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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第二章 暗き世界で光輝く太陽【第一部2】

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2-180 裁きの機神エンラオウ

 殺される。


 私は殺される。


 皆も殺される。


 それを理解した時私の身体は勝手に動き、転がっていた鉄パイプを構えて立ち上がってしまった。どうしてこんな事をしているのかわからないままに。


「フー、フー、フー……」

「何のつもりですか?」

「あああッ!」


 私は侮蔑の眼差しを向けるハロウィンを力任せに鉄パイプで殴りつけるけれど、この化け物がそんな攻撃を気に留めるはずもなく、彼は避けるという動作すらしなかった。


 その攻撃は巨木や岩に打ち込んでいる様で全く効果がない。だけど私はひたすら叫び続けて何度も何度も鉄パイプを振り下ろした。


「……こういう自棄になって獣と成り果てた奴が一番戦場で揉め事を起こすんですけどねぇ。本当に希典さんも何故こんな方を英雄として認めたのでしょうか」

「あぐッ!?」


 彼はその場から動かずに私の腕を掴んで放り投げる。私は受け身も取れずに全身を激しく打ち付け、痛みでもう立つ事も出来なくなってしまった。


「あまりこういう事はしたくありませんが、少しばかりお仕置きが必要ですね。おそらくあなたの身体は使い物にならなくなるでしょうが、まあ頑張ってリハビリしてください」

「あ、ああ……」


 顔を持ち上げると、そこには巨大な銃口を私に向ける怪人の姿があった。


 あるいはそれは愚かな人間に裁きを下す神の化身だったのかもしれないし、罪人を冥界へと導くジャック・オー・ランタンだったのかもしれない。


 今度こそ本当に駄目だ。


 殺される、殺される、殺される! 誰でもいいから助けてッ!


『全く……想定通りですね』

「ッ!?」


 そう強く願った時、地獄の業火が戦場に降り注ぎ敵を焼き尽くした。


 私と司馬隊長、そして倒れた一番隊の人達は担ぎ上げられ何が起こったのかわからないまま運ばれる。


『これより魂の審査を開始します』


 そして私は燃え盛る炎の中に魔王の姿を見る。


 けれどそれは決して禍々しいものではなく、地獄の裁判官、閻魔羅王えんまらおうの様に恐ろしくも慈悲深い魔王だったのだ。


 噂には聞いた事がある。NAROは機神兵も保有しているけど、選ばれた人間のみが操作出来る最新鋭の機体があると。


 だけどそれは最重要機密情報であり、私はほとんどその機体について知らなかった。


「ふむ、あれがエンラオウですか。希典さんも設計に関わっていたという……なるほどなるほど。ではそのお力を早速拝見させていただきましょう!」


 エンラオウ――私はハロウィンの口からミトラさんが乗っていた機神兵の名前を知る事になるけど、なるほど閻魔様をモチーフにしているだなんて彼女にはぴったり過ぎる名前の機体だろう。


『それがお望みとあらば。しかし無意味でしょうね』


 接近するミトラさんに炎上する大蛇ロボやロボット兵器が襲い掛かるけど、彼女はリーチの長い鎖剣で接近する前に切り刻みスクラップに変えていく。


 駆逐艦の砲撃やハロウィンの銃撃も素早いステップで回避し、ある程度距離を詰めた所でバリアの様なものを展開、攻撃を跳ね返し駆逐艦を破壊した。


「ちょっと壊さないでくださいよ、これ高いんですから」

『そんな事を気にする必要はありません。証拠品として押収しますから。鹵獲して再利用したい方は残念がるでしょうが、それは速やかに制圧して市民や部下の命を護る事より重要ではありませんので』

「ふーむ、そうですか。あなたも相変わらずですねぇ。そんな完璧超人じゃ結婚出来ませんよ」


 全てのゾンビ兵器やロボット兵器は機械仕掛けの魔王の前では有象無象の雑魚となり、駆逐艦に飛び乗ったハロウィンは甲板からエンラオウ目掛け銃を撃って時間を稼いだ。


『その発言は今のご時世ではいささか不適切ですね。あなたは存在自体が不適切ですが』

「否定はしませんよ。ここは大人しく撤退するので、代わりに諸々の規制を緩くしてくれませんか? 今の時代はアニメやゲームは厳しいのに、現実のロリコンに対しては激アマな時代ですからねぇ。復興支援地域とかロリコンにとってはパラダイスじゃないですか」

『耳が痛い限りですが、あちらは他国なので我が国の法律は適用されません。治外法権を適用すれば侵略していると認識され、正義に基づくものだとしても国際問題になるでしょう』


 彼らは戦闘の継続が不可能と判断したのか、激しく損傷した駆逐艦は徐々に動き出し戦場から離脱し始める。


「そんなのは欺瞞でしかありませんね。まあ目的は果たしました。私だけならまだしも今は子供達がいますからねぇ。今回は退きますが、次に会う時まであなたの部下をしっかりと躾けておいてくださいな」

『言われずともそうしますよ』


 ミトラさんは撤退するハロウィンたちをそれ以上追撃せず、市民の救助や残った敵の掃討を優先した様だ。


 ああ、助かったのか――次第に静かになっていく戦場の中心で、私はようやく自分が生きている事を実感し、次第に涙が溢れ出してしまった。

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