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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第三章 果てしなき大地、気高き欲望を持つ変革者達【第一部3】

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3-75 ナジム村から見る変化した日本の文化の考察

 観光がてら寄り道のサブクエストを求め、希典先生とナジム村を散策していると早速衝撃的な光景を目撃してしまった。


「うおう、自転車だ」

「そりゃナジム族も自転車くらい乗るだろうよ」


 正確には別に衝撃映像ではない、何てことない日常の風景だ。しかし屈強な部族の戦士っぽい青年がレトロな自転車を漕いでいるのはなかなかインパクトがあった。


「後ろにブレーキとライトが付いている昔のタイプかあ。俺っちも乗った事があるけど滅茶苦茶重いんだよぉ。こっちの世界ではまだ現役なんだよねぇ」


 ナジム族の男性はよくよく見ると牛乳瓶を配達して各家庭に届けていた。


 昔の家には牛乳箱が玄関の近くに備え付けられていたそうだけど、こっちではこの文化もまだ現役らしい。


「自転車もそうですけどどれもこれも物持ちがいいですよね。修理しながら使ってるとはいえ」

「この世界の人間は修理するたびにアップデートしているからねぇ。あの自転車も使われてるチェーンは君らの世界の物より数倍いい奴だよ」


 希典先生は一目見ただけでどのようなパーツが使われているのか見抜いてしまう。俺には違いが判らないが、専門家がそう言うのならそうなのだろう。


「物がないからこそ昔の物をアップデートして機能を追加しながら進化させていく。そうしてこのレトロパンクな文明が生まれたんだ。リンドウもそうだけど、この世界の技術力は部分的には現代世界を凌駕していると言えるだろうねぇ」

「凄いやら恐ろしいやら。たくましい事この上ないですね」


 もしもこちらの世界に現代技術が流入した場合、きっと人々は瞬く間に技術を吸収し、文明に大きな発展と混乱をもたらすだろう。それが良い事なのか悪い事なのかは判断が出来ないけれど。


「……………」


 村を適当に歩いていると、続けて俺はあるものを発見してしまいすぐに眼をそらした。


 だが希典先生はもちろん俺の不審な動きに気付いたようで、ニマニマとうざったい嫌な笑みを浮かべてしまう。


「どうして眼をそらすんだい? ここじゃあ普通の事なのに」

「わかってますけど」


 その光景とは早い話が授乳だ。昨日の宴でも普通に赤ん坊にお乳を飲ませていたし、ここでは公衆の面前で授乳をするのは特に恥だとはされていないのだろう。


「いつの間にか見かけなくなったけど、日本でも昔はその辺で赤ん坊にお乳を飲ませていたものさ。東京オリンピックの頃に西洋の文化に合わせるために意識改革をして、だんだん胸を露出させる事が恥だと認識される様になったんだよねぇ」

「一見くだらない事にも思えますが、意外といろんな考察が出来そうですね。キーアもそうですが、村に住んでいる人は全体的に露出が多めの服を着ていますし」

「この辺は暑いからねぇ。激しい運動をする事も多いし動きやすい軽装は理にかなっているだろう」


 アフリカや南米の部族は胸を露出させている人も普通にいるけど、それが性的で汚らわしく女性蔑視だという人はまずいない。


 厳密には少し前にアフリカに難民としてやって来た欧米の団体が様々なルールを変えようとして露出の多い服装を禁止しようとしたらしいけど、案の定現地の人がブチ切れて死人が出るレベルで滅茶苦茶揉めたそうだ。


 彼らからしたら正しいとされるポリコレでも、現地の人からすれば自分たちの文化を野蛮だと否定して破壊しようとしている様なものだし、反発を招くのも当たり前の事ではあるかもしれない。


 ただそれを理解はしているけど、やっぱりキーアが来ている様な水着みたいな服にはなかなか慣れない訳で。


 うーん、でも向こうの文化だしこっちが合わせなくちゃいけないよな。


 それに何度も見ていればそのうち慣れて性的だと感じなくなるだろう。元も子もないけどこういうのは結局慣れているかどうかだし。


「あ、トモキだ」

「おう、キーア」


 彼女の事を考えていると、村で一番立派な家から牛乳瓶を回収するためにキーアが現れ、とてとてと無邪気に近寄って来る。


 ナジム族と雰囲気が似ているダークエルフは創作物の中では往々にしてお色気担当だが、子供の様に純粋な心を持つ彼女にはその意図はないはずだ。うん、平常心平常心。


「ちょうど良かったゾ。親父が話があるからトモキを呼んで来いって。今から来れるか?」

「俺に?」


 キーアは俺にそう伝え、念のため希典さんに意見を伺おうとしたが彼は特にこれといったリアクションをしなかった。


 チートキャラな希典さんもいる事だし闇討ちみたいな展開にはならないだろう。それに彼女が俺達を罠にはめるとは思えないし。


「ああ、わかった。今から行くよ」


 よし、ちゃんと族長さんに挨拶もしておきたいし行ってみよう。


 ただお尋ね者の俺はグリード達と敵対する存在には違いないし、何かあったら対処出来る様念のため身構えておかないと。

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