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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第三章 果てしなき大地、気高き欲望を持つ変革者達【第一部3】

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3-29 もふもふなボランティア

 復興ボランティアの詰め所にはもふもふ族にナジム族、キガン族の混合軍が集まっており、情報を共有してどこに限られたリソースを割り振るべきか協議を行っていた。


「そういえばザキラ、アシュラッドでも復興支援の話があったよな。確かクライ大臣が適当な理由を付けてタダ働きをさせるって言ってたけど」

「……のはずなんだが」


 こっそり様子を伺うと一仕事を終えたボランティアに対し、受付では財布代わりの石板に入金を行っていた。


 ボランティアも内容によっては有償だったりするが、一応最低限の報酬は支払われるのだろうか。


「こんなに……ありがとうございます!」

「これでも少ないくらいだ。これっぽっちしか渡せないがお互い頑張ろうな」


 ただキガン族の労働者はナジム族のスタッフに頭を下げていたく感謝していたし、それなりの金額らしい。


「あのー、ここでボランティアの受付をしてるって聞いてやって来たんですが」

「ん? わあ、たすかるよー。あ、これしょうめいしょね」


 リーダー格のもふもふ君は来る者は拒まずというスタンスだったらしく、事情を深く聞かずに素早く書類に判子をポンポンと押して仮の身分証を渡した。


「でもおわったらちゃんとかえしてね、そうしなかったらネズミ君にしぬまでおいかけられるから。あんなふうにね」

「ちー!」

「ギャース!?」

「は、はい」


 なお少し怖い事を言ったがそれは当然の対応とは言える。これがあれば被災地荒らしも防げるし、異世界なのになかなかしっかりしているなと感心してしまった。


 不届き者のナーゴ族の被災地荒らしはネズミ君の大群に追い掛け回されガジガジと噛まれている。猫がネズミにシバかれるなんてことわざの中だけだと思っていたけど、この世界ではネズミのほうがずっと強いらしい。


「リアン、わかってるな?」

「だから何でオレばっかり。言いたい事はわかるがそれだとサスケにも注意したほうがいいだろ」

「サスケはいいんだよ、お前に毒されただけでいい子だから」

「えへへー」


 俺は念のためリアンに注意し、ついでに愛らしいサスケの頭を撫で回して愛でる。むしろこんな愛くるしい奴になら全財産持っていかれてもいいね。


「じー」

「あ、いや冗談だから」


 ただもふもふ君はノリがわからなかったのか顔を近付けガン見していた。もふもふ君って可愛いんだけど近くで見るとなんかちょっとだけ怖い。


「おにーさん、どこかでみたような……アンジョさんってめずらしいね?」

「そ、そうですかね」

「じつはここだけのはなし、イナエカロでわるいことをしたアンジョさんがいるらしいんだけど、おにーさんはわるいことをしたアンジョさんじゃないよね?」

「ギクッ」


 予想していたがイナエカロの騒動は既に伝わっているらしい。ただリアンと同じ様にアンジョの犯罪はタブーとされているので限られた存在にしか知られていない様だ。


 が、そこにすかさず希典先生が助け舟を出してくれた。


「何を言ってるんだい、こいつはマミル族さ。見るからにタヌキだろう? 思春期特有の病をこじらせて自分はアンジョの転生者だと思い込んでいる痛い奴だよ」

「そ、そうそう! 俺はマミル族だから! 全体的にタヌキっぽいだろ?」

「そっかー、たしかによくみたらマミルぞくだね。アンジョさんにちかいみためのひともいるんだっけ。ぼくのともだちにもいるよー」


 俺は話を合わせ全力で少しばかり無理のある苦しい言い訳に乗っかる。だがもふもふ君はとても純粋な心の持ち主だったらしく、そんな無理のある主張を疑う事無く信じてくれた。


「ふう……な、なあザキラ、もふもふ君ってこういうピュアな奴しかいないのか?」

「基本的にもふもふ族は人畜無害で素直な奴しかいないな。その分怒らせたら滅茶苦茶怖いけど。下手すりゃ全種族の中で一番強いんじゃないか?」

「だから間違ってももふもふ君が経営する店で万引きしようだなんて思わないほうがいいでヤンス。たまにダンジョンとかでお店を開いてるでヤンスが、そんな事をしようものならフルボッコにされるでヤンス」

「ローグライク系のゲームの店主みたいだな」


 ザキラとサスケはこの世界におけるもふもふ君の立ち位置を教えてくれる。きっと俺達の物語がゲームになり、ローグライク系のミニゲームが実装されたら確実に彼らがその役割を担当するのだろう。


「んー? ほめてくれてるの?」

「ああ、褒めてる褒めてる」

「ありがとー」


 もふもふ君はよくわからなそうな顔をしていたが、ザキラはニコニコしながら適当に返事をしたので取りあえず感謝をした。純粋なのはいいけれどここまでピュアだと心配になってくるな。


「さっそくだけどおしごとをおねがいしていいかな? ミナモトちくにぶっしのちょぞうこがあるんだけど、これからひがいのかくにんもかねてちょうさたいをはけんするんだ。おもたいにもつとかをはこんでもらうけどだいじょうぶ?」

「もちろんですよ。なあまれっち、」

「はいはい、危なくなったら手伝うよ」


 もふもふ君の依頼は被害調査と支援物資の輸送という比較的簡単なものだった。熊本でミナモトというと、やはり元になったのはあの場所だろう。


「そうそう、もしよければまじゅうもたおしてほしいな。あんぜんもかくほできるし、しょくりょうにもなるし」


 また不確定要素として魔物もいるらしいが、希典先生も手伝ってくれるのでそこまで不安がる必要もないだろう。


「わかりました。じゃあ行くぞ」

「うぃー」


 クエストを受注した俺達はミナモトへと向かった。異世界でギルドから何かしらの依頼をこなす系の展開は鉄板だが、そういえば何気にちゃんとしたのは初めてかもしれない。


 復興ボランティアの詰め所をギルドって解釈すれば、の話だけど。報酬はともかく人助けなら苦労をする価値はあるだろう。

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