3-79 昭和レトロなブゴッタマーケット
サファリパークを観光しつつ、これといった大きなトラブルもなく俺達は無事に目的地の市場に到着した。
ブゴッタマーケットは他の街同様アンジョの遺構を再利用したものだった。ブゴッタ、という名前からおそらく大分のあの場所なのだろうと推測も出来る。
入り口のゲートには一部が経年劣化で壊れていたものの、『昭和……』『新…通…商店街』という文字が確認出来たので、この商店街は大昔も多くの買い物客で賑わったのだろう。
「とうちゃーく! ブゴッタマーケットデス~!」
「とうちゃーく」
一番乗りでゲートをくぐりブゴッタの地に足を踏み入れたニイノは、マタベエと一緒にバンザイをして喜びを全身で表現する。
大規模なバザーがあるブゴッタマーケットはナジム村よりは発展しているが、やはり遠くに見える高層ビル群にはかなわない。規模的にはその中間だろうか。
ブゴッタマーケットでは様々な品物が取引され、食品に始まり呪いの儀式に使いそうな道具に、色鮮やかな民族衣装から中古家電など、売られている品には一体感がなく随分と混沌としている。
もちろんこの中の品物には訳アリのグレーなものも多数あるのだろう。だけど自己責任の原則を理解していれば大いに楽しめそうだ。
「ナジム族やキガン族以外にも結構色々いるんだな。ディーパ族とマミル族とか」
人が集まるブゴッタマーケットにはいろいろな種族が集まっており、その中でも特にディーパ族とマミル族が多かった。
これには何か理由があるのかと思っていたら、リンドウさんはああ、と理由を教えてくれる。
「ナジムは海を挟んで向こう側にあるサイマスと交流が盛んなのサ。あの辺りにはディーパ族やマミル族がたくさん住んでいるから自然とそうなるんだろうネ。イムシマ水軍もあの辺りに拠点があるヨ」
「サイマス……愛媛かな?」
「昔はそんな名前で呼ばれていたネェ。サイマスは海苔が特産品で、たくさんの御神輿が練り歩くお祭りが有名なのサ」
俺は断片的な情報からサイマスが大分と目と鼻の先にあり、かつ因島と関わりが深い愛媛県の都市だと推測したがそれは正解だった様だ。
現実世界でも大分と愛媛は交流が盛んで割と仲良しだけど、この世界でも似たような関係性らしい。
「ちなみにあの辺では昔ヤオハチっていう悪いタヌキの妖怪が暴れていて、それをキーアのご先祖様が封印したんだ。杖は家に家宝として飾ってるゾ!」
「ああ、あの杖か」
キーアはご先祖様の武勇伝を自慢げに話し、俺は家にお邪魔した時に飾られていた立派なSFチックな杖を思い出した。
世界観にそぐわなかったけどあれも一種のアーティファクトなのだろうか? おもっくそ警告されたし……怖いから考察するのは止めておくか。
「オレも目利きは出来る方だけど、確かにあの杖はそれなりの値段で売れそうだったな。あれを売りゃいいのに」
「おいリアン」
だがリアンは人としてどうかと思う提案をし、言うまでもなくキーアは怒ってしまった。
「何て事を言うんだ、駄目に決まってるゾ! あれはナジム族を救った凄い英雄とかキーアが嫁に行く時に渡されるものなんだゾ!」
「悪い悪い、冗談だよ」
面白半分で言ったつもりがまあまあガチギレされてしまい、リアンはほんのり大人しくなる。どうやら正体はさておきかなり大切なものの様だ。
「だそうだよ。智樹ちゃん? わかるよね」
「何もわからないから」
希典先生は何かを企んでいたがこちらも理解なんてしたくなかった。
もしも家宝の杖を入手しろと言う意味なら、キーアが今言った二つの手段のどちらかを選ばなければならないのだろう。
おそらくキーアと結婚しろと暗に唆したのだろうが、そちらは論外なので必然的に入手手段はナジム族の英雄になるしかない。
何をすれば英雄として認められるのか基準がわからないが、復興支援で人命救助をすれば英雄になったりするのだろうか。
もっとも別に人助けくらいなら何も問題ない。
戦争で戦果を挙げるとかそういう血なまぐさいものでなければ全然大丈夫なんだけど、そういう類の物じゃなければいいな。




