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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第三章 果てしなき大地、気高き欲望を持つ変革者達【第一部3】

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3-26 異世界の支配者達の緊急会合と、黒騎士カムナに下された密命

 智樹達が黄金列車で地上に向かっていた頃、レムリアの支配者たちは重苦しい表情で会合を開いていた。


 前回同様写し絵を作り出す神代の石碑を用いて顔を合わせていたが、ここにアシュラッドの関係者はいない。何故ならば招く必要もないと龍帝タイロンが望んだからだ。


 モニター画面にはムゲンパレスから放たれたレーザーによって穿たれたクレーターが映し出される。


 まるで隕石でも落ちたかの様だが、これは神の叡智を持つアンジョの力によって作られたものだ。


 その奇跡が科学技術に由来するものだったとはいえ、何も知らない民は神の御業と思い込むに違いない。


『いやあ、派手にやったものだねぇ、うん。こりゃ誰でも拝んじゃうよね』


 ナジム自治区の領主、キンデルは最早恐怖よりも感動が勝ったらしい。


 彼はいつもの様に泰然自若とした態度で現実を受け入れ、他の参加者はその振る舞いに渋い顔をしてしまう。


『何を感心なさっているのですか? クレーターが出来たのはイナエカロ……あなたの領地の近くではないですか。ここにいる参加者の中では一番危険なんですよ?』


 ノーザンホーク領主のハニヤスは暗器が仕込まれた禍々しい可動式の玉座に座り、危機感のない彼を諫めた。


 一見独特な武器に見えるが、玉座の本来の役割は足や翼を持たないものでも移動出来る様にするためのアンジョの遺産であり、下半身を自由に動かせない彼女は自らの足代わりに用いていた。


『民衆はアンジョの救済だと、あるいはアンジョの天罰だと浮足立っています。特にここ最近は天災も続いていますし、騒乱を抑えるために早めに手を打たなければならないでしょう』


 クウガ忍軍頭領のタイザンは冷静に分析して為すべき事を提案した。


 災害時に人心が乱れるのは世の常である。場合によっては武力を用いて過激な行動を起こした集団を抑える必要もあるだろう。


『こまったなあ。みんなふあんだからしかたないよね。おなかいっぱいになればすこしはあんしんするかなあ』


 レムリア一の豪商、もふもふ族のマンプクはこんな時でも平和的な事を考えていた。


 平和を愛する彼は誰よりも心優しい君主として知られている。おそらく全員彼の様な人間ばかりならばきっと世界から争いは無くなるはずだ。


『相変わらずテメェは馬鹿だな。この力があればアンジョの支配を終わらせられるんじゃねぇか? 適当に金でも女でもあてがって抱き込めばいいだろうさ。アンジョは単純だからなァ』


 だがドラ息子と蔑まれる評判の悪いナーゴ領主、エドラドが笑みを浮かべながら発した言葉で場の空気は変わってしまう。


 そしてその意見に追随したのは意外にも名君キンデルだった。


『ふむ、悪くないね。向こうも積極的にこっちを攻撃してくる事は無いらしいし、金とか女はともかく交渉してみる価値はあるだろう』

『名君と名高いキンデル侯爵ともあろうお方が何を申されるか。その様な馬鹿げた事をしてしまえば星桜龍が目覚め夢の落方が訪れてしまうぞ!』


 その発言は強硬路線の龍帝タイロンにも看過出来ず叱責してしまう。しかし彼はふむ、と考えてから反論した。


『失敬、出過ぎた発言でしたね。ただ無用な戦いを避けるに越した事はないでしょう。管理者権限を持つマレビトや夢幻の仙人と正面からぶつかれば死人が出るはずです』

『確かに異世界の支配者の差し向けた兵隊を迎撃したっきり、彼らはこれといった害を為す行動はしていません。ちゃんと話し合えば不可侵条約くらいは結べるかもしれませんね。落としどころとしてはこのあたりでいかがでしょうか?』


 その意見にハニヤスも賛同する。相手が管理者権限という絶対的な力を持つ以上、下手に強硬的な手段を用いれば破滅をもたらす事をこの場にいる参加者は全員理解していたからだ。


『ならぬ!』


 だが議論がまとまりかけた所で龍帝タイロンの一喝が響き渡る。管理者権限を持つ人間が現れた――その事実が判明した時点で彼女の答えは決まっていた。


『かのものならばニライカナイに眠る龍ですらも目覚めさせることが出来よう。ニライカナイの龍だけではない、各地に眠る禁じられた力も。そうなれば世界は災厄で満たされ夢の落方が訪れようぞ』


 今までは伝承に過ぎなかったが、管理者権限を持つ人間の出現によって夢の落方が現実の物となる事を龍帝タイロンは危惧していた。


『ましてや威嚇とはいえ奴らは既に力を行使した。仮に交渉を行ったとしてそれを護り続ける保証がどこにある。アンジョは幾度となく約定を反故にし続けた。この世界の安寧を護る為に排除以外に取るべき手段はない』


 人類が衰退した今、レムリアを護る事を出来るのは彼女だけだ。そのためならばたとえ神殺しという大罪であろうと侵さなければならないのだ。


『……世界の平和を護るためとはいえ、これは紛れもなく神殺しであり決して大事には出来ぬ。誉も一切なく業は末代まで続くだろう。カムナよ、マレビトと夢幻の仙人を抹殺せよ。やってくれるな?』

『無論、閣下の仰せのままに。必ずや務めを果たしてまいります』


 龍帝タイロンの決意に黒騎士カムナもまた魂を捧げる事を誓った。


 自分があの時マレビトを召し捕っていればこのような事態は招く事は無かったと後悔していたカムナにとって、主君の申し出はまさしく望むところだった。


(……汚名はそそがせてもらいます、マレビト様)


 黒騎士カムナの兜の奥にある瞳に迷いはなかった。そこにはわずかばかりの情はあったがその一切を捨てて。


 たとえ神殺しの咎によりこの身が地獄に落ちようとも、主君の願いを叶えるためにも大命を成し遂げなければならないだろう。


『ハハッ! 上等だ、やってやろうじゃねぇか!』

『うんうん、それじゃあ準備しておこうか。九州ツクス地方は私達のナジム族のシマだからね。やっぱり私が一番張り切らないとね、うん』

『とりあえずトールきょうかいのひとといっしょにモッコスのふっこうしえんにむかうから、ぼくもおてつだいするねー』

『ああ、頼りにしているよ、マンプク伯』


 そして支配者たちは様々な想いを抱きながら、レムリアの安寧を護る為密かに行動を開始するのだった。

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