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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第三章 果てしなき大地、気高き欲望を持つ変革者達【第一部3】

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3-27 モッコスでの復興支援任務

 ――聖智樹の視点から――


 黄金列車はゆっくりと高度を下げて地上に降りていき、廃墟となった無人駅に停車した。


 駅は比較的整備されていたが、あくまでも比較的であり草は生え放題なのでもう機能していないのだろう。


「わあ、ついたでヤンス!」

「いちばんのり~」


 サスケとマタベエはタッタと駆け出し駅のホームに向かう。ホームにはキョトンとした様子の子供のゴーレムっぽいグリードがいたけど、未知との遭遇に大慌てでどこかに走り去ってしまった。


「なあまれっち、普通に空を飛べるのなら線路とか直さなくても良かったんじゃ……」

「それはそれ、これはこれ。それにこれはムゲンパレスのアトラクションじゃないからねぇ。あといつでもどこでも使えるわけじゃないからそのつもりでね」

「はいはい。で、ここはどこなんです?」


 どうやら細かいルールや希典先生なりのこだわりがあるようだが、こいつにいちいち文句を言っても意味はないだろう。


 一応看板を確認はしたが、熊……という漢字が辛うじて読める程度で何もわからなかった。ただ熊という文字と九州から連想される場所は一カ所しかない。


「ああ、やっぱモッコスだったのか」


 ザキラもまた少ないヒントからすぐにこの場所がどこなのか見抜いた。肥後もっこすだからモッコスとは実にわかりやすい名前である。


「ここに住んでいたアンジョの子孫は皆いなくなったが、昔はそれなりの規模の都市があったらしいぞ。ツクス地方じゃカザンマと対を為したそうだが、今はどっちも昔ほどじゃないな」

「その辺はこっちの世界と同じか。うちも戦前までは熊本が九州の盟主だったけど、こちらの世界でも同じ様な運命を辿ったんだな」


 薩長土肥の一角を担った熊本は現在でも大都市ではあるが、やはり今の一番手は福岡だろう。


 最近はご時世もありまた勢力図が変わりつつあるけど、大企業のスイジンテクノロジーのおかげでなんとか生き永らえているし、しばらくは変わらず王座に君臨し続けるはずだ。


「九州の二番手が熊本なのか鹿児島なのかはちょいちょい論争になって、大体熊本に軍配が上がるけど実際はトントンだな。ちなみに我らが長崎と大分はしょんぼりしながらその戦いを見守るのが常だ」


 なお長崎もそれなりに都会ではあるが、両者は政令指定都市もありやはり三番手、四番手感は否めない。なので基本的に勝てそうな大分に喧嘩を売るしかないのだ。


「宮崎は?」

「宮崎は一発屋ですね。民放も二つしか映りませんし長崎の敵じゃないです」

「確かに未だにあの知事のイメージがあるよねぇ。ちなみにどげんかせんといかんは鹿児島の方言に近いんだよぉ」


 なおリップサービスでディスったが、実の所宮崎は長崎と人口でも経済でもいい勝負をしている。昔はちょいちょい宮城と間違えられた地味な県だったくせに。


「佐賀は?」

「ハッ」

「なんか凄い馬鹿にされた気がしマス」


 俺は希典さんとしょうもない議論をしてたが、佐賀イナエカロ出身のニイノはムスッとしてしまう。だけどごめん、どう足掻いても佐賀だけはない。


「というか実の所長崎は観光に特化してなんかいい感じ、ってイメージがあるだけで意外と経済とかはそうでもなかったんだよなあ。なんなら佐賀にも負けるかもしれないな。物流センターがあったエリアは俺達の世界じゃ九州でもトップクラスの税収だったし」

「あー、確かにトリノス物流センターは凄いですポ。実際あそこでツクス地方の物流をすべて賄っていると過言でもないですポ」


 モリンさんはアシュラッドからの逃避行の最中に訪れた物流センターの賑わいを思い出した。物流の拠点であるあの街は九州の中でも別格っていうか、佐賀とはいえ迂闊に喧嘩出来ない。


 もっともあの場所は佐賀の中でも例外ではあるし、そのせいであの辺に住む人は自分たちの事を佐賀県民ではなく福岡県民と思っている節があるけど。


「だからみんな就職とかで福岡とかに行って戦争が始まる前から人口減少率もワーストクラスでしたし、下に見ていた宮崎に人口が抜かれた時は多くの長崎人が絶望したものです」


 結局のところいくら観光地があっても金がなければどうしようもない。世間ではしばしば外国人のオーバーツーリズムの論争がなされていたが、それによってどうにか維持出来ていた側面もあったのだ。


「って湿っぽい話は止めましょうか。まれっち、ここで何をすればいいんだ?」

「酒の調達、と言いたいところだけどお前さんには水害の復興支援作業をして欲しい。ガレキを片付けるもよし、被災地荒らしや魔物を倒して治安維持をするもよし、食糧支援をするもよし。近くにボランティアの拠点があるから話を聞きに行きな」

「わかった」


 希典は当初の予定通り災害ボランティアとして働く旨を伝えた。戦争ではなく人助けならば断る理由は何もない。マップを確認するとそれっぽいもふもふがいたし、彼に話しかけてみよう。


「行ってらっしゃい。私達は電車のメンテナンスをしながらここで待機してるよ」

「グッドラックですよ、智樹さん! バックアップはお任せください!」


 タカオとオトハのコンビは電車に残り後方支援に徹する事にした様だ。電車の事でまだする事があるみたいだし、何かあった時のために待機してくれた方がいいだろう。


「アタシも別行動をしようカネ。ニイノ、アマビコも」

「うん、わかったヨ」

「モリンさんはどうします?」

「うーん、私もこっちのほうがいいですポ。戦いは苦手ですし」

「ぼくはー?」


 またリンドウ一家はモリンさんと一緒に行動をする事に決め、マタベエは懸命に飛び跳ね存在をアピールした。取りあえず役に立ちたいという気持ちだけは受け取っておこう。


「んじゃー働くかー」

「リアン、もし被災地荒らしなんかしたら丸刈りだからな?」

「いやしねぇって!? 流石のオレでもそれくらいの分別はあるわい!」


 俺は念のためリアンに忠告をしておいた。ただ彼女がそんな事をしないのはわかっていたのでこれはあくまでもコミュニケーションの一環だ。


 それじゃあ早速復興支援の手伝いをするか。でも何気にこれって兵隊としての初任務になるのかな。


 変わった形にはなったけど、最初の任務が戦争じゃなくて本当に良かったよ。

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