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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第二章 暗き世界で光輝く太陽【第一部2】

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2-179 大儀見ジャックスハルオとの対峙

 埠頭エリアでは既に一番隊と旧希典派による激戦が繰り広げられており、他の隊員が負傷して戦闘不能になる中で司馬隊長だけが孤軍奮闘し、変異ゾンビやロボット兵器の群れと戦っていた。


「はあッ!」

「す、凄い」

「ぶも」


 NARO最強の司馬桜龍は巨大なヘビ型のロボット兵器を駆け上がり首を切り落とす。それはまるで神話の英雄が大蛇を倒しているかのようで、その華々しい戦い方に魅入られてしまった。


 背後には武装勢力が使うにしては豪華な駆逐艦もあったし、あれが彼らの拠点なのだろう。


 甲板にはもちろん旧希典派の幹部であり、今回のテロの首謀者でもあるハロウィンもいた。


「ふむ、これがNARO最強の実力ですか。悪くはないですが希典さんや春樹はるきさん程ではないですね」

「あんたがMr.ハロウィンだったの……!」


 というかよく見なくてもあいつは博多ドームで出会った怪人だ。黒いコートとかオバケ仮面とか、見た目からまんまハロウィンっぽい見た目だったけど、あの時の変態がMr.ハロウィンだった様だ。


 端末室では機密や個人情報に配慮して流し見したからちゃんと見てなかったけど、こんな事ならもっとしっかり写真を見ておくべきだった。せめて博多ドームの時に顔を知っていれば良かったんだけど。


 甲板にはハロウィンだけではなく我那覇総督や旧希典派の兵士もいる。ただそれはいいとして、私はそこにいるはずがない人間を発見して驚愕してしまう。


「なんで謝花まで!?」

「……………」


 そこには何故か特待生の謝花がいた。


 謝花は先生たちを殺して脱出して待機していた船に逃げていったけど、あれは旧希典派の武装船で、まさかその時から彼女はあちら側の人間だったという事か。


 けれど驚いている余裕はなかった。彼女や旧希典派のテロリストはあろう事か泣き叫ぶ子供を強引に連れて船の中に入って行ったのだ。


「やだ、やだぁ! お母さんと一緒にいるの!」

「怖がらなくていいですよ、ほら、お菓子をあげますからね?」


 ハロウィンはぐずる子供にお菓子を配る。その見てくれも相まってハロウィンのイベントをしている最中にしか見えないけど、やっている事は戦時下において最も忌み嫌われる犯罪だ。


「うりゃー!」


 このままじゃ子供たちが! 私は倒れたナジム族ゾンビが持っていた短槍をハロウィン目掛けて投げつけるけど、彼は槍の先端を掴んで攻撃を防ぐ。


「こんな事をしたら子供が怪我をするじゃないですか。戦争ごっこをするのは勝手ですが、無力な子供を巻き込まない様に戦って下さい」

「っ」

「ぶもっ」

「「ぷいっ」」


 槍の切っ先を握り潰したハロウィンは穏やかに、そして激しく怒りをにじませ、怪人に威圧された私は思わず身がすくんでしまう。


「……皆は逃げて」

「ぶも~」


 吹雪は本能で恐ろしいものだと認識して後ずさりしてしまい、気を使った私が彼女から降りるとそそくさとしっぽを巻いて家族全員で逃げてしまった。


「そ、その、なんかごめんなさい」

「わかればいいですよ」


 私が謝罪するとハロウィンは再び紳士的な口調に戻る。でもこいつはまさか自分が怪我をするってわかっていながら子供を護ったのだろうか。


「謝花さん、我那覇さん、後はお願いします。よいしょっと」

「うん、気を付けて」

「ああ」


 ハロウィンは謝花と我那覇総督に子供達を任せて甲板から飛び降りて戦場に降りたつと、司馬隊長はすぐに刀で斬りかかった。


 しかし彼は息をつく暇もなく繰り出される猛攻を左手一本で軽くいなし、一撃も有効打を与える事が出来なかった。


「悪くはないんですけどねぇ、やはり下位互換は否めませんね」

「ハァッ!」


 挑発され焦った司馬隊長はエマも使っていた三段突きを繰り出すも、やはりこれも全て掌で受け止められてしまった。あの技を出せる司馬隊長も化け物だけどそれを片手で防げるハロウィンも化け物だ。


「私も加勢します!」

「ヒカリ!?」


 このままじゃ司馬隊長がピンチだ! 私は彼女を助けるためにハロウィンに立ち向かった。武器はその辺に転がっている壊れた道路のガレキで構わないだろう。


「あなたはお呼びではないですよ。飴をあげるので子供はおうちにお帰りなさい」

「私に帰るおうちはもう無いんだよ!」


 ハロウィンは背中に背負っていた十字架の様な銃を鈍器として使い応戦する。あんな大きなものを振り回すなんてこいつも私以上の怪力の持ち主らしい。


「帰るおうちはない、ですか。それはあの子達も同じなのですけどね」

「あの子達って……さっきの」

「彼らは少年兵として育成された子供達です。身寄りのない子供を優しい言葉で唆し、捕虜を的にして銃で人を殺す訓練を受けさせ、あるいは才能のない子供は自爆テロに用いるわけです」


