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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第二章 暗き世界で光輝く太陽【第一部2】

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2-83 ぬるぬるダンディ隊長の芦田さん

 おそらく実技試験での戦闘はこれが最初で最後になるだろう。事前の準備はしていたとはいえトータルで二十人くらいはいる。対してこちらは実質四人だけ……質でも量でも相手が上回っているし勝利は諦めたほうがいいかな。


「トレンタ、逃げるならそこの部屋からね」

「おう」

「あっ」

「?」


 私は適当に撤退するトレンタ達に伝えるとエマは何故か声を漏らしてしまった。彼は不思議そうにエマの方を向き、ドアノブに手をかける。


 ズゥン!


「ぎょえーっっ!?」

「ぬわーっっ!?」

「あ、ごめんトラップ仕掛けたの忘れてた!」

「あちゃー」


 そして彼が扉を開けた瞬間ブービートラップが発動、トレンタチームはスタングレネードの眩い光によって一掃されてしまい、こうなる事がわかっていたエマはあはは、と苦笑いしてしまった。


「なんだ、そういう事だったのか! 裏切った奴をちゃっかり倒すなんてお前も結構狡賢かったんだな!」

「やるねぇ~。ちょっと可哀想だけど自業自得だしこのまま放っておこうか。大きいから回収するのに手間取りそうだし、少しくらいは時間が稼げるかも」

「うーん、そういうつもりじゃなかったんだけどなあ」


 ユルグとミカンは勝手に勘違いして称賛したけど、これはただ単にポカをやらかしただけだ。


 ううむ、うっかり本来倒すべきじゃない入隊希望者を撃破しちゃったけど、評価が下がったりしないかなあ。


 うん、気にしないでおこう。私は伸びたトレンタ達を無視して銃を構え、他のメンバーに指示を出す。


「それじゃあ私とユルグが時間を稼ぐよ! ミカン、エマ、お願い!」

「「応ッ!」」


 私とユルグはその場にとどまり、残る二人はさらに上のフロアに移動する。子供だましの戦術だけど上手くいくかな?


 ダンディな隊長率いるNARO隊員は下のフロアだけでなく、音から察するに梯子を使って窓から侵入を試みている様だ。だけど今は一旦放置し、再び煙幕弾を下のフロアに投げ時間稼ぎをする。


「うりゃりゃ!」

「当て放題だな!」


 有利な位置で待ち構えていた私とユルグは一方的に銃撃をしたけど、NARO隊員はシールドで完全防備し、弾が切れた所で素早く反撃してくる。今の所モブ隊員ですら一人も撃破出来ず、私達は格の違いを見せつけられてしまう。


 そうこうしているうちに左右の窓が割られ敵の侵入を許してしまう。このままでは一気に囲まれて拘束されてしまうだろう。


「ユルグ!」

「ああ!」


 ただこれも予想済みだ。私達は敵が来る前に急いで上のフロアに移動、先に準備をしていたミカンとエマと合流した。


「行くよ! そーれ!」


 頃合いを見て二人はワックスをぶちまけ階段はとても滑りやすくなってしまう。古典的だけどこれで少しは時間が稼げるはずだ!


「クッ! オッサンがぬるぬるしているのを見て何が楽しいんだ!」

「オウ!?」

「ホウ!?」


 その効果は絶大、一昔前のバラエティー番組よろしくオジサン軍団はぬるぬるまみれになって、股間にダイブしくんずほぐれつでちょっぴりエロイ事になっていた。全くもう、おケツなんて出してBP〇に低俗だって審議になっちゃうよ。


「ったく! 何やってんだお前ら!」

「隊長、頼みます! って股間押し付けるな!」

「おほぅ! 俺の綺麗なケツを弄ぶな~!?」


 だけど隊長っぽいダンディなオジサンはぬるぬるまみれになりながらも部下の屍を踏み台に懸命に登った。なんだろう、やっぱりこういうのも一昔前のバラエティー番組で見た事あるよ。


「てい」

「がぁあ!?」


 んで、お約束通りゴール間近で小突いて落下して振出しに戻ると。だけどそんなギャグそのものな光景だったのに、顔を持ち上げたダンディさんはそれでもダンディだったんだ。


「うおりゃああ! 汚れ仕事担当の俺がッ! こんなふざけたトラップに負けてたまるかあッ!」

「わあ!? なんて執念深いダンディなの! 諦めなければ皆ダンディになるんだね!」


 彼は芸人魂と共にダンディを見せつけ執念で再びぬるぬる漢坂を上った。それは滑稽であるはずなのにとても美しく、ミカンはそのダンディさに魅入られてしまった。


「何言ってんだお前? 取りあえず撃つ、ぞっ!?」


 あまりダンディが理解出来なかったユルグは普通に迎撃しようとしたけど、ダンディ隊長は執念で道連れにしようと手を伸ばし、エマの足を掴んで引っ張ってしまう。


「きゃああ!?」

「エマ!」

「エマちゃん!」


 私は急いで手を伸ばしエマの手を掴んだ。まさしくその絶体絶命の光景は崖で栄養ドリンクを飲むCMが如く。さあ皆さんご一緒に!


「ファイトー! いっぱーつ!」

「ひゃああ!」


 私は怪力オンリーでエマとついでにダンディなオジサンを救出する。ただダンディなオジサンは一応敵なので、そのままぽーいと階段の下にリリースしたけれど。


「大丈夫、エマ!?」

「う、うん。ありがとう」

「……はは、こいつは化け物だな」


 ニヒルな笑みを浮かべたぬるぬるダンディ隊長はそう言い残し力尽きて戦闘不能になる。全くもう、こんな馬鹿っぽい展開なのに最後までダンディなんだから。


「怪我はないみたいだね。無事で良かったよ~」

「こんな倒し方をしていいのかねぇ」

「いいのいいの、ささ、今のうちに雑居ビルから脱出しよう! 急いで!」

「え、ええ! ごめんなさい、芦田あしださん」


 エマはダンディ隊長に何故かてへっ、と謝罪してから屋上へと向かう。ありゃ、ひょっとしてこのダンディな人とも知り合いだったのかな。


 だとしてもどうでもいっか。私もヨンアと知り合いだしそういう事もあるだろう。さーて、とっとと脱出して時間いっぱいまで逃げようか。

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