2-173 星桜リュウグウリゾート跡地へ
地上の楽園と呼ばれていた沖縄は、かつては独自の文化や豊かな自然によって日本のみならず世界屈指の観光都市となっていた。
安仁屋首相によって米軍基地が完全撤退してからは積極的に海外からも企業を誘致し、一時期は日本の大都市圏に並ぶほど経済も発展していたらしい。
しかしその栄華は長くは続かなかった。大災厄による大津波は沖縄全域と九州南部に壊滅的な被害を与え、まるで夢であったかのように沖縄は急速に衰退してしまう。
「……………」
私はトラックに乗って変わり果てた街を眺めた。
かつては観光客でにぎわっていた沖縄の街には至る所に壊れたバリケードが設置され、彼らを出迎えるためのホテルの壁面には『We Die As One! We Are All Heroes!』というお決まりの言葉が赤いスプレーで書きなぐられていた。
守り神が宿るガジュマルの木は効率よく軍用車両を動かすために切り倒され、建物も至る所で破壊され略奪の痕跡が見受けられる。
海辺で銃を持って警備をする人々はまるで獲物を探し求めて徘徊する獣の様だ。またここでも海岸清掃は行われている様で、人々はぶよぶよした肉塊の中から黙々と金目のものを漁っていた。
銃を持った子供はこれから射撃の練習に行くのだろうか、育児ロボに連れられ楽し気に行進する。
きっとあの子達もそう遠くないうちに戦争に駆り出され、全員英雄的な死を与えられ異世界転生してしまうはずだ。
ここでは過激派とされる新希典派が幅を利かせているらしいけど、こんな状況では彼らが英雄としてもてはやされるのもわかる。
守ってくれる人が誰もいないこの場所で求められているのは、彼らの様に躊躇なく人を殺せる人間なのだ。
ほんの少しお母さんとお父さんが生まれ育った沖縄に来るのを楽しみにしていたけど、こんな事ならば見なければよかった。きっともう沖縄の人が愛した故郷はとっくに滅んでしまったのだろう。
私達は防衛隊の拠点にもなっているホテルへと向かった。
その黄金の宮殿の様なホテルは沖縄で最も大きく、かつては美しい海を一望出来る世界最高峰のホテルだったのだろう。
しかし大津波と戦争の影響で見る影もなく、砂浜は土嚢やガトリングが設置されいつでも反撃出来る様に工夫されていた。
「星桜リュウグウリゾート……」
泥で汚れていたけど、私は看板を発見しこの廃墟のホテルがかつてそう呼ばれていた事を知った。
きっと龍宮城が元ネタなんだろうけど、夢と現の狭間の世界に迷い込んだ浦島太郎もまた私の様に変わり果てた故郷に絶望したのだろう。
なんとなくその言葉に聞き覚えがある気がしたけれど、私はそれ以上特に気にせず皆と一緒に施設の中に向かう事にした。




