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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第一章 終わりに向かう二つの世界【第一部1】

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1-27 パルミラ女王とのお茶会

 女王様に拉致されてやってきたのは城の敷地内にある庭園で、そこには白く丸いテーブルの周囲に豪華な椅子が置かれ、テーブルの上にはたくさんの鮮やかなフルーツが盛り付けられた大皿とティーポット一式があった。


 お茶請けはフルーツなのだろうか。ただ不毛の土地であるこの砂漠地帯では新鮮な果物のほうが高級品かも知れない。市場にもあるにはあったけど見栄えも悪くそんなに鮮度は良さそうじゃなかったし。


「ども」

「どうも。キタカント連合国、ローゼンブルグ領主のローズマリーよ。しばらく女王様のわがままに付き合って頂戴。こっちは成り行きで一緒になったデルクラウドの騎士カムナ。こんな見た目だけど何もしなければ害はないから置物と思ってなさい」

「粗相のない様にな。不審な行動をすればマレビトであろうと容赦はしないので貴殿もそのつもりでいて欲しい」

「は、はひぃ」

「んでなんかたまたま城に来ていてお前と同じ様に拉致られた教会のシスターのザキラだ。アタシも何でここにいるのかよくわからんし答えようがないから何も聞かないでくれ」


 またお茶会には先客としてゴスロリで眼帯を付けた中二っぽい少女のローズマリー、彼女の護衛であろうゴツイ装備の禍々しい黒騎士のカムナ、背中に鳥の羽が生えた輩っぽい三白眼のザキラがいて全員どこか対応は冷たかった。


「あ、けどザキラ……さんはやっぱりラスボスにも即死魔法を使ったりするんですか?」

「別に使わないが」

「洞窟をようやく抜けた所で全体即死魔法でトラウマを植え付けたり」

「別にしないが。あと氷魔法は一応使えるが回復魔法は使えない。得物は基本的にメイス系の武器だ。マレビトや転生者はアタシの名前を聞いたらやたら同じ様な質問をするがどういう意味なんだ?」

「何でもないっす」


 ザキラは名前から何となくポンコツAIの神官やみんなのトラウマの代表格である氷っぽい魔物を連想してしまったが、どうやらあれとは特に関係はないらしい。どっちかっていうと影が薄いホー○ブリザードのほうかな。


 ただ輩っぽい彼女ももちろん怖いが、大ボス感が半端ない寡黙な黒騎士カムナに関しては滅茶苦茶強そうだしあの人とは絶対に戦いたくない。


 バカでかい呪われてそうな大剣も背負ってるし、長崎が生んだ日本が誇る大御所声優の立○文彦っぽい声だし。でもきっとどこかでバトルする羽目になるんだろうな。


 カムナは捻じれた角が付いた兜を被っており素顔はわからず、辛うじて眼光は確認出来るが性別も年齢もわからない。


 だがこんな声をしているわけだし中身はオッサンで間違いないのだろう。もしうっかり素顔を見た時に正気度が無くなるような邪悪な見た目でなければいいのだけど。


 しかし知らない地名がポンポン出てきたがやっぱりなんか聞き覚えがあるのは気のせいだろうか。キタカント連合国って……魅力度ランキング底辺のご近所さん同士不毛な争いをこの世界でも続けているのかな。


「さあ、お好きなものを召し上がってくださいな。アシュラッドの特産品でもあるあまおうがおススメですよ!」

「あ、はい、じゃあ」


 素敵な笑顔の女王様に促され断るわけにもいかず、俺は言われるがままとりあえずイチゴを恐る恐る食べた。っていうかこれあまおうだよな? 現実世界同様美味しいけど。


「うーん、やっぱりフルーツは美味しいですね~!」


 だが女王様は高級なメロンを伝説のコメディアンがスイカを貪るように口元を汚しながらバクバクと食べた。カラスの勝手でしょ然り、昔は真似をする子供が親御さんに注意されたらしいけど品も何もあったものじゃないな。


