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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第三章 果てしなき大地、気高き欲望を持つ変革者達【第一部3】

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3-89 困った時の魔改造

 ひと悶着あった後ブゴッタマーケットからナジム村に帰ったが、俺は揺れるバスの車内で常に襲撃を警戒していた。


 もしかしたら今こうしている間にもキンデルの手の者が襲撃してくるかもしれない。


 龍帝タイロンがカムナを刺客として差し向けた様に、不測の事態が起こる可能性は十分にあったからだ。


「ビビり過ぎだって。何かあれば俺っちが何とかするから」


 希典先生は市場で購入した駄菓子をつまみににごり酒の瓶をラッパ飲みしていた。


 その昔懐かしのどぶろくは彼の口にあったらしく、命の危機なんてお構いなしに上機嫌で舌鼓を打っていた。


「その何とかするっていうのは、具体的には……」

「向こうがそのつもりなら、そういう事もあるかもねぇ。まーキンデルはそんな割に合わない真似はしないだろうけど」


 カムナがおそるおそる質問すると彼はククッ、と含みを持たせる笑みを浮かべる。


 罪のない人間ですら殺した情け容赦ないテロリストである希典先生は、襲ってきた相手の命を奪う事に一切躊躇いなんてないはずだ。


「そんなの駄目です。わかってますよね」

「トモキさん……」

「へいへい、ならそうするよ。まったくお前さんは甘いねぇ」


 不安げな彼女の気持ちを慮り、俺は毅然とした態度で彼に忠告する。


 希典先生の約束は信用出来なかったけど、俺を信じて味方になってくれたカムナのためにもその一線だけは安易に越えてはいけない。


 たとえ自分が助かったとしてもそうなる事態は可能な限り避けたい。


 悪いのはレーザーをぶっ放して威圧して恐怖を与えた俺達に他ならず、彼らは自分たちの大切なものを護るために世界に滅びをもたらす魔王と命懸けで戦っているだけだからだ。


 キンデル一派は敵ではあるが悪ではない。たとえ直接手を下さず間接的に殺したとしても同じ様なものだ。


 容易く命を奪う選択が出来る希典先生がやり過ぎない様、彼の行動には注視しておかないと。


「しょぼーん」

「じめじめー」


 だがそんなシリアスな空気は落ち込むキーアと、彼女の頭の上に乗っかっているマタベエのおかげでマイルドになってしまった。


「なんかここ湿度高くないカイ?」


 からいも飴をかじっていたリンドウさんは、キノコが生えそうなキーアをおかしそうに笑った。


「げんきがないときはいっしょにじめじめすればたのしくなるよー」

「うう、ありがとう。キーアも一緒にキノコになるゾ」


 キーアは俺達の事情なんて知る由もないが、やはり因縁のあるガマガンに馬鹿にされてショックだったのだろう。


「元気出せよ、キーア。そりゃあんな事を言われて悔しかっただろうけど」

「それもあるけど、ちゃんとした三種の神器を揃えられなかったゾ。これじゃあがっかりさせちゃうゾ」

「あ、そっちだったの」


 けれどキーアは自分が悪く言われた事よりもお祝いの品が手に入らなかった事に落胆していた様だ。どこまでもピュアな彼女を見ていると心が綺麗になっていく気がする。


「ちゃんとした物が買えなかったって事は一応買えたのか?」

「買えるには買えたゾ。でも訳アリのジャンク品だゾ」


 現場に居合わせていなかったリアンはその時のやり取りを知る由もなかったけど、バスの後部座先に置かれた洗濯機を見ておおよその事情を把握した。


「ふむふむ。家電は壊れていても解体すればいろんな部品が手に入るし、オレからすればかなりの掘り出し物だな」


 サビと汚れもひどくおそらく長い事屋外で雨ざらしになっていたのだろう、購入した洗濯機は見るからにボロボロでちゃんと動くかどうかも怪しかった。


 工業系のリアンが分析した様に、店の人もパーツを回収する事を想定して販売していたのかもしれない。


「キーアは普通に使って欲しいんだゾ。それに分解なんて難しい事出来ないゾ」

「ふーん、状態は悪いけど元々はそれなりの逸品だったんだろうなあ……もしかしたらオレなら直せるかもしれないけど試してみるか?」

「え! 本当か!? じゃあお願いするゾ!」


 だが壊れた洗濯機を眺めていたリアンの言葉に彼女は希望を見出してしまった。


 しかし俺はすぐには信じられず、大口を叩いたリアンについ尋ねてしまう。


「おいおい、そんな安請け合いしていいのか? こんなのボロボロの洗濯機を直すなんて俺達の世界の技術屋でも無理だぞ」

「だからこそ血が騒ぐってものさ。工業民族ナーゴ人の技術力を舐めんじゃねぇぞ?」

「頑張ってください、姐さん! 姐さんならきっと出来るでヤンス!」


 しかしリアンは強敵との戦いを心待ちにしている猛者の様に義手を光らせ、彼女に全幅の信頼を置く舎弟はしっぽを振ってエールを送った。


 どうやらリアンにとっては利益や労力なんて関係なく、この困難な作業を一種の挑戦として捉えているらしい。


「つーわけだ、お前の母ちゃん借りてくぞ」

「アラ、アタシもお楽しみに混ぜてくれるノ? そりゃ嬉しいネェ」

「爆発させるのはいいけど変な魔改造だけはしないでね、母ちゃん」


 リアンはパートナーにリンドウさんを指名し、こうなる展開を予測していたアマビコはなかなかとんでもない条件を提示した。爆発させるのは前提なんだな……。


「はは、やり過ぎない程度に頑張りな」

「うん、お願いするゾ!」

「任せとけ!」


 どの道洗濯機はこのままでは使い物にならないし、アフターサポートもとっくに期限切れだろう。駄目で元々だし好きにさせればいいか。


「そうそう、さっき買ったマナイの神籬も貸してくれるか。ひょっとしたら改造の材料に使えるかもしれないから」

「ん? ああ」


 リアンは何故か浄水器を所望したので、何故洗濯機を作るのにそんなものが必要なのかはわからなかったけど、俺は取りあえずアイテムボックスからマナイの神籬を取り出して彼女に渡した。


 この際成功報酬はどうでもいいけど、修理を待っている間にキンデルについての対応を考えないと。


 楽しんでいるリアンを邪魔するのも悪いし、まずは自分の意見をまとめておこう。

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