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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第二章 暗き世界で光輝く太陽【第一部2】

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2-78 余り物で結成されたチーム

 ミーティングを行う様に言われた入隊希望者は戸惑いながらも話し合いを始める。この短い時間で誰を味方に引き入れるのか、誰と組むべきではないのか――それを判断する事も評価の基準なのだろう。


「んじゃーとっとと決めるか。お前とお前とお前だな。俺と組め、いいな」

「はい、トレンタさん!」

「え、俺?」

「っていうかお前って……」

「どうせテメェみたいなトロそうな奴と組む奴なんていないんだろ」


 入隊希望者の一人、トレンタという大柄なスキンヘッドのイタリア系の白人男性は一方的に仲間を決めた。


 マフィアの用心棒でもしていそうなくらい強面で、どちらかと言えば取り締まりをされる側の人間の様な気もする。私もあれくらい強引な方がいいのかな。


「他の連中も弾避けくらいになってくれよ。女がいても迷惑にしかならないからな。他に俺と組みたい奴がいれば来ていいぞ」

「はあ?」


 槍状の武器を手に取ったトレンタという入隊希望者はブルンブルンと豪快に振り回し、ガタイもいいので腕っぷしはそれなりなのだろう。横柄な態度で性格にはちょっと難がありそうだけど、彼と組めば制限時間まで生き残れるかな?


「なんなのよ、あいつ」

「放っておきなさい。あんな女の敵は無視して私と一緒に組みましょう」


 ただあからさまに女性の入隊希望者に対し見下したような態度を取ったので協力はしてくれないだろう。むしろ自分だけ生き残るために他の人の不利益になる行動をとる可能性はある。


 時代錯誤な共通の敵を前に女性陣は一致団結したけど、この発言がチーム分けに影響を与えたのは言うまでもない。


 百戦錬磨の隊員たちに対し一人で戦うのは無謀なので、出来るだけ長く生き残るためには仲間を選ぶ事が前提なのだろう。ただ出会ったばかりで信用出来るかどうかわからない人の中から短い時間で運命を託す相手を決めろなんて最初から無理がある話だ。


(ノミコちゃんは)

(私は協力出来ないからね)

(うん)


 私はこっそりノミコちゃんとひそひそ話をして彼女の不参加を確認した。彼女は信頼出来るしとても強いけど、力を借りたら一発で不合格になるだろう。なのでこの試験は私と他の参加者だけで切り抜けなければいけない。


 さあ、そうと決まれば仲間を探そう。私はキョロキョロと様子を伺い手を組めそうな人を探した。


(でも皆……)


 ミーティングが始まってすぐに入隊希望者は自然と同じ人種や国の人間、同性で固まってしまう。


 言葉とかのコミュニケーションを考えれば当然の流れだし、複数の人種がいる場合どこでも見られる光景だけど、ポリコレとか多様性を尊重する組織だとしてもその辺の事情は変わらないらしい。


(さっきの子は……いないのかな?)


 さっき出会ったそばかすの女の子でもいればよかったけどここにはいないらしい。うーん、どうせなら彼女と一緒に戦いたかったんだけどなあ。


「あ、いた」


 しかし目を凝らして見るとちゃんといた。背景の一部になって気付かなかったけど、誰にも声をかけられずに不安そうにしている。どうやら内気な彼女はタイミングを逃し出遅れてしまった様だ。


「ねぇねぇ、一緒に組まない?」

「え、わ、私ですか? でもきっと迷惑になるかも……」

「いいじゃんいいじゃん。変な事しないからさー、付き合ってよ」


 まさか声をかけられると思っていなかったのか女の子はおどおどして怯んでしまう。私はナンパ師の様な誘い文句でどうにか彼女を味方に引き入れようとした。


「他に余ってる人はいる? 私は誰でもウェルカムだよー!」

「え、う、うん」


 だけどこのままじゃちょっと寂しい。私は手を広げて懸命にアピールすると同じく余っていた子たちが私に近付いてくる。


「オラ……私もいいですか?」

「俺も」


 声をかけてくれたのはやや訛ったむちポチャ系の背の大きな女の子と肌が黒いショタ少年だ。どちらも私と同じくらいの年齢だし丁度いいね。


「オッケオッケー。じゃあ武器を適当に選んで。方針だけど無理に戦わずゲリラ戦をしようか。NAROは全員殺傷能力の低い武器ばかりだから、隙を見て奇襲をしながら戦うって感じで。あ、タメ口でいいよ」

「え、そんなざっくばらんな感じでいいんです……いいの?」

「そうは言っても情報が何もないからね。武器が限られて相手のフィールドで戦う以上圧倒的に不利だから。NAROの人達はここで何度も訓練をしてきたから、どこに隠れる場所があってどこから攻撃すればいいのか熟知しているはずだよ」


 そばかすの女の子は慣れないタメ口を使いながら私の適当にも程がある作戦に困ってしまう。確かにこれから命を預ける人間がこんな感じでは不安で仕方がないだろう。


「相手の武装をチラッと見た感じドローンはあるけど、大掛かりな兵器はないし空爆とかの心配はなさそうだからゲリラ戦の一択かな。無線はあるし」


 近代戦はどんな武器を持っているか、それですべてが決まると言っても過言ではない。わかりやすい高火力の兵器も大事だけど、偵察や情報を収集するための兵器が何よりも重要なのだ。


「見栄えが悪くても泥臭く戦うしかない。向こうには優秀な指揮官もいるから今から作戦会議なんてしても意味ないって。必要なのは気合と根性だけだよ」

「なるほど、確かにその通りかもしれないね」


 男の子は私の説明に納得する。にわかで兵法を語るのは実際の戦場では無意味だ。結局のところ泥臭くセオリー通り地道に戦うのが最適だったりするんだよね。


「だから皆の名前さえわかればいいかな。私はなか……堂島ジョセフ平八郎だよ。皆はなんていうの?」

嶋村しまむら魁環みかんだよ」


 背の大きな女の子はほんわかした笑顔でショットガンを手に取る。ショットガンは結構大きいタイプだけど、ミカンはバレー選手になれるくらい背が高いからサイズ感がバグりそうだ。


いちいユルグだ」


 一方アフリカ系の少年ユルグは男の子としては小柄でショタっぽく、女の子と言われても納得してしまう。彼は軽く武器を見渡した後サブマシンガンをチョイスした。


「え、エマ・リーです……」


 そばかすの女の子エマはおどおどしながらもライフルを選ぶ。扱いが難しい武器だけどなかなか渋い趣味をしているなあ。なんだかライフルを持つ手が覚束ないし、ちょっと心配だけど。


「それじゃあ何にしようかなあ……うん、普通にアサルトライフルでいっか」


 訓練用の武器はどれもイマイチだったけど、どれを選ぼうと殺傷能力はないのでお互い死ぬ事は無い。


 あとは適当に催涙弾やスタングレネードを回収しておけばいいか。何が起こるかわからない以上、臨機応変に対処するしかないだろう。


 それじゃあイルマを助けアニメ制作の夢を諦めないためにも、スパイ大作戦の第一段階の入隊試験を突破するよ!

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