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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第二章 暗き世界で光輝く太陽【第一部2】

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2-154 イルマの救出作戦成功と、次なる目的

 私達はその後何事もなく錦界収容所のフェンスの外へと脱出、皆と合流してワゴンに揺られながら帰路に就いた。


 今日はいつもよりたくさん運動してしまった。全員生きて帰れたし結果は万々歳だ。悲しい事もあったけどゆっくり休むとしよう。


「なに? じろじろあたしの顔を見て」

「別に?」


 私はようやく助けたお姫様の顔をニヤニヤしながら眺めると、イルマは少し気味悪がってしまった。


「詳しく聞かないの、さっきの事」

「私が興味あるのはアニメーターの確保と、イルマが声優として協力してくれるかどうかだけだから」


 イルマは全てが始まったベロヴォーディエの真実を知っているのかもしれない。


 だけど私にとってそんな事は至極どうでもいい事であり、そんなつまらない事を考えるくらいならバナナを食べていた方が有意義だったからだ。


「まだ諦めてなかったの? 馬鹿みたい。でも考えておくよ」

「おお! ツンデレ?」

「違うって」


 私がいじるとイルマはまんざらでもなさそうな顔でそっぽを向いた。私はそんな彼女が愛おしくてたまらず、思わず抱き着いてもふもふしてしまう。


「離れろって」

「やだも~ん」


 ヨンアとイスキエルダさんはそんなくだらないじゃれ合いを幸せそうに眺めていた。しばらくはこの幸せな時間を楽しんで明日を生きるための活力にさせてもらおう。


「まったく、ヒカリは本当に人たらしだね。でも僕との約束を忘れてはいないよね」

「うげっ」


 しかしイチャコラを楽しんでいると鳳仙がニヤニヤと笑う。


 そういえばすっかり忘れてたけど、このゲス眼鏡に力を貸してもらう代わりに何でも言う事を聞くって約束をしてたんだっけ。


「……わかってる。ゴリラに二言はないよ。どうせ人の尊厳を踏みにじるゲスな頼みをするんでしょう? いいよ、あんたのバナナを逆立ちしながら鼻から食べてやる!」

「卑猥な意味だとしてもどういう上級者向けプレイなのかな? 流石の僕もそこまでの域には達してないよ。だから鼻の穴を十円玉で広げないでね」

「ありゃ、そうなの」


 私は少しでも痛くない様にあらかじめ鼻の穴を大きくしようとしていたけど、どうやら鳳仙は御所望ではないらしい。


「お願いしたい事は一つ。夢桜しばえもんというなろう作家を探してアニメ制作に勧誘する事だ。彼の脚本は最高の作品を作る上で必要不可欠だからね」

「夢桜しばえもん? って最近なろうに投稿した……なんで?」


 彼は意外な頼みをし、全く予想出来なかった答えを聞いた私は反応に困ってしまう。


 彗星の如く現れた夢桜しばえもんは自由な作品が検閲システムに削除されていない点を除けば無名も無名な作家で、彼が気に留める様な存在ではなかったからだ。


「今は知る必要はない。僕には彼が必要なんだよ」

「ふーん、『彼』かあ。知り合いなの?」


 私は鳳仙が年齢も性別も一切わからない夢桜しばえもんを彼と言った事から、知り合いではないかと勘繰ってしまった。


 確かにご時世によって離れ離れになった知り合いなら、アニメ制作とか関係なく会いたいのもわかる。


「元カレとか?」

「今は知る必要はない。出来るの、出来ないの?」


 私はちょっぴりからかうように尋ねたけど、鳳仙は至って真面目な様子だったので私もお笑い要素を封印する。


 理由はわからないけど、彼はしばえもんとの再会を心の底から願っていた事がわかってしまったからだ。


「出来るか出来ないかは約束出来ないけど、やれるだけの事はやってみるよ」

「そう、ありがとう」


 それはただの口約束だったけれど鳳仙にとっては十分だったらしい。その寂しげな顔を見て、私はおちょくってしまった事を恥じてしまった。


 鳳仙と夢桜しばえもんがどういう関係性なのかはわからないけど、こいつが必死だって事は嫌でもわかる。


 鳳仙とはそこまで仲良くはないけどなんだかんだで世話になっているし、たまには悪友に恩返しをしようかな。

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