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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第二章 暗き世界で光輝く太陽【第一部2】

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2-81 試験開始、秒殺される入隊希望者

「5、4、3……」


 籠城の準備をした私は支給されたミリタリーウォッチを確認してカウントダウンをする。ギリギリまでバリケードやトラップの設置をしたけど、どうにか時間内に間に合ったよ。


「2、1……!」


 だけどこんなものは所詮気休め程度にしかならない。試験時間は一時間と言っていたけど、下手をすれば十分程度で全員確保されるだろう。相手は百戦錬磨のプロで、こちらは全員素人同然のひよっこばかりなのだから。


 一五〇〇。固唾を飲んで時計を見つめ、数字は三時を示しその時が訪れた。


『これより実技試験を開始します』


 街に設置された防災無線のスピーカーが試験の開始を告げる。猛者相手にどこまで行けるかどうかはわからないけど、やれるだけ粘ってみよう。


「いよいよ始まったね。じゃあしばらくのんびりしようか」

「随分と落ち着いてるんだね。私は結構怖いかなあ」

「ゴム弾とかラバーブレードは結構痛いけど、別に死ぬわけじゃないからね。クマよりはマシだと思うけど」


 初めての対人戦に元農家のミカンはおどおどとしてしまう。私からすればこれはただの試験だし、命のやり取りじゃないからそこまで怖くはない。


「そうかもだけど、クマは食べられるし」

「ふむ、ミカンとは仲良く出来そうだ。焼いたら食べられるものなら怖くないよね」

「んだよー。なぁなぁ、クマの手って食べた事あるだか?」

「うん! 物凄く調理が大変だけど美味しいよね!」


 私達はクマの美味しい食べ方で盛り上がり、気を緩ませたミカンはうっかり訛ってしまった。こんな女の子と会った事は無いからなんだか嬉しいよ。


「いやなんでそこで意気投合する。最近の女子はクマを食料として認識するのか? ん、女子……」

「?」

「いや、なんでもない」


 ユルグは一瞬気まずそうな顔をして誤魔化した。ああそっか、忘れそうになるけど今は堂島ジョセフ平八郎なんだっけ。私もうっかり設定を忘れないようにしないと。


「で、でも、NAROの試験は死人が出る事もあるから油断はしないほうがいいよ。大怪我するかもしれないし」

「そうだよね、ごめん」

「ここも戦場には違いないからね。出来る限りカバーするけど、エマも気を付けてね」


 エマは緊張感のない私達を注意し、その言葉で私は再び気を引き締めた。NAROの訓練や試験は軍隊同様過酷で死人が出る事も珍しくない。皆の運命も背負っている以上、こんなんじゃ駄目だ。


「だけど待っている間暇だからなー。おっ」


 開始して数分、どこからか銃声が聞こえたので他の入隊希望者とNAROが交戦した様だ。


 やがて銃声はすぐに聞こえなくなる。スピーカーから音声は流れなかったけど、きっと確保されたのだろう。


「やられたね」

「うん」


 静かになった所で私は皆と顔を見合わせ、エマは不安げな面持ちで頷いた。


 さすがはNARO、この試験を受ける資格のある人は身体能力テストでふるいにかけられた強者ばかりなのに、あっという間に秒殺してしまったらしい。


 やはり気を引き締めてかからないと。こりゃ時間切れで勝利出来るなんて考えないほうがいいだろう。素人の同然の私達はどれくらい生き残れるのだろうか。

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