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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第三章 果てしなき大地、気高き欲望を持つ変革者達【第一部3】

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3-90 工業系ラブコメ?

 族長の自宅前の庭には壊れた洗濯機が置かれ、リアンとリンドウさんは修理をするため工具箱を携え早速分解と洗浄を始めた。


「なー、直せそうか?」

「わかんね。でもそこに壊れたメカがあるなら分解して直してみたくなる。それが工業系の性ってもんさ。仮に直せなくても使えるパーツを洗浄して売ればちゃんとした洗濯機を買う元手にはなるだろう」

「そっか。じゃあよろしく頼むゾ」


 キーアは不安げに状況を確認すると、リアンは能天気な返事をした。


 この調子だとお互い半分くらいは無理だと思っているのかもしれない。


「おほー、こんな事になってるのカイ。どれどれ、恥ずかしがらずにオバちゃんに見せてくれないかナ」

「うっは! こいつはエロイ配線だ! サビだらけだけど昔は相当いい機械だったんだろうなあ~。回してぇ~!」

「ほー。なートモキ、これってエロイのか?」

「一般的にはそう表現する事はないな」


 だがガチ勢の二人はやや卑猥な表現を用いて分解作業を楽しんでいたので、俺達はついていけずほどほどに流す事にした。


 未知の先進的な技術を学べる事は工業系にとっては楽しくて仕方がないのだろうが、公衆の面前なので少しは自重して欲しいものだ。


「今は何をしているんだ?」

「見てわかんないのか、洗浄してる。まずはとにかく洗浄してサビや汚れを落とすんだ」

「そんな時に便利なのがコレ、アタシお手製の高圧洗浄機サ。水の魔石が仕込まれていてすぐに汚れが落とせるんだヨ」

「へー、いいもん持ってんな。後で作り方教えてくれよ」

「ああ、もちろんいいヨ!」


 二人はひたすら地道に汚れを落としており、お互いに知識を交換しながら楽しく技術を学び合っていた。


「こうやってプシュー、とネ」

「おー」

「おー」


 正直どうしようもないと思っていたがリンドウさん謹製の高圧洗浄機は驚くほど高性能で、通販番組を見ているかの様に汚れが落ちていく。


 それはただの単純作業であるはずなのに、見学していた俺とキーアは次第に楽しくなってしまった。


「サビ止めもおまけしておいて……取りあえずこれで最悪パーツとしては売れそうだな」

「随分と手馴れてるな」

「昔から壊れた家電とかを修理したり分解したりして小遣い稼ぎをしてきたからな。機械いじりはバッタ屋の必須スキルだよ」


 リアンはニマリと笑って自らの技術を自慢し、新しいパーツも組み合わせ壊れた洗濯機に再び命を吹き込んでいった。


「ただし壊れた家電の出所は聞くなよ」

「わかってるよ。室外機ってお前みたいな奴が盗んでいくんだな」

「わざわざ人の家から盗まなくてもアンジョの遺構に行けばその辺に転がってるぞ。バレたら捕まるけど」


 その腕前こそ目を見張るものはあるが、きっと家電は全て盗品なのだろう。


 盗掘されたものを修理して売買する行為はある程度黙認されているグレーゾーンなビジネスだと前に教えてもらったし、別にそれを咎める事はしないけど。


「泥棒は良くないゾ?」

「アハハ、耳の痛い話だネ」


 キーアは不思議そうな顔をしてごくごく当たり前の注意をしたが、純粋な瞳を前にリンドウさんも流石にバツが悪かったらしい。


 必要悪とはいえ、盗品を売買していた行為に対して後ろめたいものは多少ある様だ。


「ただ金儲け関係なく機械を修理するのは好きだぞ。こうしてサビと油にまみれながら、無心で機械いじりをすると癒されるんだよな。オレにとってこの鉄サビのニオイはどんなアロマよりもリラックス出来る故郷のニオイなんだ」


 そう言ったリアンの瞼の奥には愛すべき故郷の景色が浮かんでいた。


 目を閉じれば俺にも見える。ネジと歯車によって作られた黒鉄の街には威勢のいい労働者の声が聞こえ、融解された鉄から文明の利器が生み打され、脳を揺さぶるほどの轟音と共に煙突から白煙を吹き出す光景が。


「つってもトモキにはわからないか。故郷の景色っつったら大体は田んぼとか川とかそんなもんだし。ナーゴは観光するとこも少ないし楽しい場所じゃないからなあ。メシは美味いけど」

「いいや、俺もいつかリアンの故郷のナーゴに行ってみたいなって思ったよ」

「そっか。オレもそのうち地元に帰りたいな」


 盗賊家業をしてお尋ね者となっているリアンは堂々と地元に帰る事も出来ないはずだ。だから彼女が寂しげに呟いた願望は叶う事はないのだろう。


「じー。なあリンドウ。これってラブコメか?」

「そうかもネェ。まったくトモキは罪な男だヨ」

「は!? いや違うから!」


 しんみりとした空気になりそうになった時、キーアはあらぬ誤解をしてリンドウさんは笑いながら肯定する。


 もちろんリアンは慌てて否定したが、ここまで恥ずかしそうなリアクションをしなくてもよかったのに。


「ラブコメかと言われれば一概には言えませんね。別に友情ルートでも構いませんし。というかリアンだけはないです」

「全否定されるのもなんか腹が立つんだが」


 俺は角を立てない様にフラグをぶち壊す発言をし、シラフに戻ったリアンは不機嫌そうにスパナを回した。


 だけど友情ルートにしてももうちょっと気の利いた事を言えばよかったかなあ。


 俺がモテないのはこういうデリカシーがない所なんだろうな。

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