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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第二章 暗き世界で光輝く太陽【第一部2】

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2-69 アニメ制作中止の危機

 ――仲村渠ヒカリの視点から――


 鳳仙は人としてはアウトでも絵の技術は確かだ。私の技術は彼の指導の下メキメキと上達し、ある程度は様になってきた。


「どう!?」

「ゴミ」

「ぐすん」


 だけどそう思っていたのは私だけで笑顔の鳳仙はたった二文字で私の心を抉った。うん、わかってたよ、こういう答えが返ってくるのは。


「ねえ鳳仙、少しはこう褒めて伸ばすっていうか。この前のアレがあったのに少しは汲んでよ。気まずいからちょっと優しくしておこうとかそういうのはないの?」

「ないね。甘えとか妥協とか忖度とか、僕はそういうのが大嫌いだから」

「ちぇー」


 私はセクハラ事件をダシに譲歩を引き出すけど彼は一切取り合ってくれなかった。ここで優しくされてもそれはそれで気持ち悪いけど。


「うーん、もう少しでアニメーターの人がたくさん入って来るし、それまでにはキャベツ以外もちゃんと描ける様にしたいんだけどなあ」


 手を酷使し過ぎたせいで肩が凝ってしまった私は鼻の上にペンを乗せ、背もたれに体重を預け悩んでしまう。


 鳳仙はあろう事か素人の私にキャラクターデザインを任せるつもりらしい。作る以上はちゃんとした物にしたいし、付け焼き刃だとしてもそれなりのレベルには仕上げておきたい。でも絵なんて一朝一夕で上達するものでもないしなあ。


「皆、大変ダヨ!」

「およ?」

「ん」


 だけどそんな悩みは部屋に乱入したゼンによって吹き飛ばされてしまう。随分と血相を変えて慌てているけど一体何があったんだろうか。



「イルマがNAROに捕まった!?」


 禍悪巣亭の店内で緊急会議を開催し、彼女から伝えられた知らせは衝撃的な物だった。


 もちろんイルマは銀狼会のリーダーなので捕まるのは当然ではあるけれど、それは私達にとってはひどく絶望させるものだったからだ。


「正確に言えばうちの幹部の高倉エイトが確保したみたい。エイトに狙われたら流石に逃げられないだろうね。特殊指名手配犯のイルマは常にマークされていたし、いつかはこうなるとは思っていたけど」


 ヨンアはむう、と渋い顔をして落胆した。やっぱり銀狼会のトップのイルマは大物だから捕まえる人もそれなりのランクなのだろう。


「けど困ったね。総統が捕まったら銀狼会は大変な事になるよ。まとめ役がいないといざこざは起きるし、物資の補給もそうだし……こりゃアニメーターどころじゃないでござる」

「そ、そんな!」


 ニアちゃんはこれから起きる問題を予想したけど、確かにこればかりはどうしようもない。これから六天街は深刻な物資不足に見舞われるのは間違いないし、そんな状況で何の役にも立たないアニメを作ってくれる酔狂な人なんてどこにもいないだろう。


「……諦めるしかないのかなあ」


 誰もが言いたかったけれど、誰も言えなかった言葉をチクタ君はポツリとつぶやいた。このままでは私達の夢は始まる前から終わってしまう。一体どうすればいいんだろう。


「どうする、ヒカリ」

「……………」


 ノミコちゃんは特に動じる事無く私の言葉を待っていた。私の選択で私達の未来が決まる。それは重すぎる決断だった。

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