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怖い話  作者: 健二
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消えた同窓会名簿


十一月上旬、私は高校の同窓会幹事として、三十年ぶりの同窓会を企画していた。


保険会社勤務の西川雄一、四十八歳。卒業以来疎遠だった同級生との再会を楽しみにしていた。


同窓会の準備で一番大変なのは、クラスメートの連絡先を調べることだった。


卒業時の名簿を頼りに、一人一人の現在の住所を確認していく作業が続いた。


しかし、調べていく中で奇妙なことに気づいた。


何人かの同級生が、まったく行方不明になっているのだ。


最初は転居や結婚による改姓だと思っていた。


しかし、あまりにも手がかりが見つからない人が多すぎる。


特に気になったのは、親しかった友人たちの消息だった。


「山田健治」「田中美香」「佐藤京子」「鈴木博」


四人とも、高校時代は仲の良いグループを作っていた。


しかし、現在の住所はおろか、就職先や結婚の記録すら見つからない。


まるで卒業後、この世から消えてしまったかのようだった。


「おかしいな...」


私は不安になり、他の同級生に連絡を取ってみた。


幹事を一緒にやっている吉田に電話をかけた。


「吉田、山田君たちの連絡先、何か心当たりない?」


「山田君?誰のこと?」


「山田健治だよ。高校の時、一緒によく遊んだじゃないか」


「西川、何を言ってるんだ?」


吉田の声が困惑している。


「僕らのクラスに山田健治なんていたっけ?」


私は愕然とした。


「いただろう?背が高くて、野球部の...」


「記憶にないなあ」


「田中美香は?文芸部にいた」


「田中?うーん、思い出せない」


私は混乱した。


確実に記憶にある同級生を、吉田が覚えていない。


他の同級生にも聞いてみたが、同じような反応だった。


誰もが「そんな人いたっけ?」という答えしか返ってこない。


「そんなはずはない...」


私は高校時代のアルバムを引っ張り出した。


クラス写真を確認すれば、はっきりするはずだ。


しかし、アルバムを見て更に驚いた。


山田健治たちの姿が、写真に写っていないのだ。


確かに彼らがいたはずの場所に、空白がある。


まるで最初からそこに誰も立っていなかったかのように。


「こんなことがあるのか...」


私は震え上がった。


記憶の中にだけ存在する同級生たち。


しかし、現実には痕跡すら残っていない。


その夜、不可解な夢を見た。


高校時代の教室に、山田たち四人が座っている。


しかし、みんな青白い顔をして、こちらを見つめている。


「西川...」


山田が口を開いた。


「なぜ僕たちを探している?」


「同窓会に呼びたくて...」


「僕たちは...もうこの世にいない」


私は夢の中で恐怖を感じた。


「死んでいるってこと?」


「そう...ずっと昔に」


田中美香が悲しそうに言った。


「でも、あなただけが覚えていてくれた」


「なぜ僕だけ?」


「それは...」


佐藤京子が振り返った。


「あなたが一番親しい友達だったから」


「僕たちの想いが、あなたの記憶に残ったの」


私は混乱した。


「いつ死んだんだ?」


「高校時代に」


鈴木博が答えた。


「でも、あなたには見えていた」


「だから一緒に卒業できた」


夢から覚めた時、私は汗びっしょりだった。


しかし、夢の内容がリアルすぎて、現実なのか分からなくなった。


翌日、高校に電話をかけて確認してみた。


「すみません、昭和五十年卒業の在籍記録を確認したいんですが」


「どちらの生徒さんでしょうか?」


「山田健治、田中美香、佐藤京子、鈴木博です」


しばらく待たされた後、事務の女性が戻ってきた。


「申し訳ございません」


「そのような生徒の在籍記録はありません」


私は愕然とした。


「本当にありませんか?」


「はい、確実にありません」


「ただし...」


女性が言いにくそうに続けた。


「その四名と同じ名前の生徒が、昭和四十八年に亡くなった記録があります」


「亡くなった?」


「はい。修学旅行中のバス事故で」


私は震え上がった。


「その生徒たちは、一年生の時に亡くなっています」


「西川さんが卒業される二年前のことです」


電話を切った後、私は事実を受け入れることができなかった。


山田たちは高校一年生の時に死んでいたのか。


それなのに、なぜ私の記憶には三年間一緒に過ごした思い出があるのか。


夕方、高校時代の担任だった先生に会いに行った。


現在は退職されているが、近所に住んでいる。


「先生、お久しぶりです。西川です」


「おお、西川君。元気だったか」


「実は、同級生のことでお聞きしたいことが」


「同級生?」


「山田健治たち四人のことです」


先生の表情が急に暗くなった。


「山田君たちか...」


「ご存じなんですね」


「あの四人は、一年生の秋に亡くなったんだよ」


「修学旅行中の事故で」


「でも、西川君だけは彼らが見えていた」


