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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第一章 終わりに向かう二つの世界【第一部1】

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1-37 スキル付与のチュートリアル

 刀と銃、二種類の武器の回収を終えるとまれっちの声が脳内に響く。


『欲張らずに全部回収してもよかったのに。まあいいや、それじゃあスキル付与のチュートリアルを始めるよぉ』

「わかった。どうすればいいんだ?」


 今までの説明はどれも必要不可欠なものだったが、これは最も重要な説明に違いない。人が殺す度胸がない俺にとっては同田貫もM9もこの状態では絶対に使えないからだ。


『さっきの簡易クラフトセットを使って武器を置いて魔石を置いてセットしたいスキルを選んで付与をする実行する。簡単でしょ? ちなみに好きなだけスキルをセット出来るようにサービスしておいたからねぇ。君がナカサンダイ地区で買った魔石の中に武器を使い物にならないものに変えるって呪いが付与された奴があるから、リアンと交渉してそれを貰いな』

「リアンに? わかった」

「あん? 呼んだ?」


 チラチラとこちらを伺っていたリアンは名前を呼ばれ少し驚いてしまった。問題はどう交渉するかだが、俺はちゃんと使えそうなカードを用意していた。


「リアン、ナカサンダイ地区で買った魔石の中で使いたいものがあるから渡してくれないか? 元々は俺のものだし」

「今はオレのものだけど」


 彼女は強靭なメンタルの持ち主であり盗人猛々しいにも程がある主張をした。その厚かましい態度に何も思わなかったと言えば嘘になるが、ここは大人になって交渉を試みる。


「見ての通り俺はここにあるものを全部回収出来る。薬程は残しておきたいが、無事に脱出した時に俺が必要なもの以外は全部譲るって事でどうだ。ちなみに俺はさっき回収した薬と刀と銃以外は必要ないぞ」

『酒もね』

「……酒もな」


 ただまれっちは食い気味に主張したので俺は交渉条件を変更した。別に俺には必要ないものだし正直どうでもよかったが、まれっちの機嫌を取って協力してもらうためには仕方ないだろう。


「その口約束を守る保証は?」

「そんなものはないから信じてくれとしか言えないな。だがもし守らなくてもお前の損は魔石だけだ。なんなら約束を破った時に殺して奪い取ればいい。どの道こんなにお宝があってもリュックに入る分しか回収出来ないだろ? つまりそっちからすればローリスクハイリターンで、俺からすれば交渉とも呼べない虫が良すぎる交渉なわけだ」

「ふーむ……まあいいか。ホレ」

「ども」


 欲深いリアンは割とすんなり交渉に応じリュックの中の魔石を取り出すと、そこでさらにまれっちが指示を出した。


『んじゃ鑑定スキルで魔石の効果を確認して。今お前さんに必要なのは話に出た武器をナマクラにする奴、相手を痺れさせる奴、弱体化の呪いをかける奴だね。後はそれを同田貫に付与しな』


 俺はメニュー画面で魔石を鑑定、指示通り効果を確認して必要な分だけ回収した。中には武器の威力を高めるものや即死系もあったが、そういうチート系主人公が好みそうなのは一切ガン無視して。


「紫電、タコスの呪い……?」


 なお魔石のスキルの説明欄にはそう書かれており、紫電はまだしもタコスの呪いとは何だろう。


 タコスの呪いの説明欄を詳しく見てみると『相手の強さをレベル1のタコスと同じ程度の強さに変化させる』と書かれていた。


 具体的な数値は書かれていないがなるほど確かにこれは恐ろしい呪いだ。つまり相手はしばらくの間世界で最弱の存在になるというわけか。


 あとスキル名を考えた人はプロレスが好きだったのだろうが異世界に来てまでいじるんじゃないよ、あいつは遅咲きなだけで言うてもタイトル獲ってるんだから。


 んでもって同田貫を置いて、簡易クラフトセットでほいほいほいっ。コマンドをポチポチしただけで効果音は特にないがスキルが付与されたのでこれで上手くいったはずだ。


「おおっ? 何してんだ?」

「俺もよく知らんがスキルを付与してる」

「スキル? ってなんだ? 魔石は使い捨ての奴だけど」


 その様子を見ていたリアンは付与もスキルもわからず、この世界ではアイテムボックス同様そんなものは概念ごと存在しないらしい。少なくとも普通の人間にとっては、だが。


『今リアンちゃんが言った通り魔石は本来使い捨てのアイテムだけど、こうすれば武器を無くさない限りずっと使えるよぉ。ただ打ち消す様な効果を付与したらもちろん使い物にならなくなるからそこは注意してね』

「流石の俺もそこまで馬鹿じゃない。つまりこれでこの同田貫は何も斬れないナマクラの硬いだけの鉄の棒になって、殴ったら相手が痺れて弱体化の追加効果が発動する武器になったってわけか?」

『そういう事。んじゃ次はM9にぶっこんでみよう。今度はお前さんが好きにやってみな。銃の弾数を無制限にするそんな都合のいいスキルはないけどどうすれば出来るのか……まあ大体わかるよね?』

「うぃ」


 そんな事を言われてもわからないが同じ要領でやればいいので何とかなるだろう。ここにある魔石で似た様なものを作るにはどれがいいのだろうか。


 弾も同じくバステ系で構わないだろう。使えそうなのは睡眠、魅了、変わり種に回復かな。睡眠が一番便利そうだけど、空を飛んでいる相手を空中で眠らせたらそのまま地面に落っこちて死んじゃうよなあ……ん?


