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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第二章 暗き世界で光輝く太陽【第一部2】

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2-181 舞い上がったヒカリの大失敗と後悔

 沖縄での市街地戦は収束に向かい、私は野戦病院となった港で一人うなだれていた。


 死者の大半は新希典派の防衛隊の人で、驚く事に市民やNARO隊員にはほとんど被害は出なかったらしい。


 それは悪党なりに矜持を護ってくれたハロウィンや、ミトラさんの完璧な指揮の賜物だろう。


 だけどそれでも全く死者が出なかったというわけではなく、スチームさんは大怪我をした人の救護を諦め別の人の手当てをした。


 潰れた血まみれの左腕には黒い色のタグがつけられているので、もう手の施しようがないと判断したのだろう。


「……ねえ、何で助けてくれなかったの?」

(悪いとは思ったけどね。痛い目を見たほうが学習しないヒカリのためだと思ってさ……ごめん)


 私の影の中に戻ったノミコちゃんはこうなる事がわかっていたのだろう。だけど謝罪する彼女に八つ当たりをするのは筋違いだ。


「ううん、いいよ。悪いのは全部……」


 悪いのは全部私だ。何者でもなかった私は夢の第一歩を叶え、ようやく役割を与えられた事で舞い上がってしまった。


 私が本当に大事だったのはアニメ制作だったはずなのに――私は戦っている最中だけとはいえ優先順位を変えてしまった。


 それはとてつもなく愚かで、恐ろしい考えだったというのに。


(気にしないで。私は何があってもヒカリの味方だから)


 彼女がヒロイズムに酔いしれる私に愛想を尽かしたのも無理はない。こうなったらどうにかして失った信頼を取り戻さないと。


 私は痛みをこらえ立ち上がる。本職程ではなくとも知識はあるから、私だって役に立てるはずだ。


「何をしているんですか?」

「っ」


 けれどミトラさんの冷たい視線で朦朧としていた私の頭は一気に覚醒した。彼女はつかつかと私に近付き――力任せに顔面をはたいた。


「質問を変えます。何故あなたはこんな事をしたのですか?」

「わ、私は……街の人を助けて……ミトラさんの役に立ちたいって……」


 私は声を震わせてミトラさんに独断専行した理由を伝えたけれど、それはどう取り繕っても言い訳にしかならないだろう。私がした事は間違いなく命令違反だったからだ。


「平凡な人間が活躍し、周囲から持ち上げられ隊長に任命されて――あなたは英雄にでもなったつもりですか? あなたの身勝手な行為は自分のみならず周囲の人間も危険に晒しました。他の隊長がフォローしていなければ死人が出ていたでしょう」

「す……すみません……すみません……!」


 むしろこんな事なら理不尽に怒って欲しかった。尊敬していたミトラさんを失望させ、何よりも取り返しのつかない事をして私は罪悪感で一杯になってしまう。


 私の着ている制服も役職も、結局他者から与えられたものだというのに、空っぽな私は誰かに認められる事で何者かになったつもりでいたんだ。


 これじゃあ東京婦女子見守り隊の人達や新希典派の人たちを批判する事なんてとても出来ない。散々偉そうに言ってきたのに、結局私もそちら側だったんだ。


「場合によっては臨機応変な対応が求められる事もありますが、今回の行動はただのヒーロー願望の暴走です。二度とそんなものに惑わされてはなりません。我々は人間であり全知全能の英雄ではありませんから。それをくれぐれも忘れない様に」


 ミトラさんは厳しい言葉で忠告したけれど、私はその中に優しさがあると思いたかった。


 彼女はまだ失敗した私を見捨てていないのだと――厚かましくもそう思いたかったんだ。


「……ですが救護活動の手伝いはさせて下さい。それくらいしないと私の気が済まないんです!」

「そうですね、それくらいなら構いませんよ。あなたへの処分は追って連絡しますので、ヤマグチ班長に指示を仰いでください」

「はいッ!」


 私は懸命に訴えてミトラさんから挽回のチャンスを貰い、スチームさんの下に向かった。


 これくらいの事で失態を無かった事に出来るはずはないだろうけど、何もしないわけにはいかなかったから。

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