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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第三章 果てしなき大地、気高き欲望を持つ変革者達【第一部3】

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3-43 神話の里、ヒムカにて

「ん、くはぁ~」


 目的地の廃駅に到着し、ザキラはにわかアイマスクを外して精一杯背伸びをした。


 俺達の世界でもかつてはここに駅があったが利用者の低迷によって廃線になったらしい。廃線後は観光用の鉄道になったがやはり全国的な観光業の衰退のあおりを受け、その後の事は知らない。


 色褪せた看板には辛うじて『あまてらす』と書かれているのがわかる。しかし時間帯を考慮しても全く人気がないのでこちらの世界でも同じような立ち位置らしい。


 かつてこの世界では宗教間の争いがあってアマテラス派は衰退したらしいが、やはりそれも関係しているのだろうか。


 忘れられた神様は往々にして雑に扱われるが、似た様な事はこの世界でもあるんだな。


「雨が降ってきたでヤンス」

「天気も悪いですし、もう今日はここで一晩過ごした方がいいかもしれませんポ」


 サスケはどんよりと曇った空を見上げ不安そうな顔になり、旅慣れたモリンさんはそう提案した。


 近頃は水害が頻発しているそうだし、無理をすれば最悪命に関わるのでそちらの方がいいだろう。


 結局俺は一睡も出来なければネタも思い浮かばなかった。締め切りに追われる苦しみや生みの苦しみとは少し違うけど、こういう苦しみもあるのか。


「智樹ちゃん、アイデアは浮かんだ?」

「……いや」

「ああそう。んじゃあ俺っちは修理してくるよぉ」


 希典は俺の苦悩を知ってか知らずか、酒瓶片手に赤ら顔で駅へと向かう。仮に知っていたとしてもこいつは配慮なんてしてくれないだろう。


「そうカイ、それじゃあアタシも手伝いつつ技術を盗ませてもらおうカナ。構わないカイ?」

「うぃ、いいよぉ」


 技術屋のリンドウさんは率先して希典と行動を共にする。少しばかり不躾なお願いだったけど、彼はその辺りの事をあまり気にする事は無いらしい。


「ああそうそう、非戦闘員は全員駅に来てくれるかな。オトハはそこで待機して」

「え? いいですケド」

「ポン?」

『はい、わかりました』


 ただ希典は他のメンツにそう伝え、ニイノ達は不思議そうに駅に移動した。そして彼は駅舎内に入る際に振り向いて、


「智樹ちゃん。言いたい事は二つほどあるけど……わかってるね?」


 と、目を細めて感情が読めない表情でそう告げたんだ。


 笑っていない希典さんってこんなに不気味だったのか。忘れそうになるけどこのオッサンってTSしてちっぱい幼女になってるけど最凶最悪のテロリストなんだよな。


 荒木希典は冤罪で実は陰謀だって説もあるけど、彼の人となりを知っている俺からすれば正直どちらなのかわからない。


 陽気で能天気なオッサンなのか、はたまたすべて上辺だけで冷酷なテロリストなのか、俺は未だに荒木希典という男について推し量る事が出来なかった。


「アニキ、まれっちは何が言いたかったんでヤンスか?」

「一つは小説の事だろうな、約束したし」


 当然彼の事をあまり知らないサスケは思わせぶりな発言に不思議そうな顔をしてしまう。だが俺はそう伝えた後、同田貫に手をかけた。


『智樹さん、わかってますね?』

「……ああ。頃合いを見て指示を出すからしばらく静かにしてくれ」

『了解しました』


 オトハと俺は最小限のやり取りで全てを理解する。


 ロボットである彼女は与えられた命令を順守するはずだけど、もし不測の事態が起きても本体は別の場所にあり死ぬわけではないので最悪そうなっても構わないだろう。


「もう一つは……襲撃者だろうな。上からだ」

「え?」


 希典が何を思って戦線離脱したのかはわからないが、それは一時的で助けに来てくれると思いたい。


 何故ならば飛竜と共に黄昏の空を翔ける招かれざる者は、到底俺達が太刀打ち出来る相手ではなかったからだ。


「「――ッ!?」」


 滅びを告げる恐怖の大王の様に漆黒の騎士は暗雲が立ち込める天から舞い降りる。彼はその威圧感だけで弱き存在を消し去り、圧倒的な絶望感を与えた。


「また会ったな、マレビトよ」

「……ああ。出来れば会いたくなかったが」


 レムリア最強の騎士、黒騎士カムナ。アシュラッドで会った時とは違い、もう彼の瞳には純粋な殺気しか存在していなかった。


「一太刀で葬ってやってもよかったが、せめてもの礼儀で不意打ちはしないでおいたぞ。騎士としてその様な卑怯な真似はしたくないからな」


 それもそのはず、龍帝タイロンの忠臣として国家を守護する彼にとって、目の前にいる人間は崇め奉り保護をする神の使者などではなく、世界にとって脅威となる有害な存在でしかないのだから。

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