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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第一章 終わりに向かう二つの世界【第一部1】

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1-23 いかがわしいもふもふ屋

 図らずもリアンとデートまがいの事をする事になった俺だが、この世界の事を知るために一応市場のリサーチもせねばなるまい。


 闇市っぽいエリアらしく商品はガラクタ同然の品もあるが、宝石を用いたアクセサリーなど俺たちの世界ならばきわめて高価な品もある。


 ただ宝石に関しては先ほどのリアンの説明を聞く限りこちらの世界では大して価値がないので、立ち位置的には縁日で買える数百円程度のアクセサリーと大差ないらしい。


「しかしどれもこれも魔改造されまくってるな。3Rって奴か?」


 露店には骨董品となってしまった家電製品を修理したものが売られ、そのまま修理するのではなくほとんどのものに余計なパーツが追加されていた。


 魔改造マニアは興奮しそうだが、半分くらいは原形をとどめていないので一体どう使うのかわからないな。


「さんあーる、が何なのかはわかりませんが、ちゃんとした家電は高いので皆好き勝手に修理して欲しいものを作っているんですよ。ちなみに私の義手もオモチャとかガラクタを寄せ集めて作りました」

「ほへー、そうなのか」


 リアンはささやかな自慢なのか義手を見せつける。よくよく見ればパーツにはプラモデルの一部らしきものもあるので、これも広いくくりでは魔改造系のガジェットと言えるだろう。


 魔改造家電は苦肉の策によって誕生した産物だが、中には自動的に動く掃除機やテレビとビデオデッキを合体させた家電など興味深いものもあった。


 これらの家電はこっちの世界でも存在していたし、これを個人が作るなんて異世界の技術力は相当なものだな。


 ただ修理やリサイクルをするのではなく独自の技術を付け加えながら再利用し、生物の様にあらゆる物が進化していく。それは実のところ極めて理に適っており、3Rの究極の姿と言えるかもしれない。これもレトロパンクな世界観を構築する一因となったのだろうか。


 しかしやはり一番気になるのは猛烈な豚骨のニオイだ。ここが博多の屋台街をモチーフにしている場所ならば当然屋台グルメの筆頭格である豚骨ラーメンがそこに存在するわけで、慣れていない九州以外の人間ならば地獄のような空間だった。


 ただ俺はもちろん九州在住、豚骨ラーメンのニオイには慣れているので食欲がモリモリとわき上がってしまう。迎えがまだ来ない今のうちに食べておくべきだろうか。


 いやいや、グルメよりも優先すべき事があったな。浮かれ気分のせいで最も重要な事を失念していた俺はリアンに尋ねた。


「そういやリアン、ここって薬は売ってるか?」

「薬ですか? それはどちらの」

「どちらのって」

「病気を治す薬かヒャッハーな気分になるクスリかという事です。どちらもありますがもちろんヒャッハーなクスリはやめたほうがいいですよ。もっとも普通の薬でも、ここにあるのは大体効能が怪しいものや違法なルートで仕入れたものですけど」

「成程、つまりどっちにしろ買わないほうがいいって事か」

「そうですね、そのカードがあるなら表側でちゃんとしたものを買えますし」


 リアンは困り顔で市場の闇を教えてくれたので、俺はここで薬を調達する事を断念した。医者の処方もなくよくわからない薬を飲む事は最悪命に関わる事もあるので、余計なリスクは負わずやはり保護してもらった時に貰うのがベターだろうな。


「でも薬って……顔色が随分と悪そうですが、もしかしてお身体の具合が悪いんですか? ならこんな提案をしてすいません、やっぱり無理せずどこかで休みますか?」

「構わない、俺にとってはこれがデフォルトの見た目さ。不健康には違いないけどもう慣れたから」


 彼女はかつて愛理がそうしてくれた様に不健康な俺を気遣ってくれた。実の所砂漠越えで結構疲れてはいるが、彼女と過ごす時間のほうが大事なのでそんな嘘をついて。


「そうですか、でもやっぱりあちらで休憩をしたほうがいいですよ! 荷物とかは私が見ておくので!」

「あちら?」

「おにーさん、もふもふしていかなーい?」

「ちー」


 リアンの視線の先にはもふもふしたハムスターっぽい奴が看板を持って客引きをしており、これが人間ならいかがわしい店で確定だが見た感じ指圧師がマッサージをするだけの店だった。


「ここかー。ここがええのかー」

「もふぅぅう~、たまらんのぉ~。全身のコリが飛んでいく~!」


 もふもふはテクニシャンなのか仰向けの男性客は絶頂の表情を浮かべだらしない顔をしているが、もちろんこれは普通にマッサージをしているだけなので全年齢対象だ。


「うーん、別にいいかなあ」


 ただ俺の疲労は休むか薬を飲めば回復するので今は特にマッサージをする必要はないだろう。正直物凄く気持ちよさそうだし興味はあるけどさ。


「そ、そうですか。チッ」

「チッ?」

「いえちっさい子しかいないメスガキが見下しながらざぁ~こと罵ってくれるイメクラはどうかなと! なおもちろん全員成人していますよ!」

「いかないよ!? 異世界にも最低限のコンプラはあるからね!? 休憩は一旦後回しにして今のうちに色々買っておこうか! こっちの世界で使えそうなものがほとんどないし!」


 しかしそう断った際リアンは一瞬舌打ちした気がしたが、その後の発言のほうが遥かにぶっ飛んでいた。


 こんな店がその辺にあるなんて、異世界人の性癖はどうなっているのか不安になるなあ。

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