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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第一章 終わりに向かう二つの世界【第一部1】

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1-36 相棒となる同田貫とM9

 この世界においてはただの貴金属に価値はないので、宝物庫の中にはわかりやすい金銀財宝といったものはなかったが、その代わりアンジョの遺物である陶磁器や刀や甲冑などの骨董品、漆器や仏像等、はたまたは梵鐘まで置かれていた。


 一応魔石もあるが、見覚えのある国宝や重要文化財クラスのお宝もあるし、このまま現代でも博物館や美術館に飾る事も出来そうだ。


「……………」


 ただこの辺はまあいいとして何故ここに飯○高史の等身大パネルがあるのだ。プレミアがついているプラモデルだのラノベだの、現代では頑張ればフリマアプリで買えるものも一緒に置かれているのがどうにも気になった。


 でもモリンさんはアンジョの遺産はそれだけでお宝になるって言ってたっけ。美味カレーが高級品になっているくらいだし、この世界の人にとってはこれもお宝なのだろう。


『あ、薬はそこの緑の宝箱の中ね』

「ああ、わかった」


 リアンはいそいそと金目の物を回収していたが、俺はそんなものには興味はなかったのですぐに指示通り緑の宝箱を開けて豪華な瓶に入った紫色の薬を発見した。


 並んだ宝箱の中には同じものが十本あり、瓶が割れない様に布で大事に保護されていた。多分だがこの芸術品の様な瓶だけでも結構なお値打ちものに違いない。


 緑色の宝箱は十個あるので、もし全ての宝箱に同じ数だけの薬瓶が入っているのならトータルで百本くらいあるだろう。


『それ一つあればしばらくは持つ。飲む時は薄めて飲みな。あと何でも治るってわけじゃないから怪我をしたら薬を飲む前に普通に止血をしてね』

「ちなみにここにある奴を全部持ち帰るのは?」

『この薬は君が飲んでた現代の薬と比べると効果は同じくらいだけど、この世界ではかなり貴重な材料が用いられている。いざという時に薬が使えず死ぬ人間が出ても構わないのならそうしてもいいよぉ。あと俺っちの所に来たら薬はいくらでも手に入るからそんなに多く回収しなくてもいいんじゃないかな』

「そうか」


 俺は少し迷ったが一つだけ拝借する事にした。まれっちの言葉を信じるのならばこの薬を必要とする人のためにあまり欲張ってはいけないだろう。


「誰と話してるんだ、ってうお!?」

「ん? ああ」


 ただリアンは俺がアイテムボックスに薬瓶を入れる瞬間を目の当たりにしてかなり驚いてしまう。それもそのはず、傍から見れば突然物が消えたのだから当たり前だ。


『言い忘れたけど俺っちの声はお前さんにしか聞こえない様にしてるから。あとこの世界でアイテムボックスだのマップだのメニュー画面だのを使えるのは管理者権限がある奴だけだよ。それよりもついでにそこの酒も全部回収してくれないかな?』

「みたいだな。あ、リアンは気にしないでくれ」

「おいおい……マレビト様はこんな事も出来るのか?」


 薄々感じていたがまれっちから与えられた能力は特別なスキルの様だ。最大の武器になるこのチートの秘密を話す必要もなかったので、俺は戸惑うリアンには何も伝えず高そうな日本酒の酒瓶をアイテムボックスに投入しまくった。


『次は武器だけどお前さんなら刀や銃が良いだろう。どれでも好きなものを選んで最低それぞれ一つは回収しておくといい』

「武器か……」


 俺はもう一つの重要事項である武器を入手するため再度宝物庫を見渡す。ただ国宝クラスの名刀や大昔の銃はあるが、どれも俺が求めるものではなかった。


 剣の心得がある俺ならばその気になればこの天下の名刀で簡単に相手を斬り殺す事が出来る。しかし俺はそういう事をしたくないからあの手この手で出征を先延ばしにしてきたわけで……樫の木刀とかはないのかな?