(ほー、弾は切り替えられるのね)


 まずは自分で考えながらメニュー画面をいじっていると俺は便利な機能に気が付いた。


 ヘルプを確認するとやり方も記されているので後でちゃんと目を通しておくか。これならば状況に応じて使い分ける事が出来そうだ。


 弾はこれでいいとして弾数無制限はどうすればいいんだろう。魔力の弾を発射する魔石で弾丸の代替品を作るとして、一回きりじゃ燃費が悪すぎるよなあ。


『いつまで悩んでるの。じっくり考えてもいいけど敵は待ってくれないよ』

「そうだな、やり方を教えてくれ」


 結局素人の俺には解答を導き出せず、痺れを切らしたまれっちはやや小馬鹿にした口調で叱りつけた。


 ゲームとかなら実績が解除されないかもしれないが俺はそんなものにはこだわらない、時間は有限なのでさっさと答えを教えてもらおう。


『智樹ちゃんが今持っている奴をベースに、まずはこれに威力を低くする代わりに魔力の消耗が最小限に変わる奴をぶっこむ。敵からはアアン蚊でも刺したかァ? ってなるけど智樹ちゃんはむしろそっちの方がいいよね』

「そうだな、殺傷能力がないならそれに越した事は無い。ゴム弾も運が悪けりゃ死ぬし眼球に当たれば失明するし」


 非殺傷兵器の代表格のゴム弾は百パーセント安全というわけではなく、暴動の際はまあまあな頻度で死者が出ていたりする。そうでなくても眼球が弾けるだなんて想像するだけでも悍ましいし、武器としては役立たずでも俺からすればこの上なく望ましい得物だった。


『んでそこにじわじわ魔力が回復する指輪があるから、そいつを素材にスキルだけ合体させてね』

「って魔石じゃないのかよ。ずるくないか?」

『誰も合成素材に出来るのは魔石だけって言ってないよ』


 そしてまれっちが最後に提示した答えは宝物庫にある宝を素材にする事だった。俺はてっきり魔石しか合成には使えないと思っていたので、ひっかけ問題の様な答えに少し不満を抱いてしまった。


「まったく、大事な事はちゃんと説明して欲しかったな。まあいいや、やり方は魔石と同じでいいんだよな」

『うん、じゃちゃちゃっとね~』


 ただこれで正解はわかった。俺はパパっとスキルをM9に付与し、弾数無制限かつ睡眠、魅了、回復の三種類の弾が使える現代でもまず存在しない最強の非殺傷兵器を作り出したんだ。


「さてと、完成」

『あ、言い忘れてたけどこれはあくまでもじわじわ魔力が回復するだけで、回復スピードを上回るスピードで撃ったらしばらく撃てなくなるから、戦闘中は弾切れにならない様に注意してね』

「そうか、なら普段は単発のほうがいいか」


 俺はまれっちからM9の注意点を教えられ少しがっかりしてしまった。ただ時間経過で弾が補充される仕様だとしても無敵の装弾数である事は変わりないので、十分現代戦でも通用するチート武器であると言えるだろう。


 スキルを全て付与した所で俺は切り替え方を確認する。


 どうやらこちらも頭の中でイメージすれば銃の近くに画面が表示され、それを操作すれば弾の種類や単発か連射かを切り替えられる様だ。簡単操作なので二、三回やれば大体わかる。チュートリアルって程でもないな。


『そうそう、今作った武器のバステは強力だけど全ての敵に効くわけじゃないし効果もしばらくすれば切れる。王国兵や雑魚モンスターなら問題ないけど過信しない様にね』

「ま、そりゃそうだよな」

『今の君はいわば雑魚敵にはめっぽう強いけど強敵にはめっぽう弱い役立たずにも程があるキャラなんだ。運が良ければ強敵にも効果が出るけど数秒程度ですぐに元に戻るだろう。道中上位互換のいいものを見かけたらその都度新しいのを付与してアップデートするように』


 バステは便利ではあるが大体のゲームではボスキャラには効かないものだ。もちろん俺はそもそもそんな奴とは戦うつもりもないし、今までの人生同様に極力強敵との戦いは避けていこう。


『でも魅了かあ。それを付けるんだ。催淫銃なんて作ったら二次創作で悪用されるよ?』

「何言ってるんだ? これでここでの用事は終わりだよな」

『うん、後は根こそぎお宝を回収してその武器を使ってズラかるんだ。アシュラッドを脱出するにはお前さんが来る時に使ったSFチックな門を通ってあのゴツイ門番さんとバトルをしてチートを披露するか、そんな事はせずコソコソ隠し通路から脱出する二つのルートがあるけどどっちがいい?』

「もちろんコソコソ脱出だ」

『だろうねぇ』


 俺はまれっちからの問いかけを即決、敵前逃亡をする道を選んだ。というか現実で意味もなくカッコよく戦う理由なんて別に存在しないし。


「じー」

「それじゃあ宝を回収して脱出するぞ、ってどうしたリアン」


 しばらくほったらかしにしていたリアンは猫目になり俺を凝視していた。


 そりゃこんな堂々と独り言をしゃべっていたり、よくわからない道具でよくわからない事をしていればこうなるか。


「いやスルーするにはどうにも気になり過ぎるっつーか。ナーゴにもいろんなガジェットはあるけど見た事ない道具を使ってるし」

「悪いが俺にもイマイチわかっていないから説明しようがない。まずは増援が来る前にとっとと城を抜け出そう。気になるかもしれないが今はそっちの方が重要だろ?」

「それもそっか。お前が死んだらお宝は手に入らないから、せいぜい足手まといになるなよ?」


 その説明に納得したリアンは追及する事を止め俺と行動を共にする事にした。


 今ならば余裕で脱出出来るし、武器も薬も入手したのでこれ以上長居する理由もない。


 じゃ、とっととズラかるとしようかね。

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