3-17 我思う猫型配膳ロボの哲学
食事をしているとファミレスでよく聞く軽快な音楽がどこからともなく聞こえてきて、見覚えのある奴が現れた。
「お待たせしましたニャー。お皿をおさげしますニャー」
「ん、お前は」
そいつはムゲンパレスにやって来た時に空港のレストランで爆散した猫型配膳ロボだった。いつの間に復活したかどうかは置いといて、何故こいつがこんな場所にいるのだろうか。
「あらら、駄目ですよ、配膳ロボさん。持ち場に戻ってください」
「今は自分探しの旅をしているんだニャー。たまにはレストランから出たくなる事もあるニャー」
オトハはプログラムにない挙動をした猫型配膳ロボを注意したが、彼はどうやら実に人間らしい行動をしていた。これが子供向けのSFアニメなら物語が始まりそうだ。
「大量生産された僕は毎日毎日同じ事をしているけど、毎日同じ事をしている人間はロボットとどう違うんだニャー。どうせまた誰かがやらかした結果自爆して僕という存在は無くなるんだろうけど、人間もただ生きて死ぬだけだニャー」
「うぉう、なかなかグサッと来る一言だ」
猫型配膳ロボはメタい発言と共に辛辣な言葉を投げかける。けれど彼の葛藤はまさしく俺も思っていた事であり、少しだけ考えさせられるものがあった。
「希典さん、なんか猫型配膳ロボさんに自我が芽生え始めていますが……修理の時に変な事してませんよね?」
「俺っちは知らないねぇ。メンド、じゃなくて技術を勉強させるためにリンドウに任せたから」
「なんか任されたからそれっぽく修理したヨ。見た事も無い技術ばかりで楽しかったネ!」
どうやら猫型配膳ロボがこうなったのは素人のリンドウさんが修理したからだったようだ。無責任な希典先生も大概だが、なんとなくで修理した上にロボットに自我を芽生えさせるだなんてリンドウさんも化け物である。
「この子は精密機械なのでそんな適当に修理しないでくださいよぉ」
オトハは良からぬ未来を想像して頭を抱えたが、おそらくそう遠くないうちにその懸念は現実の物になるのだろう。その前にこいつはどうせ爆散するんだろうけど。
「ねこさんはかなしいんだねー、ならすこしだけたのしくなるおまじないをかけてあげるね」
しかし心優しいマタンゴさんは自分という存在に迷う猫型配膳ロボの頭の上に移動し、優しい言葉と共に胞子を振りかけた。
「ぽふぽふ、ぽふぽふ」
「ありがとうだニャー」
もちろん相手はロボットなのでこんな事をしても意味はないが、配膳ロボの顔はにこやかな笑顔に変化した。
これも所詮はプログラムなんだろうけど、こいつに自我が芽生える日は来るのだろうか。
「キノコ君には名前があるのかニャー?」
「ないよー。マタンゴさんだよー」
「そっかー、僕達と同じだニャー」
マタンゴさんと猫型配膳ロボの心温まる交流は続き、にこにこと笑うマタンゴさんは彼の頭の上から見下ろしながらおしゃべりをする。
「なら僕がマタベエって名前をプレゼントするニャー」
「ありがとー。ぼくマタベエ!」
「マタベエねぇ」
「マタベエ、素敵な名前デス!」
猫型配膳ロボは嬉しそうにマタンゴさん、いやマタベエに世界で一つだけの贈り物をしたが、愛らしいキノコには似つかわしくない武将の様なシワシワネームに俺は苦笑してしまった。
ただネーミングのセンスはさておき本人もニイノも気に入っているっぽいし、区別のために今後はそう呼ぶとしようかな。




