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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第二章 暗き世界で光輝く太陽【第一部2】

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2-185 異世界への扉に光は導かれる

 不気味な墓地の前には飴を買う幽霊についての言い伝えを説明する看板があり、観光地という程ではないけれど地元民にとっては特別恐ろしいと認識している場所ではない様だ。


 雰囲気は完全に禁足地だったので入っていい場所なのか迷ってしまったけれど、状況が状況なので仕方がない。ここにロボット兵器がいるのならば人命に関わるし。


「チクタ君、どう?」

「熱源反応があるね。でもなんだろうこれ、該当しそうなデータがないよ」

「ひぃ、やっぱりオバケ!?」


 どうやらここに何かがあるのは間違いないらしい。デンジャー先輩はやっぱり怖がっていたけど、私は皆を護る為に先に進んだ。


「私が先に行ってくるよ」

「気を付けてね、ヒカリ」

(多分大丈夫だと思うけど、私も一応準備はしておくよ)

(うん)


 私にはノミコちゃんもいるし大丈夫だ。後詰はエマに任せれば問題ないし、私は同じ過ちを繰り返さない様に慎重に森の中を進んだ。



 七千波駅のすぐ近くにある墓地は墓地というよりも昔の史跡の様だった。


(さて、鬼が出るか蛇が出るか)


 特段怖いという感覚はないけれど、なんとなく安易に足を踏み入れてはいけない場所という事だけは理解してしまう。


(いや、沖縄だからハブかな? ハブは猛毒を持っているから地味に怖いし……ううん、食べられるからそっちの方がいいかな。でも鬼って食べられるのかな? 食べようと思えば食べられるか。可食部も多いしそっちのほうがいっか)

(怖いのはあんたの思考回路だよ)


 私の独特な思考回路はノミコちゃんにも伝わり彼女はドン引きしてしまう。でも鬼ってどんな味がするんだろう。


「ピィ」

「ヒヨコだ」


 そして茂みを抜けた先――そこには巨大なヒヨコがいた。


「ヒヨコだ」

「ヒヨコだね」

「うん、ヒヨコだよ」


 うん、何度見てもデカいヒヨコだ。熱源反応はこいつで間違いないだろうけど、とぼけた顔は愛らしくゾンビにしては凶悪さは一切感じられない。


 ……って最後に喋ったのは誰だろう。なんかイメージと違う賢者っぽい声だったけど。


「ってヒヨコが喋った!?」

「ヒヨコが喋って何か問題でも? 魔法少女になってよ、とかは言わないから安心して。まあ通りすがりのアフィラーマジムンと思ってくれればいいよ」


 私はしばらくしてあり得ない事態が起こった。しかも人間界のあるあるネタも知っているみたいだしこいつただものじゃないよ!


「ピヨタンかな。喋るのはちょっと珍しいけどこっち側に迷い込んだ……ってわけじゃなさそうだね」

「迷い込んだというよりも今この辺は重ね合わせの状態になっているからね。その表現が適切かどうかはわからないな」

「いやノミコちゃんも何普通に話してるの!?」

「どうしたのヒカリ……ってヒヨコ!?」


 大きな声に驚いたエマたちも喋るヒヨコを認識しただただ戸惑ってしまう。これが恐ろしいものだと認識する人は皆無だろうけど、やっぱり普通はこういう反応をしちゃうよね。


「それに僕の正体にはもう気付いているんじゃないかな。ヒカリ、君はこの世界でハカタピヨタンとオエドピヨタンのベースとなった存在に会っているはずだ」

「ハカタピヨ……え? おまんじゅう?」

「そういう解釈も出来るね」


 ピヨタンなるヒヨコは何かを話していたけど私は全く話についていけなかった。おまんじゅうの論争について話をしているというのならまだわかるけど。


「原初の泥は人の想いを形にする。理解出来ないものは理解出来るものに変化してこの世界に顕現する。多くの精霊や妖怪がそうして生まれた様にね。だから彼らが願えば僕は暴走したロボット兵器の姿にもなるし、砂漠を駆けるヒヨコの姿にもなるんだ」

「その話って」

「君にこの世界の真実を少しだけ教えようか。君にそれを教える事が僕の役割だから」


 私はつい最近似た様な話を聞いた事を思い出した。あの白衣のロリがそんな感じの事を言っていた気がするけど、一体何を伝えたかったんだろうか。



 ――五番目の子犬が暴風と共に現れ光龍の目を潰した。


 ――穢れた生き血を飲まされた悪狐は目が見えなくなった光龍をそそのかしてニライカナイを滅ぼした。


 ――黄金宮クガニナーの祠から飛び立った天龍リンドヴルムはザイオンを炎で焼き尽くした。


 ――炎はマタンゴの魔王マーラとなりザイオンを呪いの地に変えた。



「ヒカリ。君ならレムリアに伝わるこの言い伝えの意味がわかるはずだ」

「ええと……」


 私はピヨタンが何を言っているのか全く分からなかった。


 けれどこれは大切な事だから決して聞き逃してはならない――それだけはわかってしまったんだ。


「ニライカナイには世界を焼き尽くした龍が眠っている。天龍リンドヴルムの地獄の業火によって星桜龍を目覚めさせてはならない。君も役割を果たすんだ」

「ッ!?」

「きゃあ!?」

「何が……!?」


 終末世界の導き手としての役割を与えられたピヨタンは光を放ち、私達の存在は急速に不安定になっていく。


 駄目だ、このままじゃ帰れなくなる――ブラックホールの中で肉体が粉々になりながらも、私は強く自我を保ち続けた。


 こんな訳の分からない結末は嫌だ。私にはもっとやりたい事があるのに!


 けれど私達はそれ以上世界に抗う事が出来ず、この世界から完全に消失してしまった。

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