2-176 旧希典派の襲撃
拠点の星桜リュウグウリゾートに戻ると既に激しい戦闘が繰り広げられており、防衛隊の人は変異ゾンビやロボット兵器によって蹂躙されていた。
「うわあああ!? 来るな、来るな化け物ッ!」
「何なんだよコレ!? 何でゾンビがいるんだよッ!?」
変異ゾンビは沖縄の守り神であるシーサーを想起させる見た目で、新希典派の防衛隊の人達を躊躇なく噛み殺していった。どうやらシーサーは防衛隊の人達を沖縄にとって害を為す存在と認識したらしい。
ちゅらさを着た黒い肌のキジムナーの様なゾンビは亀甲の盾と短槍を構え、人間離れした動きで次々と近代兵器を用いる人間達を駆逐していく。
しかしどちらもよくよく見れば震えてうずくまる市民の人は襲っていなかった。彼らは私達や武器を持った兵士だけを狙い襲い掛かっていたのだ。
「まさかこちらの世界でナジム族と戦う事になろうとは……しかし紛い物とはいえ武人の誇りは失っていない様ですね。沖縄を護る精霊として戦うあなた方に敬意を払い、騎士として戦いましょう」
彼らとよく似た見た目のイスキエルダさんはそれを凌駕する身体能力で槍を振り回し、心臓を貫いて泥の塊に戻していく。人間っぽい見た目だけれどやはりこれも擬態しているだけらしい。
「ナジム族?」
「お気になさらず。ただこれは得体の知れない何かが擬態しただけなのであなたも全力を出していいんですよ、デンジャーさん」
「は、はい……ではブチ殺すぜヒャッハーッ! 雷警報発令だァ!」
彼女と一緒に戦っていたデンジャー先輩は戸惑いつつも、ベースの重低音を響かせ広範囲に雷撃を放った。攻撃範囲が広い上に威力も凄まじく、何気に一番敵兵力を削っているかもしれない。
「みんな頑張ってるなあ……よーし、私も!」
とにかく敵の数が多いから数を減らさないと。私はビーチに転がっていた壊れたガトリングを拾い鈍器として使う。
ガトリングは本来こういう使い方を想定していないしそもそも普通の人間はそんな事出来ないけど、頑丈な上に重量もあるから棍棒として使う分には申し分ない。
だけど私は戦いの最中、ふと物凄くどうでもいい事を考えてしまった。
「ねえヨンア、なんかそれっぽい見た目の敵だけどあれ出来たりする? サイトウさん的なアレ。ヨンアも一応サイトウって名前だよね」
琉球王国の兵士をイメージしたナジム族ゾンビの見た目は完全にアレで、あとは目隠しをして対戦相手に顎が尖がった人を用意すれば完璧だ。
「怒られるからちょっと無理かな!」
しかしヨンアは普通に回し蹴りで盾を破壊し、ライフルで倒れた敵に追撃しとどめを刺した。
私はなんだかちょっぴりガッカリしてしまったけど、普通に通常攻撃オンリーでシーサーをベシベシと叩いてやっつける。
見た目はライオンっぽいけど物理攻撃が普通に効くから問題ない。こんな事したら罰が当たりそうで申し訳ないけど。
『全隊員に告ぐ! 市民の保護を最優先に、持ち場を制圧後速やかに各隊と連携し防衛ラインを構築せよ! 三番隊と八番隊と十番隊はホテル周辺で交戦、それ以外の隊は居住区域で敵戦力の各個撃破にあたれ!』
無線からはミトラさんの指示が聞こえ、彼女は的確な指示を出して緊急事態に対処する。
まるでこうなる事がわかっていたかのようにスムーズで、最初は大変だったけれど敵は徐々に減り思いのほか余裕をもって戦える様になった。
「そうだ、我那覇総督がっ!」
「もう大体把握してる! ヒカリは気にせずに戦って!」
「わかった!」
私は我那覇総督の裏切りをヨンアに伝えようとしたけれど、どうやらその必要はなかったらしい。
ひょっとしてミトラさんもそれを見越してすぐに対応出来る様に部隊を配置したのだろうか。一手先、二手先を読んで戦略を立てられるなんて相変わらず恐ろしい人だ。
『一番隊埠頭エリア周辺で孤立、旧希典派と思われる武装勢力と交戦しています、至急救援を!』
『了解、では、』
「私が行きます!」
敵の数も減って余裕があるしここは私が行くべきだろう。それに何よりも活躍してミトラさんに恩返しがしたい。
「ヒカリ!? う、うん、わかった!」
「やれやれ……まあ任せてみるか」
そう考えて名乗りを上げるとシーサーを殴り飛ばしたチクタ君は戸惑いつつも私に追随し、鳳仙も嫌々ながら後を追った
『駄目です。サイトウ隊長、三番隊を率いて』
『すみません、仲村渠隊長は既に移動してしまいました!』
ミトラさんは私を制止しようとしていたみたいだけど、ヨンアは急いで私の暴走を報告し、彼女はやや落胆した様子で追加の指示を出した。
『……そうですか。ではこちらで何とかします。三番隊はその場で対処してください』
『了解しました!』
けれど猪突猛進で突き進む私を止める事は出来なかった。ミトラさんの役に立って、私達の故郷も護り抜くんだから!