『何も気にせず好きなものを選べばいい。後で教えるスキル付与の機能でいろいろカスタマイズ出来るから。例えば見た目は伝説の剣でも超なまくらにするとかそんなへんてこな事もね。骨董品の銃も弾数無制限とか連射とかいくらでも出来るから見た目で選びな』

「そうか」


 だがそんな考えを見透かしていたまれっちは最良の答えを提示してくれた。そういう事ならば自由に選べばいいだろう。


 調子に乗って国宝クラスの名刀をチョイスしてもいいが、俺はそういうレベルではないので流石に恐れ多い。別に切れ味は気にしなくていいので一周回って木刀でもいいのだけど。


「ん」


 しばらく日本刀を物色していた俺は一本の刀が無性に気になり、吸い寄せられるようにその刀を手に取ってしまった。


 鞘を抜くと刀身はあまりにも無骨でお世辞にも美しいとは言えない。人を斬るという刀本来の機能性のみを追求し、いわゆる美術的価値が一切ない剛刀に分類される日本刀だ。


同田貫どうたぬき宗廣むねひろ……」


 その刀こそ同田貫宗廣。かつて幕末四大人斬りにして人斬り彦斎と呼ばれた河上かわかみ彦斎げんさいという攘夷派の志士が用いたとされる刀である。


 若干マイナーな彼の名前は知らなくても、某流浪人のモデルになった人物と言えばピンとくるかもしれない。


 実際にこれを使っていたかどうかも含め彼の生涯については謎が多いが、数えきれないほど人を斬ってきた河上彦斎はある時人を殺す事に恐怖を覚えそれ以来人斬りを止めたという。


 この同田貫が彼のものならば、斬り殺した数多の人々の生き血をすすっているのだろうか。


 成程、人が殺す度胸が全くない俺にはこの上なくピッタリな刀だ。俺は異世界での相棒に同田貫をチョイスした。


 もう一つの相棒である銃だがこちらは何にしよう。もちろん好きなものを選べばいいのだが骨董品は使いにくそうだしなあ。数は少ないが最近の銃も結構あるしそこからチョイスしようかな。


「って、9ミリ機関けん銃もあるのか」


 しばらく調べて俺はまあまあ見慣れた9ミリ機関けん銃、通称M9を発見した。


 俺たちの世界でも骨董品になりつつあるが、武器や弾薬が不足するゾンビとの終末戦争では今でも現役であり、もちろんこちらも訓練で扱った事はある。


 表記にやや違和感がある9ミリ機関けん銃はサブマシンガンと拳銃を無理やり合体させた様な銃であり、見た目通り短いせいで反動を抑えるのが大変でイマイチ使いにくいのが特徴だ。


 昔PKO派遣の際、必要最低限の武器しか持てない自衛隊はサブマシンガンが使えないので、サブマシンガンっぽい拳銃を作ればいいんじゃねという屁理屈の結果生まれた……というはガセネタで戦力強化のためそういう事情とは無関係に作られた、なんて言われたりもするがその辺は不明である。


 ただ一つだけ断言出来るのは上記の通り地味に使い勝手が悪く、それとは別に製造元の軍事メーカーとの兼ね合いがあったから作ったとか、性能以外の面でも色々批判されがちな不遇な銃であるという事だ。一応公式見解では無関係が正解だが、元々自衛隊自体が屁理屈の結果生まれた組織だからなあ。


 ちなみにゾンビハザードの昨今では、相手がゾンビなのでこれは紛争ではなく武器輸出三原則には該当しない、相手がゾンビなのでこれは戦争ではないし軍事行為でもないから憲法九条には抵触しない、戦闘地域ではないので民間人を派遣しても問題ない、非戦闘地域での復興支援なので徴兵ではない、と前の世界以上に政治家の皆さんは屁理屈を考えるのを頑張っている。


 ちなみに一応俺も銃を持って戦闘の訓練もしているけど、あくまでも非戦闘地域に復興支援で派遣され、あくまでもゾンビから身を護るために銃の使い方を覚えさせているだけなので、政治家の人いわく徴兵ではないし憲法九条にも抵触していないそうだ。もちろんそれは建前で実際は皆普通に兵士として人間と戦って死んでるけど。


 しかしその辺りの小難しい事情はどうでもいい。重要なのは俺が使い慣れている銃かどうかだ。俺はこちらも回収、アイテムボックスに収納した。

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