2-155 アニメ制作開始と戦力外通告
「ついに、ついに、ついに……アニメ制作が始まったよー!」
「「ぷっひー!」」
私は禍悪巣亭に隣接して作られたスタジオを眺めた後、ピカピカの床にダイブしてうりぼうトリオと一緒にゴロゴロと転がり全身で幸せを噛みしめる。
「ぶっちゃけ準備自体はもうある程度していたけどね。アニメ制作は始める前の方が大変だし。今まで関われなかった分ヒカリには他の人の十倍は頑張ってもらうよ」
「うぐ、相変わらず労働基準法の概念がないね。でも上等だよ!」
パワハラ気質な鳳仙は開始早々えげつない事を言ったけどむしろ望むところだった。根性だけはあると自負しているし、どんなスパルタ指導にも耐えてみせるよ。
「ただこれだけ優秀なアニメーターがいるとヒカリの存在意義が無くなるなあ。特に鳳エンの黄金時代を支えたスタッフもいるわけだし」
「いえいえ、私達は下っ端も下っ端ですから」
スタジオは一気に賑やかになったけど、やはり加入したメンバーの中で最も優秀なのは他ならぬ私のお母さんとお父さんだろう。
日本屈指のアニメ制作会社、鳳凰堂エンタテインメントのアニメーターだった二人は間違いなく即戦力になってくれるはずだ。
「……ところで僕達はあなたの事をどう呼べばいいのでしょうか?」
「鳳仙で構わないよ。今の僕はアングラ風俗で働く男の娘メイドの荒木鳳仙だからね」
そんな二人だけど鳳仙に対してはどう接していいのかわからず困っている様だった。親しいのか怖がっているのかわからないけど、なんでこんな態度を取っているんだろう。
「うーん、でもこんなにプロの人がいるのに私がキャラデザ担当のままでいいのかなあ」
ただ贅沢な悩みと言うべきか、ド素人の私はプロばかりの現場に辟易としてしまう。ここにいる人は全員私よりも遥かに絵が上手く、私なんかがいていい場所ではなかったからだ。
「確かにそれもそうだね。ちなみにキャラデザの進捗状況は?」
「一応暇を見て描いたけど……」
「ふむ」
私は恐る恐るタブレット端末に描いたキャラデザを渡す。だけど彼がどんな評価をするのか私にはわかっていた。
「ゴミ。やっぱり才能ないね。降板」
「ごふぅッ!?」
「ううん、君は悪くないよ。悪いのは君みたいなゴミに期待した僕だから」
鳳仙は一切甘やかすことなく私の夢を断ち切った。それも日本刀でズバッと行く感じではなく、チェーンソーでズタズタに削る様に。
「ほ、鳳仙さん。うちの子は世間の厳しさに慣れていないので程々に……ね?」
「そうはいってもこのクオリティでは流石に無理でしょう」
「うーん、出来ない事は無いですけど……」
お母さんは頑張ってフォローをしたけれど、プロである以上絵の良し悪しはわかってしまう。彼女が否定しないのはただ単に親子だからだろう。
「いいよ、この絵が駄目なのは私が一番わかっているから」
「ヒカリ……」
むしろそんな優しさならいらない。私は全否定された事でかえってやる気が出てしまった。鳳仙がそれを狙ってやったのならばたいしたものだろう。
「三日、いや二日までなら待てる。それまでに納得出来るものを完成させるんだ」
「上等だよ」
私と鳳仙は互いにニヤリと笑い炎をメラメラと燃やす。
ここで諦めるつもりはない、この鬼畜眼鏡をぎゃふんと言わせるキャラデザを描いてやる!




