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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第三章 果てしなき大地、気高き欲望を持つ変革者達【第一部3】

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3-85 駄菓子選びの戦術~おやつは三百クリスタまで~

 商談が成立し携行式浄水器、もといマナイの神籬を入手した所で俺達は改めて本来の目的である三種の神器を探しに向かった。


「きんぎんざいほー」


 が、その前に俺達は駄菓子屋に寄り道をする。店内には昔懐かしの様々な駄菓子が雑多に並べられ、大はしゃぎしたマタベエはくるくると回って踊り始めた。


「寄り道ばっかして、本編が一向に進まないなあ」

「何言ってるんだ、ゲームと同じで寄り道は人生の醍醐味だよぉ。人生なんてものは最初から無意味だから、義務だけ果たして生き急いだところで何も楽しくはないのさ」


 希典先生も童心に帰り店内にある駄菓子を物色する。


 ただその駄菓子は赤いイカの奴や魚肉のカツ等、どれも酒のつまみに好んで用いられるものばかりだった。


「わあ、お菓子がたくさんありますね!」

「カムナはこういう所に来たりするんですか? 育ちが良さそうですけど」

「今でこそ私もお母さんも出世しましたけど、元々は庶民ですから」


 龍帝タイロンの側近まで上り詰めたカムナはそれなりに収入もあり美味いものもたくさん食べてきたのだろうけど、想い出はプライスレスだったらしく彼女も喜んでくれた。


「いろんなお菓子がたくさんあるゾ。どれを買えばいいか悩むゾ~」

「おやつは三百クリスタまでですポ」


 大量のお菓子の前で悩むキーアにモリンさんは遠足で定番の台詞を言った。


 今では物価の上昇により成立しなくなったけど、この世界では当時の価格とさほど変わらないので子供にとってはそれなりに大金らしい。


「ところでトモキ、今モリンさんが言った慣用句の元ネタはアンジョの有名な一節が由来になっているんだが、お前はもちろん知ってるよな」

「ああ。だからどうした?」

「つまり本来の意味は三百クリスタじゃなくて三百円って事だ。わかるだろ?」


 俺がルールの範囲内で何を買おうか迷っていると、ザキラは悪い顔をして俺に耳打ちして話しかける。


 この世界の日本円とクリスタの為替レートはわからないが、古銭としての価値も含めればかなり価値があるに違いない。


「言いたい事はわかるが……ちなみに三百円ならどれくらいのお菓子を買えるんだ? 一応財布の中に小銭はあるけど」

「このあたりの物価なら店と権利ごと買えるな」

「明治時代の初期かよ」


 当時のレートでは一円は大体数万円程度だったはずだ。


 貴金属がその辺に落ちていたり、持参した美味カレーがビンテージワイン並みの値段だったりするので一概には比較できないけど。


「つまりマレビトはこの世界じゃ大富豪なのか。そりゃ悪い奴に狙われるわけだ」

「そうだけどなんでオレを見たんだ」

「テメェの胸に聞いてみな」

「あはは、その節はごめんなさいでヤンス」


 小悪党のリアンとサスケはマレビトである俺から身ぐるみを剥がそうとしたが、簡単に数十億相当の金が手に入るのだから真っ先に狙って当然だろう。


 むしろ殺されなかっただけマシだと思ったほうがいいかもしれない。


「何があったのかよくわかんないけど、いろんなお菓子を食べたいなら皆で一緒に食べればいいと思うゾ!」

「リアン、キーアのこの透き通った目を見るんだ。お前の穢れ切った瞳で彼女の目を見ればきっと存在が維持出来なくなるだろう」

「お前はオレを何だと思ってるんだ、でも確かにこの全身から漂う純粋無垢なオーラは悪党にはキツイな」


 俺達の出会いの詳細を知らないキーアは、まるでスポンサーがつかない時に流すCMに出てくる清らかな子供の様に素敵な笑顔をする。


 こんな素敵な心を持った少女が現実に存在していたんだなあ、と俺は感心してしまった。


「ザキラちゃん、流石に店を買うのはやめようカ。ここの子供たちが買えないカラネ」

「うぐ、わかりましたよ」


 またザキラもリンドウさんに諭され大人しくなってしまう。


 輩にもいろいろいるけど、こういう優しいお母さんキャラには滅法弱いと根はいい子って感じがするし、なんか好感が持てるよな。


「さて、三百円、じゃなくて三百クリスタでお菓子を買うには様々な戦術がある。ここは一番の年長者の俺っちが作法を教えてあげよう」


 金額の上限が定まった所で希典先生はふふん、と鼻息を荒くして人生の先輩モードになる。


「なるほど、ぜひ教えて欲しいでヤンス!」

「戦術だあ? 駄菓子を買うのに作法もないだろ」


 彼の妙に頼もしい姿にサスケは尊敬の眼差しを向けるが、リアンは小馬鹿にした反応をしてしまった。


「まず一つはとにかく数を買うパターンだ。十クリスタの物を三十個揃えるって感じだけど、これは交換する相手がいた場合絶大な効果を発揮する」

「なるほど、そうすればいろんな駄菓子と交換出来るでヤンスね!」


 彼は初手から変わり種をぶつけてきた。昨今ではお菓子の交換文化が廃れつつあるけど、昔の子供はこうしていろいろ工夫出来たんだよな。


「二つ目は大物狙いで百クリスタ前後の物だけを買う方法だ。このやり方だと二つか三つしか買えないけど、圧倒的強者である事によってイニシアチブを握る事が出来る。あとデカい奴はなんかいい」

「そうでヤンス! デカい奴は正義でヤンス!」


 二つ目の戦術はおおよそ戦術とは呼べないものも含まれていたが、価値観が似ているサスケにはかなり響いた様だ。


「三つめは普通にバランスタイプだね。百クリスタくらいのお菓子、五十クリスタくらいのお菓子を二つ三つ買って、残りを少額の物で固めるって感じだ。普通で少しつまらないけどやっぱりこれがセオリーだろう」

「王道でヤンスがそれがずっと生き残っているって事は、それだけ鉄板って事でヤンスからね!」


 最後に希典先生はバランスタイプの戦術を教える。大体の人間はバランスを重視してお菓子を購入するし、普通はそんなもんだ。


「そして最後に言っておこう。一番いいのは戦術とか何も考えずに好きな様に買う事だねぇ。こうしていろいろ考えながら駄菓子を買うのも楽しみ方の一つだからさ」

「元も子もないな。だけどそりゃそうだよな」


 だが希典先生は最終的に誰もが辿り着く結論を出す。


 そもそも駄菓子を買うのに戦術なんてどうでもいいし、好きなものを好きに買えばいいだけだ。


「わかったでヤンス! 何がいいでヤンスかね~」

「この話をする意味あったのか? だけど勝負ならキーアも受けて立つゾ!」


 正直無駄なだけの時間を過ごした気もするが、その事を後悔する余裕のない人間はここには誰一人としていなかった。


 駄菓子を買う時くらいそんな事を気にせず楽しみながら買えばいいだろう。

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