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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第一章 終わりに向かう二つの世界【第一部1】

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16/201

1-15 ハカタピヨタンとオエドピヨタンの仁義なき戦い(なおロケランは基本装備です)

 マレビトである俺の出現で会場は騒がしくなり、俺たちは逃げる様にレース場を後にした。


 モテモテにも程があるがこれが異世界ハーレムなのか。いや多分違う。追いかけてくるのは目つきが妙なギャンブラーばかりだしこれはなんか違うと断言出来る。


 俺は教祖になりたいと思った事は無いし、やろうと思えば除霊のためだとか言って信者の女性を唆してオイシイ思いも出来そうだが、各方面から怒られそうなのでやめておこう。


「わたわた、お願いしますポ! 試乗はしなくていいのでそこにいる子で!」

「まいどありー」

「ちー」

「ピィ」


 タヌキさんは素早くカードを取り出し受付でもふもふしたハムスターっぽい人に支払いを済ませると、相方のネズミ君はジャンプして柵のカギを開錠、とぼけた表情のピヨタンがトコトコとやって来る。


「さあマレビト様、早く乗ってくださいポ!」

「ピィ」

「え、うん」


 戸惑いつつも言われるがままピヨタンに乗り手綱を掴んでタヌキさんの後について行く。


 俺は授業で軍用バイクや車に乗った事はあるもののひよこは流石に初体験だ。


 ただ言うても俺はなんでもそつなくこなす特待生、鞍もあり思ったよりも乗り心地は良かった。戦場でひよこに乗る機会はなさそうだが。


 スピードは大体原付バイクと同じくらいでそこまで速いわけではない。


 しかし道の悪い砂漠でも難なく進んでおり、タヌキさんの重い荷物をものともせず平然とした顔で走っているので、条件次第では現代の車よりも移動手段としては優れているだろう。


「ふう、えらいこっちゃでしたポン。マレビト様、ピヨタンの乗り心地はどうですポン?」

「ええ、悪くないです。それとまたマレビトって呼んだらややこしい事になりそうですから差し支えなければ智樹って呼んで欲しいです。様もなしで」

「え? はい、わかりました、トモキさん」


 タヌキさんは恐れ多いのか少しどぎまぎしながら名前で呼んだ。様呼びされるのはむず痒いしこっちもようやく落ち着けるよ。


「今更ですがこちらも名乗るのを忘れていましたね。私はマミル族の行商人のモリンですポン」

「あ、ども。マミル族がなんなのかはわかりませんがエグイ死に方しそうな名前の種族ですね」

「はい?」

「何でもないです」


 マミルの由来はタヌキの古い呼び方のまみからだろうか。やっぱりここにも日本を連想させるものがあるなあ。


「成り行きでピヨタン? に乗りましたけど気を付ける事ってありますか? 何分動物に乗るのは初めてでして」

「ピヨタンは大人から子供まで乗れる便利な生き物ですポ。落ちそうになったらピヨタンのほうから気を使ってくれるので特段気を付ける事は無いですポン。強いて注意点を言うならこれはハカタピヨタンなのですが、絶対にオエドピヨタンと一緒にしては駄目ですポ」

「ハカタ……オエド……」


 再び物凄く聞き覚えのある単語が聞こえたがもう何も言うまい。


 しかし博多、江戸、ひよこと並ぶとどうしてもあの福岡名物の饅頭を連想してしまう。こいつに名前を名付けた先人もあれを意識しているのだろうか。


 よくよく見れば何となくフォルムもあの饅頭っぽく少し美味しそうだ。甘い香りの皮にしっとりした白あん……なんか無性に食いたくなってきたなあ。


「ちなみに一緒になったらどうなるんです?」

「あ、ちょうどあそこに野生のハカタピヨタンとオエドピヨタンがいますポ」

「ん? のおっ!?」


 モリンさんはオエドピヨタンを発見し、俺も視線を追うと、そこには大爆発から大昔のギャグアニメの様に空の彼方へと吹っ飛んでいく黒焦げのピヨタンがいた。


 だがハカタピヨタンの群れは顔を真っ赤にして執拗にオエドピヨタンを追い掛け回し、その様はファンシーでありながらも弱肉強食の大自然を感じるものだった。


「とまああんなふうにブチギレてどちらかを皆殺しにするまで口からロケットランチャーをぶっ放して戦いますポ。周りの被害は全く考えないので運が悪ければ巻き込まれて死にますポ。このピヨタンはちゃんと調教されていますので問題ないですが念のため迂回しますポン」

「お、おう」

「ピィ」


 端的に言って狂気しか感じられなかったが、どうやらこれはまあまあよく見られる光景らしくモリンさんはさほど驚いている様には見えない。さすが修羅の国福岡だな……。


「それじゃあ移動しながらですみませんがご要望通りお話をしますポン。えーとマニュアルは……ふむふむ」

「なんですかそれ」

「マレビト様と会った時のハウツーが書かれたパンフレットですポン。多くのマレビト様や転生者の方は混乱している事が多いので、ちゃんと保護出来るように自治体から無料で配布されていますポ」

「そりゃまたずいぶん親切なんですねぇ」


 モリンさんはピヨタンに乗りながらくたびれた小冊子を読んだ。


 異世界転生モノでは現地の人とややこしくなる事も多いが、こちらの世界では行政がちゃんと面倒を見てくれるらしい。


 もちろんこちらからすれば大助かりだが、ああいう揉め事もまた醍醐味なのでなんかロマンがないっていうか、うん。


 けどこれはリアル、自治体の啓発活動に感謝してここは素直に喜ぼう。

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