 おそらく彼女は元ネタの方と同じくバカ殿の類なのだろう。


 こっちとしては緊張しなくて助かるけど、あの御大はちょこちょこ無礼に怒って家臣を斬り殺そうとする。もちろんコントなので実際に死ぬ事は無いが、これは現実なので無論そうなったら全力で逃げるしかない。


「それで女王様、俺なんぞに一体何の御用で?」

「もぐもぐ、トモキさんでしたね。事前に書類を確認しましたが、あなたはどこにでもいるごく普通の何の取り柄もない庶民中の庶民である高校生さんなんですよね」

「その通りですがあんた喧嘩売ってんのか」

「……………」

「ヒィ何でもないっす」


 お茶会が始まって早々パルミラ女王はボロカスに下に見てきたので思わずカチンとなってしまったが、カムナにギロリと睨まれ俺はすぐに自分の置かれた立場を理解してしまう。いかんいかん、ここは大人にならなければ。


「ですが私からすればむしろ好都合です。多くの権力者はマレビト様や転生者の方に技術や知識を求めますが、常に城の中で退屈と戦う私が何よりも求めているのは娯楽……つまり私はド庶民のあなたに庶民の遊びを教えて欲しいのです!」

「……ザキラ、こんな奴がトップでこの国は大丈夫なのか?」

「問題ない。この国には優秀な人材がそろっているからな。大抵の政はそいつらがやってる」

「優秀な人材、ねえ」


 俺が見かねてザキラに尋ねると彼女は遠回しにパルミラが傀儡である事を伝えた。おそらくは先ほど出会ったクライが実権を握っているんだろう。


「こんな奴とは失礼ですね。ですが私はとても寛大で心が広い女王様なので処刑するのは勘弁してあげます」

「寛大で心が広い女王様はそもそも処刑するなんて発想すら浮かばないと思うんスけど」

「今の不遜な態度もノーカンにしておきましょう。あなたが来る前にザキラさんからいろいろ話を聞いていましたが、なかなか勇気がいるスリリングなものばかりでして」

「はあ、ちなみにどんな」

「ボンタン狩りとか港に行ってバイクでチキンレースとか」

「ボンタン狩りって実際にやる人いたんスね。っていうかあんた本当にシスターか」


 また会話の最中ザキラとかいうシスターもまた別のベクトルでヤバい人である事が判明した。人は見かけで判断せず信用スコアで判断しなさいとは言うが、彼女はやはり見かけ通りの人だったらしい。


「そっちの世界じゃいないのか? 厳しく躾けられた反動でこんな風になる奴が」

「ああ、なるほど」


 しかし続けて彼女が面倒くさそうに言った言葉に俺はわずかに心が動いてしまった。どうやら彼女はとても人間味があり親しみが持てる人だった様だ。


 少なくとも俺たちの世界ではヤンキーという種族は絶滅した。


 もちろん不良はいるにはいるが、そういう類の奴は信用スコアがカスカスで家族も含めて住む場所や進学に制限がかかり必然的にコミュニティの外に追い出されるからだ。


 真面目に生きている人間にとってはとても住みやすい社会であり、虐めや性犯罪も軒並み無くなったけど、やっぱりそういう息苦しい世界は個人的に嫌なんだよなあ。


「とにかく遊びを教えれば満足するんですね。ただ電子機器を使う様なものは無理なのでアナログ系の物だけですよ」

「それで十分です! さあ、どんな遊びを教えて頂けるんですか?」

「つってもここに来る前に物を盗まれたので大した事は出来ないんですよね。棒消しゲームでいいですか?」

「はい、知らないものなら何でもいいですよ!」


 少し考え俺は紙と鉛筆さえあれば誰でも出来るゲームを教える事にした。


 こんなもので喜んでくれるかどうかはわからないがダメもとでやってみるか。

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