2-171 ダンディな芦田隊長の忠告
――仲村渠ヒカリの視点から――
記念すべき初作品となる『ケールのキャベツ検定(仮)』を完成させ、充足感に満ち溢れた私は悟りの境地でNARO本部の廊下を歩いていた。
「見て、ゴリラだった仲村渠さんが凛としておられるわ!」
「隊長としての自覚が芽生えたのかしら……権力はゴリラを人に変えるのね!」
女性のモブ隊員は雰囲気が一変し光のエフェクトを放ちながら優雅に歩く私に見とれてしまう。
折角だ、今の私はキャリア街道まっしぐらのエリートだから調子に乗ってみよう。
「なんだい、可愛い子猫ちゃん? ご褒美にバナナをどうぞ」
「ズキュゥゥン!」
「そんな、ゴリラに心を奪われてしまうなんて!」
見た目だけは歌劇の王子様っぽい私にメロメロになったモブ隊員はうっとりしながらバナナをもひもひと食べる。やっぱりNAROって面白い奴しかいないのかな。
「ったく、なに調子に乗ってるんだ」
「あ、ダンディ隊長」
「ダンディ隊長ってなんだ。芦田って呼べ」
ただその光景をベテランの芦田隊長に見られてしまい私は冷や汗をかいてしまう。
生意気な新人が嫌われるのはどこの世界でも同じだし、調子に乗るのも程々にしておかないと。
「あうあう、調子こいてすみません」
「……確かに理想の姿を見せるのも俺達の仕事の一つではある。ただ階級が高くなれば給料も増えるが同時に背負うものも増える。最前線の現場に行く機会もな。軍隊と同じで何かあったら真っ先に死ぬリスクも含めてのポジションだって事を忘れるなよ」
「は、はい」
芦田隊長は感情的に怒るのではなく私のためを思って注意してくれたので、落ち込んでしまったけれど私はほんのり幸せな気持ちにもなれた。
特別国際支援課にもこういう上官がいてくれれば、私ももうちょっと楽しい学校生活を送れたのだろうか。
「特に次の任務で派遣される場所は最前線だ。気を抜いたら死ぬぞ」
「ええと、詳しく聞いてないですけど次の現場はどこなんでしょうか」
「沖縄だ」
「沖縄……ですか」
彼はあまり事情を把握していない私に任務についての情報を教えてくれた。沖縄はいろんな意味で最前線だけどやっぱり派遣されるのか。
私にとって沖縄は馴染み深いようであまり絡みがない。出来ればもっと楽しい理由で行きたかったんだけど。




