3-20 鉄道員ロボ、タカオからの依頼
チュートリアルも兼ねてリアンの義手を修理した所で俺達はメインクエストに戻り、オトハのバスで葉瀬帆駅までひとっ走りした。
駅周辺では既に労働力としてもふもふ君や仮面の怪物が集められており、ヘルメットを被った現場監督ヨストラとクマゴロウも参加している。皆準備は万端な様だ。
「うぃーす」
「あ、お疲れ様っすー」
駅にはやさぐれOLっぽい駅員さんの女性が待機しており、ムゲンパレスの最高責任者の希典さんに面倒くさそうに挨拶をした。
見た目の雰囲気はオトハと似ていたが、いつも元気はつらつな彼女と違いどうにもやる気を感じられない。オトハを堕落させたらこんな感じになるのだろうか
「駄目ですよ、タカオさん。挨拶をする時は元気よく! キャストの基本ですよ!」
「今はキャストじゃなくて従業員と修理にやって来た業者さんだし。あんたらが電車を直してくれるの?」
「あ、はい、そうですが」
オトハは同僚のタカオの態度を諫めるが、彼女は初対面の俺に対しても適当だった。ロボットも人間と同じくこういうタイプの奴もいるらしい。
「なんかザキラさんと同じ匂いを感じるでヤンス」
「そうかあ?」
俺がモヤッと思っていた事をサスケはズバリと言い当ててくれた。ザキラのほうはあまりしっくり来ていなかった様だけど。
「タカオちゃーん。あそびにきたよー」
「ふふ、あとでね」
「ほら、この辺とかも」
「むう」
マタベエはタカオにじゃれつき、こちらは雑にあしらう事無く優しい顔で対応した。うん、やっぱりキャラが被ってるな。
「軽く話は聞いたが資材を用意すればいいんだな?」
「ええ、工房でも簡易クラフトセットでもどんな手段を使ってもいいからたくさん作って。資材を作れば後はこっちで勝手にやるから。ひとまず葉瀬帆駅から崎陽駅まで線路を復旧させるための資材を用意して、それから地上に降りるための電車を修理して欲しいかな」
「葉瀬帆から崎陽かあ。いや無理じゃね?」
俺は脳内でシミュレートしてすぐに不可能と判断する。葉瀬帆駅から崎陽駅までは大体百キロ弱なので、どう考えても復旧には年単位の時間がかかる。
なお百キロ弱とは言ったが長崎は鉄道事業者泣かせの入り組んだ地形なので、橋梁やトンネルの作成も含めたら一年でも短すぎるくらいだろう。
「うん、すぐには無理ね。だから一旦資材だけ作って欲しいって言ってるじゃん。んで、ある程度資材を用意したら後は電車を作って地上に向かって、あんたが下界で頑張っている間に作業を進めておくから」
「ぼくたちにまかせてー。コツコツがんばるからー」
「ギィギィ」
「そうか、わかった」
もふもふ君と作業用ロボットは力こぶを作る仕草をしてやる気をアピールした。普通に考えて俺一人だけの力でこんな国家プロジェクトレベルの公共工事をやるわけないよな。
「それで資材はどうするんだ?」
「向こうに使い物にならなくなった線路とかがあるからそれをアイテムボックスに入れて回収して、んで工房に行って新品の素材に変えて」
「サイズ的に機械の中に入らないと思うけど」
「取り出さなくてもアイテムボックスから直接投入出来るよ。希典さんの顔をした箱は雰囲気を出すための飾りみたいなものだから。終わったらムゲンパレス専用の共用アイテムボックスに入れといて。変なものは入れないでよ?」
「へぇ、そういう機能があったのか」
タカオは俺も知らなかった工房の様々な機能について教えてくれた。かなり便利そうだし覚えておこう。原理はやっぱりよくわからないけど。
「資材が足りなくなったら他の廃材置き場とか解体作業現場を回って壊れた兵器やガレキを回収して分解して。それでも多分足りないだろうし、地上に降りた時もこまめに集めてくれると嬉しいかな」
「努力目標だけど頑張れば頑張るほどムゲンパレスの設備が使える様になって、俺っちの覚えも良くなるよぉ。充実した異世界ライフがしたいのなら労働してねぇ」
「ああ、わかった」
またムゲンパレスの復興を進めた場合ご褒美があると希典先生は暗に示した。それは管理者権限かもしれないし、生活を快適にするものかもしれないが、いずれにせよ断る理由も特にないので積極的に労働に勤しむとしよう。
やるべき事を理解し、ずっとうずうずとしていたオトハはこぶしを突き上げ号令をかけた。
「それじゃあ、ムゲンパレスの営業再開を目指してふぁいおーですよー!」
「「おー!(ちー!)(フガー!)(ギィ!)」」
「おー」
住人たちはムゲンパレスを復活させるために元気よく返事をし、空気を読んだタカオもワンテンポ遅れてから静かに手を挙げた。やっぱりなんだかんだで良い奴なんだな。