 私はハロウィンの言葉を聞いてさっきの光景の意味と、彼の通り名の意味をようやく理解した。


 彼は子供を誘拐していたわけではなく、保護をして助けていただけだったんだ。


「子供達の意思に反して無理矢理連れ去ったのは可哀想だとは思ってはいますが、後学のためにもっといい方法があれば教えてくれませんか、正義に憑りつかれたヒーローさん? それとも私を殺して子供たちを奪い返し、大人の都合で戦争の道具にして殺すのですか?」

「それは……」


 ハロウィンは確かにテロリストだけれど、それは意味のない暴力で人々の幸せを奪うものとは大きく異なっていた。


 彼は子供たちを理不尽な運命から助けるために世界と戦う事を選んだのだ。時代が時代ならば彼らはテロリストではなく革命の英雄と称賛されていたかもしれない。


「これが戦争の現実ですよ。戦争は間違ってもエンタメではありません。誰も彼も勇ましい兵器や勇猛果敢な兵士やドラマチックな物語にしか興味がありません。彼らの栄光の下には虐げられた有象無象の屍が存在するというのに」

「ぐッ!」


 その言葉に惑わされた私は何も考えない様にして必死で殴りつける。それは私がとっくに知っていたはずなのに、忘れかけてしまった真実だった。


「英雄になれると甘い言葉を囁き、国のために負けるなと安全な場所から鼓舞し――まあ早い話そんな身勝手な連中がどうなろうとクソどうでもいいのですよ。戦争に勝とうが負けようが知った事ではないと考えている当事者もいる事をご理解ください」

「ああッ!?」


 ハロウィンはガレキの塊を怒りの鉄拳で砕くといくつもの欠片が飛び散り、私が武器として用いていた岩石は我が身に降りかかり戦う意志を奪った。


「やれやれ、希典さんが認めた英雄だと思ってどのようなものか期待していたのですが……とんだ期待外れですね。タンナファクルーをあげるので子供はおうちにお帰りなさい」


 仰向けになって倒れた私にハロウィンは沖縄の焼き菓子が入った袋を放り投げる。彼はそれ以降私に一切興味を示さず、司馬隊長に狙いを変更した。


 肉体的な痛みよりも精神的な痛みのほうが大きい。私はもう敵であると認識すらされなくなり、このテロリストに実力でも信念でも敗北してしまったんだ。


「あなたもですよ。その刀は誰のために振るっているのですか? あなたは与えられた役割を果たすだけなのですか?」

「黙りなさいッ!」


 ハロウィンは今度は司馬隊長も揺さぶる。完璧であるはずの彼女もまたかなり動揺している様に見え、剣筋は荒々しくブレてしまう。


「私はこう見えてアニメやゲームもそれなりに嗜みます。好みのジャンルがジャンルですので今は大体発禁処分を食らっていますが。ですが子供たちを護りたいというのなら、実際に戦争地域に行ってこういうのを真っ先に糾弾すべきだと思いますけどねぇ」

「そんな事わかってるッ!」

「はあ、わかっているのなら何故戦っているのですか? 今のポリコレは結局現実の悲劇を見えなくしているだけだというのは、貴女もわかっているはずでしょうに」


 声を荒げる司馬隊長の攻撃はもうハロウィンに届く事は無い。


 十字架の様な銃も相まって、それはまるで迷える子羊がこの世に生きる絶望を神に訴えている様だった。


「それは私がNAROの象徴でもある司馬桜龍だからですッ! 私は決して間違ってはいけない、私は決して敗北してはいけないッ! どれだけ犠牲を払っても、たとえこの身が果てようともッ! 後戻りなんて出来ないんですッ!」

「なるほど、それがあなたの決意ですか」


 そしてハロウィンは彼女に憐みの眼を向け、私と同じく司馬隊長もまた脅威として認識しなくなった。


「ああくだらない、実にくだらないですねぇ。大人の痛々しいごっこ遊びに子供が付き合う道理はないのですよッ!」

「があッ!?」


 ハロウィンは力任せに銃で司馬隊長の顔を殴りつけ、彼女は宙を飛び地面に叩きつけられ刀を落とした。


 相当なダメージを受けたのか、わずかに指を動かした彼女はそれ以上動く事は無かった。


「司馬隊長……!?」


 深手を負ってまともに動けないのはこっちも同じだったけれど、私はどうにか這って倒れた司馬隊長に近付く。


 けれど私は仮面の下にあった司馬隊長の素顔を目の当たりにし、ひどく驚愕してしまった。


「エマ……!?」


 そこには私と仲良くなった最強のモブ隊員、エマ・リーの顔があった。


 どこにでもいる素朴なモブ顔だけど、友達の顔を忘れるはずがない。


 幸いにしてエマは気を失っているだけで死んではいない様だ。けれどハロウィンは銃口を停泊していた防衛軍の駆逐艦に向けエネルギーを充填した。


 力の波動は暴風となり周囲のガレキを吹き飛ばす。ハロウィンはしっかりと銃を構え、微動だにせず討ち果たす敵のみを真っすぐと見定める。


「これでフィニッシュです。ジャックポットッ!」

「ああ!?」


 巨大な銃からは戦艦の主砲の様な弾丸が放たれ、近くにいた私は身体が爆ぜそうな程の衝撃で吹き飛ばされてしまう。


「そ、そんな……」


 次に目を開けた時、数百億の金をつぎ込まれて作られた沖縄防衛隊最強の兵器は大破し、鉄の塊となり炎上しながらゆっくりと海に沈んでいく。


 たった一撃で、こんな化け物染みた芸当が出来るだなんて。


 私は怪人Mr.ハロウィンの次元が違う強さに愕然としてしまった。

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