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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第二章 暗き世界で光輝く太陽【第一部2】

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2-174 我那覇ゴードン総督との出会い

 ホテル内部の構造を把握する事も兼ね、私は禍悪巣亭改め八番隊の皆と一緒に星桜リュウグウリゾートの中を見て回った。


 散らばったチラシに描かれていたホテルのロビーには高そうなものが置かれており、様々なお宝や出土品が置かれちょっとした美術館の様になっていた。


「ふむふむ。これって馬鹿には見えない服とか?」

「言ってあげないでよ」


 しかしそれも過去形、いくら目を凝らしても目玉の美術品は無かったので、ヨンアは苦笑しながらフォローする。


 解説によるとここには琉球王朝の文化財が飾られていたらしい。けれどほとんどは津波に流されるか略奪され、残っていたのは価値のないレプリカと運ぶのが難しい巨大な石板くらいだった。


 デンジャー先輩は石板をジッと見つめて私に質問した。


「ねえヒカリちゃん、これって何かな」

「YTRポーズをしてる信楽焼のタヌキじゃない?」

「流石に沖縄に信楽焼のタヌキの石板はないと思うよ」


 残念ながら私に沖縄の知識はほとんどない。もちろん考古学もだ。苗字こそ沖縄っぽいけど、正直文化を学ぶ機会がなかったからなあ。


「ここに描かれてるのはキノコかな。子供の落書きにしか見えないけどこれっていくらくらいするんだろう。キャベツだけは上手だけど!」

「昔の絵なんてそんなもんだから。あと多分キャベツじゃないと思うよ」


 私は古代の人が描いた謎の絵を論評し、私の画力に匹敵するくらい見事なキャベツに惚れ惚れしてしまう。


 だけどなんでこんなにキャベツの絵だけクオリティが高いのかな。それになんだろう、なーんかこの絵に見覚えがある様な。うーん。


 釈然としないものはあったけど謎の石板は一旦放置し、私はもう少しロビーを調べてみる。


『夢の彼方へ 星桜リュウグウリゾートグランドオープン』

『天国に一番近い地上の楽園』

『目玉となる世界最大の花火は多様性をイメージし、虹色に光り輝く花火が――』


 続いて発見した色褪せたポスターにはそう書かれており、大津波が起きた時はオープンイベントを行っていた様だ。


 アーティストのライブや花火大会など、お金をかけてなかなか面白そうな事をしていたらしい。だからこそ人が集まって被害も大きくなったんだけど……。


『特別ゲスト安仁屋清河』

『スイジンテクノロジー最高顧問 龍宮国際大学名誉学長 田中兵主部』

『同大学客員教授兼宇宙飛行士 鍋島竜胆』


 そしてさもついでかの様にゲストの名前には安仁屋首相の名前もあった。このオープンイベントは彼の実績をアピールする意味合いも込められていたのだろう。


 でも難しい名前だけどこれなんて読むんだっけ……そうそう、思い出した。確か田中たなか兵主部ひょうすべ鍋島なべしま竜胆りんどうだ。


 どちらも九州に縁がある偉人だから忘れるはずもない。特にスイジンテクノロジーはつい最近絡みがあったし。


『台風被害の影響で開催が危ぶまれるも――』


 地面に転がっている新聞記事には、イベントの少し前に起こった台風の事について書かれていた。


 誰が起こしたのかわからない新型兵器の攻撃のせいで霞むけど、そういえば大災厄が起こる前に大きな台風がやって来てたくさん人が死んだんだっけ。


『「これは生物兵器ではない」政府の見解に疑問の声』

『高熱と異常行動』

『医療崩壊』

『大統領の退陣を求める声が暴動に発展』

『既存の病原菌やウィルスなどでは説明がつかない症状』

『少なくともきわめて致死性が高い未知のウィルスが世界中に蔓延しているのは間違いないと――』

『パンデミックの拡散を抑えるために核攻撃はやむを得なかったと――』


 こちらはパンデミックに関する新聞記事だろうか。


 当時はなかなかゾンビが存在すると受け入れられなかったけれど、その頃の人達が未曽有の脅威に右往左往してパニックになっているのがよくわかる。


 でも結局ゾンビハザードの真実って何なんだろう。


 始まりの地であるベロヴォーディエには実はこれといったトラブルがなかったって聞いたけど、パンデミック自体は実際に起こって人がたくさん死んで、ゾンビが現れたわけだし……。


「おや、君が新しい隊長かい?」

「へ? ってハヒー!? ご挨拶が遅ッデーザーゼーン!」


 のんびり見学をしているとかりゆしウェアを着たマッチョなおじいさんに話しかけられ、私はその筋肉でその人物が何者かを認識、即座に軍隊式の声量で謝罪をした。


「ああ、気にしないでいい。どうせ正式な挨拶はこのあとだから。君達も初めまして」

「あ、ドモ。あなたが我那覇総督ですか?」


 ニアちゃんは全く我那覇総督を恐れておらず、彼もまた陽気に自己紹介をした。


「ああ。まあ私は総督と言っても掃いて捨てる程いるタレント議員の一人に過ぎないからそこまで気にしなくていい。他の議員や本土の人間がほとんど沖縄を見捨てて逃げてしまう中で、自分だけ残って防衛をしていたらいつの間にかそんな役職を与えられただけだ」


 けれどその言葉からはトゲが感じられ、県外の人間や政府に不信感があるのがうかがえる。


「ところで新人の君は接待というものをした事があるかい? 良ければのんびり釣りでもしないかな。近くにいい釣り場があるんだ」

「釣り? 今からですか? ミトラ長官と話し合いがあるのでは……」


 多忙なはずの我那覇総督は自由気ままな提案をし、私はどう対処すべきか困ってしまう。


 大事な話し合いをブッチして釣りをするなんてこの人は何を考えているのだろう。悪い人には見えないからそこは気にしなくても良さそうだけど。


「いいんじゃないかな。接待は相手の事を理解する意味合いもある。決して遊んでいるわけじゃないよ。ミトラさんには私から言っておくから」

「むう……ヨンアがそういうのなら」


 規律を徹底的に叩き込まれた私は納得がいかなかったけど、ヨンアに促されて仕方なく申し出を受け入れた。


「そうかそうか。じゃあ早速行こうか」

「頑張ってね、接待も社会人の仕事だからさ」

「はいはい」


 鳳仙は久遠瑞鳳だった頃にそういう面倒くさい経験をしたのだろう、笑いながら生贄に捧げられた私を見送った。


「頑張ってね。ヒカリが接待に失敗したら今後に関わるから!」

「ヨンアまで、うぇーん」

「はは、そんなの気にしなくていいよ。同じ沖縄人うちなーんちゅ同士仲良くしようじゃないか」


 確かに親睦を深められるかもしれないけど、こんな大物政治家と一緒に釣りとかしんどすぎるよぉ。


 しかもさっきの会話から察するにあんまり話し合いに来た私達に対して好意的じゃないし……。


 でも無茶ぶりだとしても任されたからにはやるしかないか。釣りで流血沙汰を避けられるものなら安いものだし。

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