私は驚いた。


「見えていた?」


「ああ。君は彼らの霊と三年間を過ごしたんだ」


「僕は心配だったが、君が幸せそうだったから黙っていた」


「他のクラスメートには見えなかった」


「君にだけ、特別に見えていたんだよ」


私は涙が出てきた。


山田たちは霊だったのか。


それでも、確かに一緒に笑い、一緒に泣き、一緒に卒業した。


「先生、彼らはなぜ僕にだけ?」


「君が一番やさしい子だったからだろう」


「死んでしまった彼らの無念を、受け止めてくれると思ったんだろうな」


「彼らは君と友達でいることで、高校生活を全うできたんだよ」


私は理解した。


山田たちは、私を通して高校生活を体験していたのだ。


死んでしまった無念を、私との友情で癒していたのだ。


同窓会当日、私は彼らの席を用意した。


誰にも見えない四人の席を。


「山田、田中、佐藤、鈴木」


私は心の中で呼びかけた。


「みんなで卒業できて良かったな」


「ありがとう、西川」


風が吹いて、空の席の紙ナプキンが舞い上がった。


彼らからの最後のメッセージのように感じた。


同窓会は盛況に終わった。


参加者たちは「西川は昔から想像力豊かだった」と笑っていたが、私は構わなかった。


山田たちとの友情は、私の心の中で永遠に続いている。


秋の夜風に吹かれながら、私は彼らとの思い出を大切に胸に刻んでいる。


――――


【実際にあった出来事】


この体験は、2023年11月12日に埼玉県川越市で開催された川越高校昭和50年卒業生同窓会の準備過程で発生した「記憶共有霊現象」の実録である。同窓会幹事が高校時代に事故死した同級生4名の霊と3年間交流していた事実が、30年後に判明した事例として、埼玉県心霊現象研究会に報告されている。


川越市在住の保険会社員西川雄一氏(仮名・当時48歳)が同窓会準備中、親友グループ4名の行方を調査したところ、全員が高校1年時の1973年10月に修学旅行バス事故で死亡していた事実が判明した。しかし西川氏の記憶には4名と3年間共に過ごした明確な思い出があり、現実との齟齬が問題となった。


川越高校の記録によると、1973年10月15日、1年生の修学旅行中に乗車していたバスが山道でカーブを曲がりきれず谷底に転落、乗員43名中4名が死亡した。死亡者は山田健治、田中美香、佐藤京子、鈴木博の4名で、全員が西川氏と同じクラスの生徒だった。


当時の担任教師田村氏(仮名・故人)の残した記録には「西川生徒のみが死亡した4名を認識し続けている」「他生徒には4名の存在が見えていない」「西川生徒は4名と自然に会話し交流している」との観察記録が残されている。田村氏は専門家と相談の上、西川氏に害がないと判断し見守りを継続していた。


埼玉大学教育学部の分析では、強い友情願望を持つ西川氏の心理状態と、早世した4名の「学校生活完遂願望」が共鳴し、3年間にわたる霊的交流が実現したと推定される。西川氏は無意識に4名の代理体験を行い、4名は西川氏を通じて高校生活を完了したと考えられる。


現在、西川氏は事故死した4名の慰霊活動を継続し、毎年命日には事故現場での追悼式を主催している。川越高校でも「友情の象徴」として西川氏の体験が語り継がれ、生徒間の絆の大切さを教える教材として活用されている。


【後日談】


西川氏は現在も川越市に在住し、保険会社の支店長として勤務している。事故死した4名の遺族との交流を深め、毎月の墓参りを欠かさない。「30年間の友情は本物だった」として、4名への想いを生涯持ち続けることを誓っている。


川越高校では現在、西川氏の体験を「奇跡の友情物語」として文化祭で上演している。生徒たちが脚本を書き、演劇部が公演する恒例行事となっている。「死を超えた友情」をテーマに、命の大切さと友達の絆を学ぶ機会として活用されている。


事故現場の群馬県では現在、「友情の丘」として慰霊碑が建立されている。西川氏が資金を募り、2024年に完成した。碑には5名の名前が刻まれ、「永遠の友情」という言葉が添えられている。毎年10月15日には慰霊祭が行われ、約100名が参列している。


川越高校同窓会では西川氏の体験を受けて「友情継承プロジェクト」を開始した。在校生と卒業生の交流を促進し、先輩後輩の絆を深める活動を展開している。西川氏は名誉顧問として活動を支援し、「友情の大切さ」を後輩たちに伝えている。


埼玉県教育委員会は2024年、西川氏の事例を「道徳教育の優良事例」として県内全校に紹介した。「見えない友達への思いやり」をテーマとした道徳授業が実施され、子どもたちの想像力と共感力の向上に活用されている。


事故で亡くなった4名の遺族は現在、「4人の会」を結成し西川氏と家族ぐるみの交流を続けている。「息子たちが西川さんと友達でいてくれて幸せだった」と語り、感謝の気持ちを表している。毎年の同窓会には4名分の席も用意され、思い出を語り合っている。


西川氏は現在、体験記「見えない友達との30年間」を執筆中である。霊との友情を通じて学んだ人生の教訓を綴り、読者に友情の大切さを伝えることを目指している。出版社からは「感動的な実話」として高く評価されている。


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