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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第一章 終わりに向かう二つの世界【第一部1】

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1-103 ムゲンパレス限定ヨカバイ

「おいしかったー。おなかいっぱいでもうたべれないよー。むにゃむにゃ」


 食事が終わり、満腹になったマタンゴさんは寝言のテンプレを言ってから幸せそうに眠った。


 トッピング盛りだくさん、ボリューム満点の智樹カスタムの五島うどんは小さな生き物にとってはかなりの量だったに違いない。


「ふー、食った食った。ごちそーさん。さて、腹ごしらえを済ませた所で次はどこに行くんだ?」


 同じく満足げなリアンはオッサンの様に爪楊枝でシーハーしながら改めて方針を尋ねる。


 この世界での食事のマナーがどうなっているのかはわからないが、彼女に一般的な品性を求めるのは無意味だろう。


「葉瀬帆に行くにしても移動手段が欲しいな。近くに自衛隊の駐屯地があったはずだが、そこから適当に乗り物を拝借、って流石に再現されてないか」


 俺は元の世界の記憶を辿り周辺の使えそうな施設をイメージする。


 一番利用頻度が高く、かつ有益な施設は空港近くにあった駐屯地だが、そんなものをアミューズメント施設が作っているとは思えない。


 いや、どうだろう。防衛システムがあったくらいだし駐屯地も普通にあるかも……しかし仮にあったとしても車も武器も医薬品の類もとっくに使えなくなっているだろう。俺はすぐにそう結論付け探索候補から除外した。


「ご安心ください。私はバスガイドロボットです。本来は別に運転手の方がいますが、並行処理によって観光ガイドをしながらお客様を目的地まで送迎する事が可能です。というかいいところを見せるためリベンジをさせてください!」

「だそうだが」

「アタシは別にそれで構わないぞ。飛んでもいいがやっぱ乗り物のほうが楽だからな。たまにバスの上に乗ってタダ乗りしてるし」


 オトハの申し出を受け入れたザキラはカルラ族ヤンキーのあるあるネタを言った。


 現実世界でも楽をする事を覚えたカラスが電車の上に乗っていたりするけど、連中もこういう感覚で公共交通機関を利用しているのだろうか。


「あはは、施設内での無賃乗車はご遠慮下さいね? 施設内での移動の際はフリーパスの提示か交通系ICカードが必要です。違反した場合は最悪警備ロボに射殺される恐れもあるのでくれぐれもご注意ください」

「ペナルティがえげつないな!?」

「最悪の場合です。ちゃんと事前に警告しますからご安心ください」

「いやご安心出来るかよ」


 だがオトハが笑顔で告げた警告によって彼女はすぐに良からぬ考えを捨てる。


 ちなみに元の世界では身分証を持たない人間に人権は存在しないので割と普通の事だったが、やはりアミューズメント施設とはいえここもそういうディストピアな世界観だったんだな、と俺は少し落胆してしまった。


「智樹さん以外はどちらもお持ちでない様なので、ただいま皆様の分のヨカバイを発行いたしますね。このカードはムゲンパレスでフリーパスと身分証の代わりになるので大事に持っていてください。ちなみにデザインは私が担当しました。ドヤァ」


 説明を終えたオトハは使い古したカバンから見慣れた交通系ICカードを取り出し、オトハはささやかな自慢だったのかドヤ顔をした。


 なおアミューズメント施設らしくムゲンパレスのみで手に入る限定デザインで、長崎をイメージしたポップなイラストと昔のオランダ人っぽい装いをしたあのカエル、その他もふもふ君やマタンゴさんにディーパや魔物と様々なものがこれでもかと詰め込まれ、ゆるい画風のオトハが笑顔でガイドをしている。


 ただのバスガイドなのに自分をデザインに起用するなんて少しばかり自己主張が激しいな。


「ふーん、これ売れたりするかな?」


 だがカードを受け取ったリアンは真っ先に転売を目論んだ。


 俺がアンジョの遺産であるヨカバイを使った際カードそのものが高価なものだと説明したので、もしこれを売ればお金がチャージされていなくてもそれなりの値段で取引されるに違いないだろう。


 限定デザインのコレクターは現代でも普通にいたし、この世界にもいくらでもお金を出すマニアはいるに違いない。


「転売という不届きな行為が確認された場合あらゆる手段を用いて居場所を特定し地の底まで追いかけて射殺しますが、それでもよろしければ構いませんよ」

「すんません冗談です勘弁してください」


 だがオトハは素敵な笑顔で再度えげつない警告をしたので、彼女はすぐにひれ伏して謝罪する。


 転売ヤー憎しは異世界でも同じな様だ。なお実際俺たちの世界じゃ普通に転売が理由となった殺人事件が起きていて、その対策とかどうのこうので商品の購入に一定以上の信用スコアが必須となり、それが監視社会形成の一因となったがそれはまた別の話である。


「はい、認証しました!」

「えへへ、いいお土産が手に入りマシタ」

「姉ちゃんこういうの好きだよね。色んな所で変なもの買ってくるし」


 観光好きなニイノはコレクションが増えてホクホクした笑顔になる。きっと彼女は使い道が一切ないペナントやメダルを好んで買うタイプの人種なのだろうな。


「ハハ、見せびらかして無くすんじゃないヨ」

「うう、オイラはこんな高そうなもの持ち歩きたくないでヤンス」


 ヨカバイを受け取ったリンドウさんはやや雑に、サスケは恐々とポーチにしまう。


 もしブラックカードと同等の価値があるこのカードを無くしたら海外でパスポートを無くすのと同じくらい大変な事になるし、俺も無くさない様に気を付けないとな。


「どうも。んじゃ行くかー。お前も行くぞ」

「むにゃー?」


 お嬢様なザキラだけは適当にヨカバイを受け取り、眠っていたマタンゴさんを脇に抱え席を立った。


 なお一応彼の分もカードは発行され寝ぼけまなこでカードを手に取ったが、いかにも無くしそうなので気を配ったほうがいいだろう。


 さて、準備も済んだし人類滅亡後の長崎旅行を始めるとしようか。

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