3-10 バスガイドロボ、オトハのプレイアブルキャラ昇格
タスクをこなすためにはまずこれから何をすべきかを確認しなければいけない。正直何から手を付ければいいのかわからなかったが、希典さんはちゃんとガイド役を用意してくれた。
「はいはーい、バスガイドロボ以下略のオトハです! 智樹さんのサポートをせよと仰せつかって助っ人に来ました! 今後は智樹さん専属の万能秘書ロボとしても働かせていただきますね!」
「お前も忙しいなあ。役職がまた増えて、オーバーワークってレベルじゃないぞ。潰れかけの中小企業じゃあるまいし……いやそうでもないけど」
俺は冗談でそんな表現をしてしまったが、実際ムゲンパレスは無期限休業中なのでその表現は適切ではないだろう。
彼女は人が訪れなくなってもこの場所を護り続けているわけだし、その辺は気持ちを汲んで配慮したほうがいいはずだ。
「現時点を持ってオトハはお前さんの専属秘書だ。禁則事項に触れる事は駄目だけど、それ以外ならお前さんの権限で命令を変更させる事も出来る。状況に応じて戦闘要員として運用しても構わない。どんな恥ずかしい命令でも聞くからいろいろ試してみぃ」
「ど、どんな恥ずかしい命令でも……」
希典さんはニマニマと笑いながら青少年には刺激が強いワードを言った。これはつまり、そういう命令でもイケるって事なのか。
「はい、どんな命令でも構いませんよ。誠心誠意尽くさせていただきます!」
オトハはとても真っすぐな瞳で命令を下されるのを今か今かと待っていた。ロボットの彼女からすれば命令は生きるための糧と同じであり、内容がどんなものであれ命令を聞きたくて仕方がないのだろう。
「そ、それじゃあ……全力で福〇雅治をしながら小〇よしおのモノマネを」
「うぇ~い! そんなの関係ねぇッ! そんなの関係ねぇッッ!!」
しかしチキンな俺は諸々の事情に配慮しボケる事を選択した。そりゃね、こんなピュアな子にそんな外道な事が出来るわけないって。
「ヘタレ」
「うるせー」
リアンはクスクスと笑い、土壇場でビビった俺を見下した。
「そんなのかんけーねー」
楽しい気配を察知したマタンゴさんズはオトハと一緒に全力で真似っこをしたので、しばらくこの可愛らしいキノコを眺めて癒されよう。
「ええと、これでよろしかったでしょうか?」
「うん、まるで本人みたいなクオリティだったよ。いや本人も本人じゃないけど。なんかごめん」
もじもじと恥ずかしそうに照れるオトハに、心が薄汚れた俺は罪悪感を覚えてしまった。
まさかこれだけのために元ネタのモノマネ芸人の音声データを再現したのだろうか、ロボットだけあって声帯模写は得意らしい。
「大体勝手はわかったから必要な時以外は命令を出さないでおくよ。バスガイドの仕事とかがあるだろうし、オトハもそっちのほうをやりたいだろ?」
彼女には悪いけど、俺はやはり感情豊かなオトハをロボットと認識する事が出来なかった。
きっとこれはそう振舞っているだけなんだろうし、道具として求められる事を望むオトハは嫌がりそうだったけど、
「あ……はいっ! ありがとうございます!」
彼女はやはりバスガイドの仕事も大事にしたかったらしく、俺の選択を喜んで受け入れた。やっぱりこの笑顔を見るとロボットには思えないんだよなあ。
ただ特殊な形ではあるけれど関係性も変わった事だし、今後は彼女ともっと仲良く出来るといいな。




