である。もう匂わせる気も隠す気もまるでない様だ。

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