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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第二章 暗き世界で光輝く太陽【第一部2】

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2-158 ダルマオンナとの再会

 恐怖のキノコゾンビに遭遇した私はひたすら廃墟の葉瀬帆の街を走り抜けた。


 街にはガブリンやゾスオウムなどなど凶悪な変異ゾンビがゴロゴロいたけれど、数が多すぎてとてもじゃないけど戦う気にはなれず、ひたすら逃げ続ける事しか出来なかった。


「うう、何でこんなに……夢なら覚めてよぉ、グスン……」


 スクラップになった車の影に隠れ、ほっぺを引っ張るけれど夢から覚める事は無い。お腹もすいてきたし早く帰りたいのに。


 カロリーが足りなくなったお腹は寂しげに泣き始める。よしよし、泣くな。


「フガ」

「っ!」


 そんな私を頭にカゴを乗せて歩いていたガブリンが認識してしまう。


 しばらく見つめ合う事数秒、相手はトコトコと接近してくる。こうなったら最悪戦うって手も……。


「フガ!」

「え?」


 けれどガブリンはビワが入ったカゴを私の目の前に置き、じっと私を見つめる。厳密には目はないけどこれは一体どういう意味なのだろう。


「……くれるの?」

「フガ」


 もしかしてこのガブリンはお腹が空いた私にビワを食べさせようとしているのだろうか。そう解釈した私はおそるおそるカゴの中に手を伸ばし、瑞々しいビワをかじった。


「美味しい……」

「フガフガ~」


 もぎたてで新鮮なビワはしっとりと優しい甘さで、それは全身の不安を消し飛ばすには十分過ぎた。


 ガブリンは安心した私を見てキャッキャとはしゃぎ、ぴょんぴょんと飛び跳ねて喜びの感情を全身で表現する。


 なんだろう、優しすぎて涙が出てくる。果たして目の前にいるのは本当にゾンビなのだろうか。


 見返りを求めない優しさを与えて相手の幸せを我が事の様に無邪気に喜ぶ姿は、私達が習ってきた凶悪なゾンビの姿とはかけ離れていたんだ。


「どじだー? おばえだれだー?」

「えっ」


 そして泣きながらビワを食べているとさらに驚くべき事が起こる。


 その全身つぎはぎだらけの少女は狂気がすっかり抜けて工事用のヘルメットを被っていたけれど、私が倒したはずのダルマオンナだった。


「あ、あなたは!? 何でここに!? ってひぃいい!?」

「ばあ」


 またセットであのキノコもついて来て、怖がる私を面白がってまたしても驚かした。まさかまた同じ様に泥が湧き出るんじゃ……!?


「ごいづごわぐないぞー。だがらごわがらなぐでいいぞー」

「ぼくわるいキノコじゃないよ。おどろかせてごめん、おわびにかんづめあげるね」

「え? う、うん」


 けれどキノコはえへへ、と気まずそうに笑いサバの缶詰を渡す。


 その愛くるしい笑顔からは私が出会ったあの魔王の様なキノコの様な悍ましさは微塵も感じられず、本人も悪い事をしたと思っていたのかちょっぴり落ち込んでいた。


「わだじヨストラ。オトハにだのばれでじごどじでるー。おながべっだがらごばんだべようがなっで。びどづだべる?」


 彼女の声は聞き取り辛かったけど、ヨストラはお昼ごはんのサラダパンを見せ、彼女もお腹が空いた私にそれを差し出しているという事はわかった。


「……ありがとう」


 戸惑いつつもパンを受け取った私は次第に温かい気持ちになり、自然と涙が流れてしまった。


「おばえなぐぼどおながべごべごだっだのが? じゃだべるがー」

「うんっ!」

「フガ!」


 ここがどこで彼女が何者なのかはわからない。


 けれど非業の死を遂げた彼女がこうして友達と一緒に楽しそうに暮らしているのならば、そんな事はどうでも良かったんだ。

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