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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第三章 果てしなき大地、気高き欲望を持つ変革者達【第一部3】

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3-9 次の試練と、第一部最終目的地のニライカナイについて

 管理者権限のレベルが上がり、リアンの義手を直すというクエストを受注した所で、希典先生は思い出したようにこう言った。


「そうそう、後で移動手段を修理して地上に行ってもらうから、義手を直すついでに今のうちにいろいろ準備しておきな」

「あー、やっぱ行かないと駄目なんですか」


 ずっと目を背けていた現実を伝えられた俺は落胆してしまう。ムゲンパレスといった抑止力があるとはいえ万能ではないし、地上に行けば脅威となる存在と遭遇する可能性は十分にあるだろう。


「いいじゃねぇか、ずっと引きこもってたら身体が鈍っちまう。アタシはやっぱり渡り鳥だからいろんな所を飛びたいんだよ」


 ただ自由気ままなザキラにとって不自由は死と同義であったらしく、これでもかと熱い眼差しを向けてくる。


 本音を言えば安全な空中都市のムゲンパレスにずっと引きこもっていたかったけど、やっぱりそう上手くはいかないか。


「そう不安がる事は無い。俺っちも行くから安心しな。それに地上でしてもらうのは水害の復興支援とか酒を探して欲しいとかそういう依頼だ。もちろん小説のネタ探しも忘れずにね」

「ふーむ、そういう事なら」


 また希典先生の依頼は物騒なものではなく俺でも受け入れられるものだった。アシュラッドにいた時に災害がどうのこうのって言っていた気がするけど、ノウハウは学校でも習って割と得意だしその点でも問題ないだろう。


「私も子供たちの事があるのでお金を稼がないといけませんポ。ムゲンパレスはいい所ですが、お金を稼ぐには向いてないですポン」

「まあ、お金を使うという行為自体がほぼないですからね」


 行商人のモリンさんはしょんぼりしながら切実な悩みを訴える。俺と違って彼女には護るべき家族もいるわけだし、その辺りの事情も汲まなければならない。


「智樹ちゃんの持っているヨカバイには悠々自適に暮らせるお金があるけど、お金があったからといってそれを使えなければ意味はないし、ムゲンパレスを復旧するとなると全財産を使ったとしても足りないだろうねぇ」

「だなー。宝物庫のお宝もまだ捌けてないし」

「本当は盗んだものはちゃんと返してほしいのですが、私もあんまり偉そうに言える立場じゃないですポ……」


 困った様に笑うモリンさんに限った事ではないが、この世界の人は文化財でもあるアンジョの遺産を抜け道を使いつつ売りさばいているらしい。


 正直気にするほどの事でもないとは思うが、厚かましいリアンも少しは見習ってほしいものだ。


「んで、最終的にはニライカナイってとこに行ってゴミ処理をして欲しい。詳しい事は大体の用事を片付けた時に伝えるよぉ。そのクエストをクリアしたら第一部は取りあえず完結って感じかな」

「ニライカナイ……沖縄か。わざわざ沖縄まで行ってゴミ処理ねぇ」


 俺はニライカナイというワードからすぐに沖縄の事を指していると判断した。


 希典先生はゴミ処理と言っていたけど、場所も場所だしそのゴミはきっと燃えるゴミの日にぽいっ、と気軽に出せる様なものではないはずだ。


「ニ、ニライカナイって本気ですポ?」

「おいおい、あそこは禁足地だ。勝手に入ったらそれだけで下手すりゃ処刑されるぞ」

「ザキラは知っているのか、沖縄ニライカナイについて」

「あ、ああ……」


 しかしそのワードを出すとモリンさんとザキラは顔色を変えてしまう。


 今までも朽ちた戦車や機神兵を見かけてこの世界の成り立ちを大体理解していたので、禁足地の意味も説明される前から何となく分かってしまった。


「かつて世界を呪いの炎で滅ぼした龍が封印されているって言い伝えが一番有名だが、アンジョの遺産を求めてニライカナイに行った奴が祟りに見舞われたって話はよく聞くし、あそこはガチでヤバイ。正直近付きたくはないな」

「世界を呪いの炎で滅ぼした龍、か……」


 おそるおそる語ったザキラの言葉で俺はすぐに龍の正体に辿り着いた。


 今も使えるかどうかはわからないが、戦争の最前線だったあの場所にはきっと今も大量の兵器が眠っているはずだ。


 それが何かはわからないが、先人は神代に使われた何かの兵器を龍と形容したのかもしれない。


「そいでもって龍の退治は管理者権限を持つお前さんにしか出来ない。俺っちでも出来ない事は無いけど事情があるのさ。そこまで急がなくていいけど、戒めを破る奴が現れる前にあの場所に眠るゴミを処分して欲しい」

「わかったよ」


 先人たちは負の遺産が決して後世の人々の手に渡らない様、ニライカナイを禁足地にしたのだろう。


 ならば俺は人間の業の後始末をし、人知れず世界の平和を維持するため暗躍しなければならない。戦争は嫌だがこういう仕事ならむしろ大歓迎だ。


「おーし、それじゃあまずはオレの義手を直さないとな! 禁足地かあ、きっと金目のものが大量にあるんだろうな!」

「オイラもワクワクするでヤンス! がっぽがっぽ稼ぐでヤンスよ!」

「おいおい、祟られるぞ。アタシはどうなっても知らないからな」


 リアンとサスケはそんな事お構いなしにすっかり浮かれ気分だったが、敬虔な信者のザキラはかなり怯えていた。それだけ禁足地というワードは彼女たちにとって重い意味を持つのだろう。


「アンジョの遺産はあるだろうが、多分お前らが思っている様なものじゃないとは思うぞ。ニライカナイに行っても変なものには絶対に触らないようにな」


 当時の人が残した負の遺産の中には化学兵器や、場合によっては核にまつわるものもあるかもしれない。


 もしもうっかりそんなものに触れてしまえば取り返しのつかない事になるし、俺は事の重大さを理解せずにはしゃぐ二人に忠告をした。


「義手や旅の道具の材料は商店街で買ってもいいしその辺で調達してもいい。解体機能も使ってスクラップアンドビルドをすればすぐに目的が達成出来るだろう。困ったら俺っちがアドバイスしてあげるから好きにやるといいよぉ」

「ああ、任せろ」


 きっと俺がこれからする事は誰にも評価されず、歴史の闇の中に消えてしまうはずだ。けれど俺はそれでも良かった。


 この世界はもう彼らの物であり、滅びゆく人間の負の遺産を押し付けてはいけない。彼らのためにも人間は静かに消えなければいけないのだから。

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