3-3 小児科病棟のボス、ヒナちゃんこと久遠鳳雛との出会い
小児科病棟のボスというヒナは交流スペースにいて、同じ患者の少女と一緒にライトノベルを読んでいた。
彼女の周辺には漫画本やオモチャが積まれており、見た感じ病院の物ではなく私物っぽかったけど、同じ病棟の子供がオモチャをねだると彼女は二つ返事で貸していた。
退屈が大敵の子供にとって病院は刑務所同然だけど、閉鎖された空間でルールを破って娯楽を与える彼女は頼もしい牢名主の様にも見える。
「えーと」
「ありゃ、新入りの智樹君だっけ?」
「う、うん。君がヒナ?」
「そだよー」
緊張しながら挨拶するとヒナは能天気な笑顔で返事をした。彼女は全体的に肌が白く、髪の毛も雪うさぎの様に真っ白だった。
ここにいるのは基本的に病人だけど、彼女は何の病気なのだろう。もちろんそれについて安易に尋ねるのは駄目だから初対面で聞く事なんて出来ないけど。
「本当は久遠ホウスウって名前なんだけど、難しくて自分でも書けないからヒナなんだ」
「ホウスウ……三国志でそんなのいたっけ」
俺は知識を引っ張り出し鳳雛という漢字に変換した。確か臥龍と呼ばれた諸葛亮と対を為す夭折の天才軍師の異名だったはずだ。
「そうそれ。でも不細工で有名だったしすぐ死んだんだよねー。まったく縁起が悪いよ。どうせなら董白とかの方がよかったな」
「ハハ……」
彼女はケラケラ笑いながら病院では避けるべきワードを口にする。ただヒナはあまり気にしている様子はないし、俺も気を使い過ぎない様にしよう。
「それで智樹君も暇潰しの道具が欲しいの? 欲しければ好きに借りていいよ」
「いいの? これ君のだよね?」
「いいよー。元々寄贈するつもりで持ってきたし」
なるほど、こんなに太っ腹なら確かに小児病棟のボスと言われるわけだ。ルールとかは気になるが、問題視されていないので黙認されているのだろう。
「なんなら一緒に読む?」
「う、うん」
「(おどおど)」
どの様な意図かはわからなかったがヒナはそう促した。一緒に本を読んでいたそばかすの女の子はちょっぴり不安そうだったけど、ヒナとは今度も仲良くしておきたいしその申し出を受け入れるとしよう。




