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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第一章 終わりに向かう二つの世界【第一部1】

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1-14 チートアイテム・美味カレー(希望小売価格35円)

 タヌキさんは俺に話があると言ったが、もしかしたら助けた見返りを要求されるのかもしれない。俺は姿勢を正し一言一句聞き洩らさない様に話を聞く事にした。


「突然ですがあなたは清楚系ビッチという概念はご存じでしょうか?」

「はい?」


 だがタヌキさんは物凄く馴染み深い単語を述べた。清楚系ビッチ――それは多くの男が愛してやまない、けれど矛盾したこの世に存在しないはずの精霊の様な存在である。


「清楚系ビッチは空想上の存在と思われがちですが、私はいわゆる清楚系ビッチですポン」

「はあ」

「もっと言えば未亡人の人妻ですポン」

「はあ」

「つまり二つの概念が組み合わさった存在であり、最強に興奮するドチャシコエロい存在なんですポン」

「はあ」

「それでそのぉ、子持ちのオバサンで申し訳ないのですが、アンジョさんとデートする代わりにお小遣いを頂ければなと」


 しれっと女性であることが判明したタヌキさんはもじもじしながらなかなかな提案をした。まさかこんなスパムの様な事を現実で言われる事になるとは。


 タヌキさんは確かにもふもふして愛らしく、世の中にはケモナーという人種もいるが生憎そこまで性癖は拗らせてはいない。どこぞの異世界でペットショップを経営しているプロレスラーの二番煎じになるし。


 とはいえ命を助けられた事には間違いないのでお礼をする事には全く異論はなかった。問題があるとすれば今現在あげられるものがほとんどない事だろうか。


「お小遣い、うーん。すみません、お礼に渡せるものがこれくらいしかなくて」


 仕方がないので俺はリュックから美味カレーを取り出しテーブルの上に置いた。現実世界でお礼に渡したらキレられそうだが、電子マネーは多分使えないので仕方あるまい。


「……ええと、これはなんですポン?」

「あー、やっぱそうですよね」


 当然タヌキさんは身体をわなわなと震わせ、失礼な事をしたと判断した俺は美味カレーを引っ込めようとした。だが彼女は、


「ここ、こんなもの流石に受け取れませんポン! 一体いくらすると思ってますポ!?」

「え?」


 と、大慌てで素早く美味カレーを突き返した。どうやらこの世界では葉瀬帆に本社がありどこでも買えるこの駄菓子は超高級品という世界観らしい。


 様々なスパイスを用いたカレーは昔の人からすれば金を食っているのと同じだとどこかで聞いた事はある。が、前述したとおり観光客は普通にカレーを食っているしこれはどういう事なのだろう。


「で、でもなんでこんなものを、ってアンジョさんはそもそも何であんな場所にいて、その服装もそうですしまさかマレビト様……!?」

「マレビト様が何なのかはわかりませんが、ドローン……別の場所で戦争に巻き込まれて攻撃されて、気付いたらここにいましたね」

「あわ、あわわわわっ、大変失礼しましたポンっ!」


 折角なので俺は話しそびれた経緯を伝えると彼女はマッハで土下座をした。


 俺にはよくわからないがマレビトはアンジョよりもさらに上に位置する存在らしい。マレビトは漢字で書くと客人、コミュニティの外から来た人の事を指すので転生者や転移者を指すのだろうか。


「ちょ、頭を上げてくださいって!」

「故郷に子供が八人いるんです、命だけはご勘弁をー!」

「いやしませんから、っていうかはい、こっちこそ勘弁してください!」


 タヌキさんは床に頭をこすりつけ全身全霊で謝罪をし、周囲の人は何事かと注目を集めてしまった。


 だがこちらからすれば謝られる筋合いは一切無く、恩人にこんな事をさせてしまいただただ申し訳なかったので俺はどうにか両手で掴み床から引き離した。


「ま、マレビト様だって……!?」

「マジかよ……! こりゃ全財産をかければ一発逆転出来るぞってお告げなんですね!」

「ソシナノカースがレースで全然勝てません、どうか救ってください!」

「マレビト様、2-8-1ですか、7-1-8ですか!? 確率的にそろそろ勝ちそうなんですが!」

「真面目に働けッ! ネタにしろッ! ギャンブラーならデータに頼らず直感で選べ、そうすればいつか今までの負けを取り戻せるからッ!」


 人々はマレビトなる俺の顕現に手を合わせて拝み始める。


 なんだかカルトの教祖になった気分だが、この世界では幸運をもたらす鳳凰や麒麟といった有難い神様的な存在なのだろう。


 俺はとりあえず勘違いしたギャンブラーに天啓を与えた後タヌキさんに話しかける事にした。


「取りあえず勝手がわからないので後で世界観を教えてくれますか!? それでチャラにするので!」

「は、はい、それはもちろん!」


 正直情報を教えてもらったところでこちらの得にしかならないが、こうでもしないと彼女の気が済みそうにないので、俺は向こうにとってもっとも損失が少なく利益になりそうな対価を要求した。


 ううむ、何となくややこしそうな世界観だけど……この世界で生き延びるためにはちゃんと知っておいた方が良さそうだな。

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