表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第一章 終わりに向かう二つの世界【第一部1】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/187

1-13 感動がウマれるピヨタンレース場になったアンジョの遺構

 ピヨタンショップなる場所がある施設には多くの人が集まっていた。


 そこにいた人種の多くは獣の耳やしっぽがあって、他には先ほども見かけた半魚人やキノコ、もふもふしたデカいハムスターっぽい生き物に、身体が岩で出来たゴーレムっぽい人が多く見受けれられた。


 長崎にもいろんな人種の人がいるけど流石にこんなファンタジックではない。俺は異世界、もしくは死後の世界かと思っていたがこんなものを見てしまえば異世界だと信じざるを得なかった。


「っしゃあッ! よくやったぞォッ!」

「ギャー! 親から借りた金なのにどうすりゃいいんだーッ! 金返せぇえッ!」

「俺、この勝負に勝ったら結婚するんだ……はずだったのにぃッ! 焼き鳥にするぞゴルァッ!」

「脳汁ヤヴェエエエッ! これだからギャンブルはやめられねぇぜッ!」


 敷地内にある競技場ではひよこがレースをして紙切れを握りしめた人々が声援を送っており、着順が決まった後は悲喜こもごもの表情で何かを叫んでいた。


 多分ギャンブル的な事をしているのだろうけど、見た目はファンシーなのに観客は男も女も皆目がバキバキでちょっと近寄りがたい。


「あんな大人にはなりたくないねー。純粋無垢な子供は大人しくガムでも転がしておこうか、ってざっけんな何でそこで落ちるんだッ! オイコライカサマだろ店のモン呼べェッ!」

「ああ、純粋無垢な子供がギャンブラーの空気に汚染されてゴト師に! こうして子供は汚い大人になっていくんだね!」


 また彼らの子供であろうか、ケモミミの少年少女は昔懐かし十円ゲームのレバーを操作し、穴を回避させながらガムのボールを転がしていた。


 俺も昔やった事があるけどこちらの世界ではまだまだ現役らしい。


 こぢんまりとしたゲームコーナーは後から増築されたものなのか通路のど真ん中に作られ、大人が遊んでいる間子供でも楽しめる様にリノベーションされている様だ。


 十円ゲームは子供でも出来るギャンブルなので、ある意味英才教育と言えなくもないけど。


 世の中には本編そっちのけでカジノにドはまりする冒険者もいるが、俺にとって最も重要なのは生命維持のための水や食料が手に入り、屋根のある涼しい場所で休憩が出来る事だった。


 観光地というだけあってお店や食事が出来る場所も多く、お客さんは暑い中ゴボ天うどんやカツカレーに舌鼓を打っている。しかし冷房はむしろ効き過ぎているのでこれくらいがちょうどいいだろう。


「ふー、生き返るー、ありがとうございました!」

「いえいえ、アンジョさんを大切にするのはグリードとして普通の事ですポン。でも随分と顔色が悪いですが大丈夫ですポ?」

「あ、この顔は半分くらい元々というか。お気になさらず」


 タヌキさんはニコニコしながらゴボ天うどんをすする俺の顔を眺めた。


 アンジョやグリードが何を意味しているのかは分からないが、文脈からして俺がアンジョでタヌキさんがグリードなのだろう。


 アンジョはこの世界の人にとって見ず知らずの相手であろうと食べ物を奢る程度に大事にされている様だ。


 アンジョと聞くと隠れキリシタンの天使あんじょを連想するがあれと関係があるのだろうか。


 うーむ、しかし異世界で福岡県民のソウルフードであるゴボ天うどんを食べるとは思わなかった。


 柔らかい麺に出汁が染み込んだシャキシャキ食感のゴボ天がたまらない。俺はコシが強いうどんも柔らかいのも両方愛せる人間だが、灼熱の砂漠で冷房が効いた場所で食べるうどんは最高だ。


 なおメニューの文字は読めなかったので写真で選んだ。ただ文字はなんとなく生成画像なんかでよく見られるへんてこな文字に似ていたので頑張れば読解出来ない事はないだろう。辛うじてうどん、という文字はわかったし。


 しかしこの世界には冷房があるのか。天井に昔ながらの羽根タイプの扇風機もあるが、なんか微妙にデザインが違う上に緑色に光っているし動力源は電気ではなさそうだ。


 パーツは一部が木材になっており、壊れた部分を後から修理したのだろう。


「ところでタヌキさん、あれって」

「ああ、アレですか? 大昔のアンジョさんの遺産ですポン。ちなみに文化財に指定されてますポン」


 気になるものはいろいろあったが、食事をしていた俺は様々な意味で一番怪しい顔ハメパネルについて尋ねた。


 そのパネルには色褪せた馬が描かれ、尻のあたりに顔を出す場所があり『感動…ウマれ……』と一部の文字が掠れていたがそう読めた。


「ハイチーズ!」

「にこー」


 なお先ほどのキノコ君と半魚人もちゃっかり文化財で写真撮影をしており、尻にすっぽりとハマったキノコ君のとぼけた顔が何ともコミカルで愛らしかった。


 撮影が終わった後、キノコ君はトコトコと半魚人の下に向かうが、よく見ればそのカメラは一世を風靡した写○ンですに酷似していた。


 流石にオリジナルではなく復刻版だとは思うが、昔懐かしのガジェットをまさか異世界で見かけるとは。


 不鮮明な上にセンスのかけらも感じられないが、どう見ても日本の大抵の観光地にある顔ハメパネルだよなあ。ガッツリ日本語だし。


 ピヨタンが走っているレーンもそうだしにここはかつて競馬場だったのだろう。たまに異世界モノで現実世界との関連性を想起させるものが出てくるけど、どうせならこんな微妙なものじゃなくて別なものが良かったよ。


 九州では昔闘鶏の文化があったらしいし、ゴボ天うどんもそうだけどなんか全体的に福岡っぽいんだよな、ここ。


 鹿児島とかはその流れで軍鶏しゃもがよく食べられているけど、闘鶏は九州の鶏肉文化を構築した要因の一つになっているんだろうな。


「さて、落ち着いた所でお話がありますポン」

「あ、はい」


 タヌキさんはニコニコと笑ったまま俺の顔を見つめる。タダより高い物はないというが、タヌキさんはきっと俺に対して重要な事を話すはずだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